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JAD-269「無人の世界」



「前方1000、多数!」


「了解っ! まずは手前をたたくっ!」


 人間である集団と別れてしばらく。

 私たちは、人間以外と頻繁に遭遇していた。


 すなわち、無人機を中心とした無言の軍隊と。


「予想通りの配置、数ですね」


「まったくよ。こんなところだけは、人間っぽいわ」


 追加の接敵までのわずかな時間。

 その間に、機体の損傷と消耗を確認する。


 幸い、こちらの性能向上により、被弾はほぼない。

 あっても、ダメージになるところまで行っていない。


(それはそれで、装甲材は特別じゃないはずという怖さはあるのだけども)


 まだブリリヤントハートという脅威は報告や共有がされていないのか、相手の動きはほぼ一緒。

 姿を見せたこちらに対し、不審者がやってきたように対処するだけのようだ。


 上空は、青空。

 遠く遠くの空に、きっと衛星が浮いている。


(遠距離通信ができるなら、もっと楽だけど……仕方ないか)


 元の大陸のメテオブレイカーが入手に成功した衛星画像。

 その中で地上が確認できるものから、推測して行動している。

 どのあたりを制圧していけば、大陸の支配がしやすいかを割り出したのだ。


 別れる前に聞けた情報と、それらを組み合わせて拠点位置を推測、結果は大当たり。

 すでに多くの拠点を襲撃、打撃を与えているはずだ。


「アパタイト、散弾!」


 声に出す必要はないけれど、自分の意識の問題として切り替えする宝石名を口に。

 また進化したブリリヤントハートの力を感じながら、まだ遠い相手に無数の弾丸を放つ。


 光の弾丸であるそれらは、意志を持つように軌道を変え、敵機に襲い掛かる。

 煙を上げ、相手が動きを止めるのはすぐのことだった。


「レーテ、気が付いてますか?」


「うん。相手も石の力を多用するようになってる」


 手で転がすのは、少し前に回収した敵の残骸、その一部。

 クリスタルジェネレータとは全く違うけど、石の力を引き出す部品という点では同じ。


 妙に光る筒のような部品がある無人機を撃破し、回収できたのがこれだ。


「石英とかを補充できるのはいいけど、ちょっと……ね」


 色々な意味のちょっとね、だ。

 1つは、さっき体験したように相手の攻撃能力の向上。

 それに比例するような、謎のこちら側の防御力上昇。


 そして、何よりも不気味なのが生体部品のようなものが見当たらないことだ。


「こう言ってはなんだけど、カタリナですら自由自在にとは言えないのよ? なのに、こんな大量生産な奴らが……」


「私を設計した時代より、後なのかもしれませんね。より研究の進んだ時代」


 そう考えるのが一番簡単で、一番ありえそうだ。

 何せ、この星……遠い遠い宇宙の一角で、人類が自分たちで争ってる状態なのだ。

 恐らく、何十年……下手をすると100年とか違う感覚で宇宙に人類は種を飛ばしていた。


 目的が移り変わっていくのも、仕方ないといえる。

 巻き込まれてるこの星にとっては、たまったものではないが。


「もしかしたら、生身の代わりに機械が生き物としての何かを代用できるようになってるのかも」


「なるほどね。カタリナ以上の、機械生命体か」


 そうなってくると、量産機体に、多少力を使えるだけの部品をというのも不可能ではないのかな?

 となると、あとはこちら側の防御だが……。


「あ、そうか。視界を変えてみればいいんだわ……なるほど」


 敵機の増援はしばらくなさそう。

 警戒は続けたままで、私は視界を石の力が見える状態に切り替える。

 瞬間、機体全体をもやのようなものが覆ってるのが見えた。


「石の力へ対抗するフィールド、かしら?」


「私には見えませんが、データとしては観測できます。確かに、全体を覆っていますね」


 どうやらそういうことらしい。

 出力の上昇に伴い、それは防御、盾ということにもなるようだ。


 思わぬ成果に微笑みつつ、次の場所への移動を再開する。

 休息をとるにも、安全な場所を見つけなくてはいけない。


「高い廃ビルみたいなのがあるといいんですけどね」


「そうねえ……集落もどき以外、大自然なのが不気味だわ。動物は一応いるみたいだけど」


 中央に行くほど、植物はあふれるように繁殖している。

 他には、昆虫の類も。


 ただ……動物、爬虫類や鳥類なんかも含めて、見た目通りかがわからない。

 見た目はちゃんと動物なんだけど……うーん?


「たぶん、見た目は普通でもほぼほぼミュータントになってると思います。そう感じますから」


「そっか……どうしようもないわね」


 機械交じりの動物もどきは、限られた存在……そう思いたい。

 大陸中のそういう存在を殺して回るのは、たぶん不可能だから。


 でもなんとなく……大元をどうにかすると、解決しそうな予感はあった。


「次の予想集落地点まで、10分」


「本当に近いのよねえ……」


 推測が当たってほしくないとは思いつつ、その願いは無駄になるなとも感じる。

 かつての星で、人類がそうだったように、集落もどきはいたるところにあるようだった。

 人類が星に満たされていたことを再現するような、無人機たちの行動。


 重要拠点だろう場所を、重点的に襲い続けることを再確認する。

 こうすることで、外への圧力を減らせるだろうと考えながら……。


「さて、攻撃開始!」


 見えてきた建造物へ、威嚇と誘い出しを込めた一撃を放つのだった。



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