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JAD-274「中枢を撃つ・前」


「敵メテオブレイカー、上を向きません!」


「優先順位が変わってる!?」


 星に振る隕石を迎撃するための刃、メテオブレイカー。

 かつての人類が、それなりの数生産し、各地に配置したらしい巨大兵器だ。


 砦型と、人型への変形機構を有する。

 そして、大気圏外への射撃を中心とした武装は強力無比。


 欠点は、連発できないことと、素早い動きはできないことだ。

 様々な制約がありながらも、隕石迎撃としては最強の一手。

 その、はずだ。


「探知できてないはずはないわよね……」


「ある意味放置されていた味方機ですら、見つけてるんですよ?」


「フル稼働してそうな敵機が見つけられないはずはない、か」


 大きくメテオブレイカーが見えてきたことで、その全身も見えてくる。

 壊れた個所はなく、部品も交換されていそうだ。


 違いがあるとしたら、主砲としての部分以外にも、細かな砲台がついていることだろうか?

 それらが、無数の花火を打ち上げている。


「1つアパタイト! 黙らせる!」


 クリスタルジェネレータの中身を、1つダイヤからネオンブルーアパタイトに。

 幻想的に青く輝くこの石は、まるで光の蝶が舞うように細かい弾丸を生み出す。

 それらは半自律した状態で、攻撃したいと考えた場所に飛んでいく。


 地上の砲台、道路にうごめく無人機、そういった相手にどんどんと勝手にぶつかっていくのだ。

 空を飛行しながら、無数の蝶を打ち出していく。


(こちらを排除してから迎撃を? いえ、最優先事項のはず……!)


 味方であるメテオブレイカーから聞いた情報からは、そのはずだった。

 つまりは、この地に後から来たであろう無人機の親玉が、原因だ。


「スコアが稼ぎ放題ね! 久しぶりの感覚っ!」


「地面が見えませんよ……降りる場所がないです」


 少しあきれた様子のカタリナ。

 そんな声を背に、町中を飛び交う。


 うじゃうじゃいる敵を、どんどんと削りつつも探索は忘れない。

 記憶にある、文明崩壊前の街並み。

 他所スケールは違うけど、それに近い光景が広がっている。


 あちこちに火の手が上がる形となり、まさに襲撃を受けている姿そのものなのだけども。


「人間が、いないっ」


「はい。生体反応なしです。正確には、それらしい反応はありますけど、これはもう……」


 やはりというかなんというか、ここに無事な姿の人間はもういないようだった。

 突っ込んできた敵飛行体を蹴り飛ばし、その際にコックピットを見るがそこには人はいない。

 ただ、何かが入った箱のようなものがあるだけだった。


「上に攻撃する気はまったくないわけか……」


「小惑星接近中。計算では、あと70時間で完全に衝突します。何かで加速してる!?」


「調べる時間はない……ってことは何かするならもっと前ね」


 もし、ゲームのようにスコアが自動表示されるなら、数字がずっと動いているだろう。

 それだけ、休まずに攻撃と移動を続けている。


 途中、適当なビルの上に飛び乗り、次元収納から水晶や石英結晶を補充するのを忘れない。

 相手の攻撃も最初よりは少し減ったような気がする。


(ま、同士討ちもあるように動いたせいだろうけど)


 そう、同士討ちだ。

 相手には戦闘経験があってないような状態なのは、間違いない。

 適当に動いただけで、私を狙った攻撃に他の敵機が巻き込まれるぐらいだ。


 その結果、一部の敵機はどちらが敵かといった判断をできなくなったらしい。

 混沌とした攻防が地上には広がり始めている。


 そんな中、ずっと私を狙い続けるのは……メテオブレイカーだ。


「目的を果たせないのは悲しいと考えるべきか、役割にとらわれない生き方ができてると思うべきか」


「あの先輩の行動は、自分の判断ではないと思いますけどね」


 同意の頷きをしつつ、無線のスイッチをオンにした。


「レーテ?」


「腐っても最強兵器よ。そう簡単に制御AIが制圧されるかしら?」


 距離があるままでは、たぶんはじかれる。

 無線だけど、接触した状態で高出力で内部に飛ばさないと……そんな気がする。


 素早くブースターをふかし、敢えて距離をとる。


「力を機体全体で展開! フィールド生成!」


 JAMなどは、石の力で刀剣をベースに刃を作ったり、銃から放つ弾丸にできる。

 でもそれは、イメージしやすく、はっきり力を固定しやすいからでしかない。

 指先に刃を生むことだってできるし、手のひらから打ち出すことだってできる。


 つまり、全身を力場で覆うことだってできるのだ。


「突撃っ!!」


 ゲームでいえば、当たり判定と威力のあるバリアをまとったまま、敵集団につっこむようなもの。

 空中の敵機を巻き込みつつ、攻撃を受け止めながら進む。


 どんどんと障壁が削れていくのを感じるが、主砲が直撃でもしない限りはなんとかなりそう。

 そして、敵機の右肩付近にぶつかりながら、ブレードを突き刺した。


「メテオブレイカー! 空から降ってくるわよ! あなたの役割は何だったか、思い出しなさい!」


 叫びつつ、電波に乗せて力も注いでみる。

 攻撃のためじゃなく、活を入れるためといった感じ。


 そうこうしてる間に、左手側の砲台がこちらを向くのが見えた。

 回避しようとしたところで、モニターに影。

 敵機の右手が、まるでこちらをかばうように動き、左手に逆に攻撃をしかけたのだ。


「メテオブレイカーから通信とデータ送信あり。受信OKです!」


「了解っ!」


 一度距離を取るべく、脱出。

 送信されてきた内容は……自身にほどこされた改造と、中央区角の切り離しの提案だった。


 メテオブレイカーは……自分を終わらせて、空を頼むと言っている。

 あの短時間にここまで判断できるとは、さすがというべきだ。


「その依頼、受けるわっ!」


 再びこちらに攻撃をしかけてくる敵機、周辺の無人機たちに反撃しつつ、仕掛けどころを探し始める。



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