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JAD-264「主従逆転」


 一言でいうと、とても戦いと呼べるものではなかった。


 無数の残骸、無数の騒音。

 まるで、アリの巣からすべてのアリが出てきたかのような、不気味な光景。


「カウント一応してますけど、確認します?」


「遠慮しておくわ……もう、まだ来るの」


 すでに地面が1、敵機が9ぐらいに残骸が散らばっている。

 ほとんどは無人機だ。

 四つ足、多脚、戦車タイプ……人型も一応いるわね。


 東方からやってくる相手側の増援も、戦いを想定していないのかただ進んできた。

 ちょっと突けば、そのまま撃破。


 あまりにも弱い。

 その理由には、心当たりがある。


 また集落からぞろぞろと出てくる無人機の小隊へと攻撃を放つ。

 そろそろ、さすがに武装用のエネルギーも怪しい。


「指示が出てないんだわ。戦闘するように、AIだかなんだかわからないけど、設定がなってないのよ」


「だからってこれでは……」


 カタリナの言いたいこともよくわかる。

 ここまで被害が出ているのに、一切他の動きがないのだ。


 もし、人間のように判断できる存在が相手にいるなら、撤退なりなんなりしてもいいはずなのに。


(集落の維持と反撃しかないってこと……)


 ここから人間を襲いにいったことがあるかは不明。

 でも、ここからの襲撃が過去にあったのなら、命令の上書きルートが存在するはずだ。


「指揮個体がいるはずなのよね……もしくは、通信装置みたいなの」


「奥に引っ込んでるんでしょうかね?」


「それはありえるわね……」


 実際、今のところそれらしい相手は出てきていない。

 車両、無人機、JAMもどき……うん、いない。


 それにしても、量が多い。

 そのまま並んだら、敷地を埋め尽くしても余るんじゃないだろうか?


「いったいこれだけの量がどこに……地下?」


「レーテ、トパーズに変えて地面に射撃を。探査します」


 頷き、一度ブリリヤントハートを飛翔させる。

 今度はこちらを認識しているからか、無人機たちの銃口がこちらを向いてくるが、遅い。


 上にあがる攻撃というのはめったに当たらないものだ。


 そのまま、ダイヤの片方を茶色ベースのトパーズに。

 岩や砂を生み出す力を、今回は地面に向けて発射。

 超音波探査機のように、力が地面に浸透し、広がっていくはずだ。


「うそ、でしょ……こんなに!?」


「レーテ、機械アリも人類の設計、なのでは?」


 その指摘に、はっとなる。

 予想ではそうじゃないかと考えていたけれど……。

 確かに、その可能性がすごく高い。


 なぜなら、集落の地下には、東へ東へと広がる、大きな空洞が見つかったからだ。

 明らかに、巣のような構造をしている。


「だったら、狙いはつけやすいっ!」


 地面に向けて、いくつも攻撃を繰り返す。

 狙うのは、位置情報。

 生き物としてのアリに存在するような、女王個体!


 大体そういうのがいる場所は、決まっている。


「見つけたっ! 突撃準備!」


「いつでもっ!」


 そうして見つけた、いかにもな空白。

 そこへ向け、上空から一気に攻撃を連打。

 地面を、大きな杭で打ち込むように削り取っていく。


 同時に機体を降下させ、大穴へと滑り込ませる。


 はっきりとわかる、力の波。

 周辺から石を集め、力にしているとわかる感覚。

 陽光に照らされる光景は、ある種の地獄。


「完全に、人が下になってるじゃない……」


「これが、人の目指した姿?」


 否定したいが、否定しにくい。

 地下の空間に降り立った私たちが見たのは、異形の親玉。


 巨体を、無数のパイプやらとつなげた、無人機の親機のようなもの。

 そして、周囲に点在するシリンダーのようなものに浮かぶ、人だっただろうもの。


(救出は……無理か)


 ここからでも、すでに彼らがただの部品、生体部品と化していることがわかる。

 そう、人が無人機を利用するのではなく、無人機が人を部品として利用している。


 地上でもわかっていたことだったが、決定的な光景だ。


 と、ようやくというべき変化があった。

 親玉の周囲にいた無人機たちが、こちらに迫ってくる。


「見つけた以上は、逃がしはしない!」


 名前も何も知らない人々。

 そんな人たちの敵討ちになるのだろうか?


 物言わぬ無人機相手に、攻撃を開始する。



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