JAD-266「本末転倒な復活」
残念ながら、無人機を制御するコードの類は見つけられなかった。
攻撃の際に、そこもつぶしてしまった可能性が高い。
ただ、なんとなくだが……そういうコードとしてはもう存在しないような気がした。
「何者かの意志、それがこの女王個体に宿っていた気がする」
「それは、人なんでしょうかね」
「正解で、間違いでもあると思う。カンだけどね」
物資としては回収できたが、情報という面ではよろしくない。
下半身にあった工場部分が、以前見かけた機械アリの物と比べて高性能だというぐらい。
そして、動力源にあった宝石は、カットされていない原石のような状態。
カットしなくても十分に使える技術があるのか、逆にカットする技術が残っていなかったのか。
使うのはなんだか嫌だけど、そのままというのも問題なので回収だけしておく。
「さて、外の無人機たちも倒すだけ倒しておかないと」
「生産設備、他にもありますかね?」
カタリナが心配しているのは、女王個体以外にあるかもということだ。
確かに、一括で生産していたかも不明。
まだ電源が残っている無人機たちにとどめを刺しつつ、町らしき場所を探索。
見た目は、崩壊前の世界にあったらしい町並みに近い。
けれど……どこかいびつだ。
「熱源反応はなし。鳥も何もいませんよ」
「見て。全部、機械になってるんだわ」
人が生活するには向いていない構造の家屋。
そんな場所に、おそらく機械でできているだろう犬らしき姿を見つける。
首から下は生き物としての犬に見えるのに、頭部は機械そのものなのだ。
(なんというか……不気味、が先に来るわね)
「人の体を再生するのは、なかなか大変な部類。それは私たちが証明している」
「だからってこれは……これでは人類の復活とは……」
彼女の言う通りで、これではどれだけ復興したように見えても、人類が、とは言えない。
ここに、人の自由意思は一切無い。
無人機を支配しようとしたのが間違いだったのは、その通りだろう。
最初は、そんなつもりではなかったと思うのだけどね。
復興の手助けにするつもりが、本末転倒になったわけだ。
「効率よく生産するように、目的を達成するのに、人類が邪魔と判断した存在がいる……」
動きを止めた機械群を視界に収めつつ、生産設備を捜索し続けること数時間。
2か所、それらしき設備を発見し、破壊。
これでこの町は解放されたと言っていいだろう。
依頼を終えたことを報告すべく、来た道を戻ることにする。
念のために、地上をホバー移動しつつ、だ。
途中、何回か無人機らしき小集団に遭遇したけど、動いてない。
故障というより、動きを止めた、だ。
「燃料切れ? でもないはずよね……命令は受けているはず」
「停止命令でも飛んできたんでしょうかね?」
親機である形の、女王個体。
それが停止したから?
まだ見えてないことが多すぎるが、動いてないならそれでいい。
念のために、足や武装を破壊しつつ、進む。
そうしてるうちに、川を何本か超えたところで自然以外が見えてくる。
「一部は依頼を受けた時にいた車両ですね」
「進軍でもするのかしら?」
言いながら、なんとなくだけど私たちがやっちゃったのかなとも思う。
無線を使い、呼びかけながら人類による武装集団に合流。
そこで聞かされたのは、予想通りの物だった。
つまりは、女王個体のいた町への、襲撃作戦。
「犠牲は覚悟していたんだが……」
「逃げるに逃げられなくてね。ごめんなさいね」
その場にいた面々で、私とは初対面の人たちは何が何だかという感じ。
私たちが、一機で町を事実上解放したことは、半信半疑、かな?
「案内を頼んでもいいだろうか? 拠点は、できるだけ内陸の方が防衛しやすい」
「それはいいけど……なぜ?」
「そうですよ。危険なのでは?」
内陸に行くほど、無人機たちが中心の地域に近づく。
それこそ、中央には人がいないのはこれで間違いない。
「危険なのは確かなのだが、やつらは星の力、スターストリームも手を加え、大陸の外に近づくほど使いにくいのだ」
こっちに来てから感じていた違和感。
その正体が、1つ明らかになるのだった。




