JAD-275「中枢を撃つ・後」
「左右と背面砲台を中心に掃討開始! 肩部砲で地上にひたすら弾幕!」
「了解!」
今も、地面というか町中は敵だらけ。
同士討ちの混乱も広がっているけど、それでもまだまだこちらに攻撃が飛んでくる。
メテオブレイカーに後付けされた砲台からも、光の弾丸が多数。
当たっても一発ってことはないだろうけど、当たらない方がいいのは間違いない。
「制御も利用されてるのか、メテオブレイカーのだけは当たりそうなのよね」
弾幕に、2種類あるのは厄介この上ない。
だから、先にメテオブレイカー側の砲台をなんとかすることにした。
幸い、あの巨体は弱点もそのままで、姿勢制御には時間がかかる。
こちらは高速で移動し、常に相手の死角に入り込むことにした。
「砲台の増設、街並みと比べて適当すぎませんか?」
「AIの制圧をしながらいじってるんじゃないかしら。清掃・整備用の小さいのが、いないもの」
空とビル群を、砲撃の光が染め上げていく。
地上で炸裂した花火のような光景の中を、ひたすらに舞う。
「このまま消耗してるだけだと少しキツイ……でもこの感覚なら、いける!」
「消費効率、改善しています。いえ、これは周りにスターストリームの力がにじんでる?」
視界を半分、石の力も見えるように意識して切り替え。
結果、町中を力の靄が覆っているような感じだ。
恐らくこれが、無人機の親玉の狙い。
石の力、星の力を利用しての技術進化。
でもそれは……かつての星とかつての文化で起こした、悲劇へ向かう合図。
「それは、させない。与えられた情報と記憶だとしても、私の判断は……人間のこの星での生存だから」
まるでゲームでのボス戦のような光景。
どこからかBGMでも聞こえてきそうだ。
無数の射撃、無数の爆発。
落ちていく砲台だったもの。地面に広がる無人機だったもの。
「レーテ、そろそろ補給か、決めないと」
「そうね、そうしましょう」
一度、メテオブレイカーの正面に出ることで、主砲の射撃を誘う。
戦術も何もあったもんじゃない反射的な対応は、生き物らしいといえばらしい。
そのまま上空へ飛び上がりながら回避。
「ブレード! 両手持ちで長く展開!」
「同期開始、どうぞ!」
クリスタルジェネレータからの力を、ブレードに集中。
昔作られたはずのブレードは、その力にも耐えて光の刃を作り出す。
長さはこちらの2倍ほど。
「切り取るっ!」
背面から突進し、ちょうど制御区画がある部分を、周囲のブロックごと切るべく切りかかる。
最初は何かフィールドめいたものが干渉してきたけど、それも薄紙を破るように無力化。
先ほど切りつけた右肩付近から、Uの字を描くように光の刃を沈める。
火花を散らしながら切られていくメテオブレイカー。
残った砲台から攻撃が集中するけど、こちらの障壁にはじかれる。
「慌ててるのね? 砲撃が、甘い!」
「切断完了!」
素早く石の1つをトパーズに切り替え、岩を生み出す。
今度は、押し出すためのハンマーのような形状で。
そうして、後ろからメテオブレイカーの制御区画を押し出した。
落下するそれを、しっかりと包んでおくのも忘れない。
(後で回収と清掃するから、我慢しててね)
「メテオブレイカー沈黙! どうしますか」
「あの場所に入って、こっちでコントロールを奪う!」
つまり、メテオブレイカーの動力と武装をこちらで使ってしまおうということだ。
元のままなら、メテオブレイカーは巨大なジルコニアを多数同期させている。
その力は、同数のダイヤよりは劣るけど、使い勝手は比較にならない。
メテオブレイカーが壁になり、無人機たちからの攻撃が届かないのが幸いだ。
邪魔されることなく、制御区画があった場所に着地。
手足を伸ばし、無理やりだけどメテオブレイカーの制御を奪うべく接続を開始。
瞬間、ノイズのように何かが干渉してきた。
「外部から接続。これは……対応開始します!」
「ようやくお出ましね。そっちは任せたわ。ジルコニアフルパワー! 主砲上方へ修正!」
外部からの攻撃は彼女に任せ、私自身は小惑星に対応することに。
制御方法自体は味方だったメテオブレイカーから、万一の場合にと教わっている。
そして、足りないかもしれない分はブリリヤントハートのリミッター解除で対応だ。
私を設計したであろう人間、その人格を再現したであろうAIが教えてくれたトリガー。
それを、今口にする。
「星も生きている。願わくば、星の光尽きる前に人がその意識に気が付きますように」
それは願い、思い、未来への願望。
滅びゆく母星から脱出し、長い長い旅路で至った結論。
スターストリームが、ただの力の流れではない、たったそれだけのことだ。
言葉を口にしてすぐ、ブリリヤントハートのクリスタルジェネレータと、メテオブレイカーのそれが同時に力を増すのを感じた。
「誰だか知らないけど、この星にあんたはいらないっ!!」
空へ向けて、主砲を構えさせる。
注ぎこまれる膨大としかいえないエネルギー。
それは、メテオブレイカーの巨体でも足元が沈むほどの反動を生み出した。
空に伸びていく太く長い光。
しばらくは周囲の天気は荒れそうだなと感じる力だった。
「謎の攻撃後退。逆探知中です」
「続けて。こっちは……なんとかなったかしらね?」
空は、もともと青かったが……なんだか光が通り過ぎた場所だけ色が違う気がする。
大気圏にダメージが出てるんだと思うけど、これ大丈夫かなあ?
「よくわかりませんけど、高高度で石の力で何かしたらどうでしょう? 風とか」
「いい考えね! でも今は……ちょっと休憩」
火花をあげそうなほど、メテオブレイカー全体が痛んでいる気がする。
ブリリヤントハート、そして私も……今は少しだけ休憩だ。
無人機が飛んでこないのが気になるけど、攻撃がないのならばそのほうがいい。
そんなことを思いながら、硬くなった体をほぐすのだった。




