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JAD-271「人の皮をかぶったモノ」


「化けの皮、はがれたりってね」


「中身、えぐすぎでは!? 増援追加! マーキングします」


 地上へと舞い降りた私たちに、町だった場所から襲い掛かる砲撃。

 無数の砲台が現れ、無人機だろう何かが地面を揺らすのもわかる。


 先ほどまで、人間がいないだけで平和そうな町だったのに……今ではどうだ。

 町中を歩いていた存在は、機械の体をむき出しにして武装。

 どこからか現れた車両らとともに目だろう部分を赤く染めている。


(こういうのは、どこでも一緒なのかしらね?)


 夕焼けよりも濃い赤が、昼間なのに不気味に光っている。


「普通の町だと思ったら、地下も含めて完全に軍事基地クラスじゃないのよ……」


「突いてみないとわかりませんでしたね、これ」


「本当ね。火力は低いみたいだけど……」


 相手の誘導性能、あるいは推測する能力というのは低いようだ。

 少し移動するだけで、すべての攻撃が外れていく。

 逆に、狙われていない攻撃のほうが危険なぐらいだ。


 これまでにそうしていたように、次々と敵機を破壊。

 人に見えた大きさの機械群には、トパーズなどでまとめて対処。


 同じ結果になるのかなあと考えていたところで、変化があった。


「敵増援確認! これは……JAMの集団です」


「ふうん? 中身は……いそうね」


 どこか見覚えのある光景がそこにはあった。

 人間が愚かなのか、ここまで想定に加えていた設計者がすごいのか。


 いつか経験したような、電子上の作戦、ゲームでのクエストと類似した状況だった。


「砲撃タイプから先に攻撃。肩部はけん制!」


「了解ですっ!」


 20ほどのJAMらしき相手に、敢えて距離を詰める。

 斜めに飛び上がりながら、相手の後方にいた機体へと攻撃。

 着弾を確認しながら、振り向きざまにさらに攻撃。


 撃破は少ないだろうけど、相手への先制としては十分だろう。


「このまま市街地のがれきを盾に、削るっ!」


 一度相手の動きを乱してしまえば、あとはこちらのものだ。

 孤立した相手から倒していき、ついには近接用だろう機体だけが残る。


「さよなら」


 周囲には、無線の類は全く飛んでいない。

 何かで通信をしているはずだけど、私の知らない方式か。


 最後に残った敵機、そのコックピットになりそうな部分を切り開くようにとどめ。

 見えた中身は……半ば予想通り。


「シリンダー容器? あの中身は……」


 それが最新なのか、旧式なのかは知りたくない。

 人間の頭部に入っているだろうものが浮いた容器なんてのは、不気味すぎる。


「あれ、人間としての意識があったと思う?」


「ない、と思います」


 いくらかは願望交じりのやり取り。

 生き残るため、人間が復活するため。

 どんな理由があっても、あれが望んだ姿とは思いたくない。


「記憶媒体を探してみますか?」


「そう、ね。さすがに何か情報が欲しくなってきたわね」


 これまでは、どこかいびつな部分が多い町や敵ばかりだった。

 今回は、実態はわからないが、中身以外は整っている。


(何かわかるといいのだけど……)


 沈黙が支配した町へと進み、町中を当てもなくさまよう。

 適当にそれっぽい建物を見つけ、中へと入る。

 その場所は、大きく爆発した個所のすぐそばで、半壊していた。


 それでも原形を保つ丈夫さは、重要だったということだろうか。


 罠に気を付けつつ、ここから敵機は出てきたのかと思う穴を降りる。

 そうして……後悔が体中を満たしていく。


 さっさと次にいっておけばよかった、と。


「工場……か」


「工場? これが? 機械生命体の自分にもわかります! これは、生命への冒涜ですよ!」


 珍しく、怒りをあらわにするカタリナ。

 内心、私もそうなのだが、突き抜けてしまった感じだ。


 広い広い空間に、無数の機械。

 それらはJAMや車両の生産設備でもあるのだろう。


 その奥に立ち並ぶのは、パーツ。

 取り出された後の、人らしき姿。

 らしき、というのはその四肢がおかしいからだ。


「頭部以外は不要、頭部も……演算、制御装置としてしか用が無い……」


 そう、まるで冗談のように、四肢は細く、ゆらゆらと容器の中を漂う。

 頭部だけが、しっかりと形を残し、育てられているようだ。


 いくつもいる無人機たちは、こちらに襲い掛かってくる様子がない。

 打ち止め、ということだろうか?

 集団の中でも目立つ無人機に狙いを定め、主要部分以外をブレードで切り裂く。


(何か情報が吸い出せるといいけれど……見たいような見たくないような)


「レーテ」


「ええ、そうね」


 無言で石をルビーに切り替え、ライフルを構える。

 今もなお、作業を続ける機械群ごと、その空間を燃やした。


 せめて安らかに眠ってと思いながら。


「これの中身を探ったら……中央、一気に行きましょうか」


「はい。その方が精神的にもいいんじゃないかと思います」


 後味が悪いなんてもんじゃない。

 覚悟はしていたつもりでも、やはり限度があったようだ。


 暗い気持ちを抱えながら、石英や水晶を集めつつ、町を飛び出す。



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