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JAD-033「空想との邂逅・後」



「こういうのは、空想の中だけにしときなさいよねっ」


「衝突の力は、これまでで最大ですよ」


 そのことは、私もよくわかっている。

 なぜなら、ぶつかってすぐにブリリヤントハートが大きく吹き飛ばされたからだ。


 多少のことなら、背面ブースター合計4基が支えてくれるはず。

 不意打ちとはいえ、その出力を超えて来た!


「見えないんじゃ何もできない! 暴風弾、シュート!」


 セットした宝石、ペリドットの力を引き出して周囲にライフルで弾をばらまく。

 それは攻撃というより、霧を吹き飛ばす目的だ。

 空中で何発もさく裂し、周囲を風が押し流していく。


「余裕……ってつもりかしら」


 視線の先で、霧を背景に推定呼称、ドラゴンが羽ばたいている。

 大崩壊前には、ああいう生物の話を聞いたことはある。

 倫理のラインを超えた先の、新しい生物。


「やっばっ」


「かなりの高温です!」


 口元に赤い光を見た私は、一気に機体を降下させる。

 その結果はすぐにわかった。

 ドラゴンから放たれた赤い光線は熱を帯びた物だったのだ。


「あれですか、ブレスってことですかね」


「たぶんね。問題はこれが番、一族がいることよ!」


 目の前の1匹だけですむなら、問題は少ないのだ。

 一番まずいのが、ドラゴンが数を増やしていることだと思う。

 ここにいる限りは、わからないのだけども。


「射撃!? 街のJAMたち!」


 距離が開いたところで、下からの砲撃に回避を始めるドラゴン。

 うっとおしそうに顔をゆがめるあたり、器用な物だ。


「相手はこっちよ!」


 相手の実力は不明だけど、少なくとも街にあるJAMたちでは相手にはならないだろう。

 吹き飛ばされ、食われるのがオチだ。

 なるほど、こんな大きさのが飛んでるんじゃ、誘拐されるとなるわけだ。


「慣性はどうなってるんですか、もう!」


「ぼやいても変わらないわ。どうにか一撃を……」


 ドラゴンは羽ばたいている。

 が、どう見ても羽ばたきだけでは不可能な動きも混ざる。

 鱗の一部が、輝いていた。


「JAMと一緒、か。あいつ、宝石を通じて力を使ってる」


「そんな、獣やミュータントが!?」


 驚くカタリナだけど、個人的にはあり得ると思っている。

 元々、この宝石の力自体、自然にある物を研究して効率よく使えるようにしただけなのだから。


 使いこなしてるかは別にして、使う奴がいても不思議じゃない。


「前っ!」


「っとぉ! 危ない……まったく、せっかちは嫌われるわよ?」


 いつの間にか、ほぼ目の前に来ていた相手からの尻尾の一撃。

 建物も吹き飛びそうなそれを、なんとか回避する。


 仮に抱き付かれたら厳しい……幸い、防御までは隠し玉はないらしい。

 となれば、高威力の一撃をあてるのみ!


「凍……れっ」


 今度はアクアマリンの力を使い、周囲の霧や雲を凍らせることにした。

 慌てた様子で、まだ無事な雲の中に隠れようとするドラゴン。


「逃がすかっ」


「レーテ!」


 それは罠だった。

 長く生きたドラゴンの、命がけの駆け引き。

 叫びを認識した時には、機体をひねらせた。


 重い、確かな音を立ててライフルを構えた側の左腕が吹き飛んだ。

 下からすくい上げるような、ドラゴンの尻尾によって砕かれたのだ。


 にやりと、笑みをドラゴンが浮かべた気がした。

 けど、この間合いは私の間合いでもある!


「ASブレード、雷撃!」


 ペリドットの力で、刀身に雷の力を呼び出す。

 一気に眩しいほどの光が産まれ、そのままドラゴンへと振り抜いた。


 響き渡る悲鳴。


「浅かったか!」


「逃げていきますよ……」


 踏み込みが浅く、相手の左足を切り取るだけに終わってしまった。

 逃げ去るドラゴンは雲の中で、見つけるのは困難だ。


 ひとまず降下し、腕とドラゴンの体を探す。

 見つけたころには、街からトラックがやってきていた。


『乗ってくかい』


「お言葉に甘えるわ」


 カタリナには途中で自分たちのトラックに移ってもらい、そのまま街へ。

 工房に運び入れつつ、機体から降りて運び込んだドラゴンの足を見る。

 確かに生物だけど、見たことがない部類だ。


「君がこれを?」


「一応、ね。痛み分けってとこだけど」


 振り向けば、そこにいたのは髭の生えたおじさん。

 おじ様と呼ばれるのが似合いそうな、ミドルである。


「これでも町長でね。よければ話を伺いたいのだが」


「……町長が自ら?」


 不思議に思いつつも、報告しないという訳にもいかず、ついていくことに。

 私はある意味自由に、七色のダイヤを探したいのに、どうしてこうなるのか。


 答えは見つからないまま、今日と明日を生きるために頑張る私だった。



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