JAD-260「見えない色々」
「周囲は自然にあふれてる割に、武装が物々しいんだけど?」
「私からはなんとも。でも、周辺の穴を見るに、何度もやってますねこれ」
介入準備はしたけれど、もう少し情報が欲しい。
木々に隠れつつ、徐々に近づき……目撃する。
石の力によるものが7、火薬によるものが3といったところ。
どこでどう手を出すべきか、少し悩む。
が、そんな気持ちを震わす出来事が起きる。
「集落の後方から、脱出してる人たちがいます!」
「こっちでも見えたわ。女子供ってわけか……改めて、突入。攻めてる側を突く!」
まだどちらが正義だとかそういうのはわからない。
けれど、弱者がいる状態での戦闘となれば、話は変わる。
ここで介入しなければ、私たちの気持ちが納得しないのだ。
「肩部砲はダイヤによるエネルギー弾をけん制にばらまいて。あとはこっちで当ててく!」
「了解。出力は絞って数を重視します」
周囲の木々を揺らす勢いで、一気に飛翔。
斜めから見下ろすような形で、左手にライフルを持ち、射撃開始。
イエローダイヤをメインにした、電撃交じりの射撃だ。
まずは、大きめの機体。次に重武装っぽい相手を適当に。
集落への攻撃だからか、相手の機動力は低いように見える。
(こちらに気が付いていない? センサー類とかはないのかしら?)
いくつかの機体が直撃を受けたはずだが、周囲を確認するような動きはない。
まるで気が付いていないか、対応するつもりがないかのよう。
昔、これと似たようなのを見たことがあるような……。
(今は攻撃の手を休めないように……)
移動しつつ、射撃は続ける。
徐々に高度を下げつつ、上からたたきつけるような攻撃だ。
こちらを無視する攻め手と違い、防衛側はこちらを利用しようという動きにシフトしたようだ。
カタリナのけん制射撃が攻め手の集団を妨害すると、そこに攻撃が降り注ぐ。
私が狙い打った相手のとどめを刺すように砲弾が当たる、などだ。
「集落の人間は、話が通じそうね」
「はい。少なくとも問答無用はないんじゃないかなと」
まだ希望的観測でしかないけれど、そんな気持ちになるぐらいに、攻め手側が奇妙すぎる。
まるで、多少の損害は気にしないように最初から決めているような……あっ!
「機械アリを相手にしてる時と同じなんだわ……」
「言われてみれば……」
機体を集落と攻め手の間に滑り込ませ、すぐ後ろには集落の壁。
しっかりと大地を踏みしめ、射撃体勢に入る。
モニターに映る相手に、とにかく攻撃を叩き込む。
やはりというか、なんというか。
有人機がいるようには見えない動きだ。
けれど、明らかに何機かはJAMらしき存在がいる。
「無線の具合はどう?」
「相手側から何か電波などが出てる様子はありません。集落側では飛び交ってるようですが」
「じゃあつながるように呼びかけ。人型を適当に一機無力化して捕まえると」
いうが早いか、どちらの砲撃も飛び交う前に進む。
狙うのは、攻め手の後方にいる集団、その中でも回りと毛色が違う機体だ。
「悪いけど、沈んでもらうっ!」
邪魔になる相手、おそらく無人機たちを撃破していく。
車両のようなものから、人型モドキ、つぎはぎのような相手も。
もろさが目立つ感じで、こちらの攻撃にすぐ倒れていく。
聞こえるカタリナの呼びかけを理解したのか、降り注ぐ攻撃が左右に移動するのがわかる。
私の向かう正面は、邪魔はない。
「ブレード! 武装部分を切り取るっ!」
本当は核、JAMであればクリスタルジェネレータがあるあたりを貫けば一発だ。
でもそれだと、情報が少ないだろうと判断し、無力化をちゃんと狙う。
有人機にしか見えないのに、人が中にいる気配のない人型。
こちらに気が付いたように向きを変えるが、遅い。
まずは手持ち武装、次に足、そして目についた武装類。
順々に切りつけ、あっさりと無力化できてしまった。
「……弱くない?」
「そう、ですね……」
とても、危険を冒してあの森や海峡を越えるほどの相手とは思えない。
集落が実はとんでもない?
それも、人を逃がしてるという行動からすると違いそう。
「無線で呼びかけ。立ち寄ってもいいかって」
「了解です」
すぐに無線の返事があり、まずは防壁の門あたりでということになった。
さて、こちらの大陸でのファーストコンタクトだ。




