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JAD-025「騎士団」


「フリーのジュエリスト、か。前は東から? 問題を起こさないようにな」


「お仕事は、しっかりやらせていただきますね」


 検問のような場所にたどり着き、検査を受ける。

 と言っても、免許証のような身分証はない世界だ。

 あるとしたら、その地域ごとにお偉いさんが限定的に出している物だろう。


 機体の動力を落とし、2人でトラックに乗った状態での応対は、悪いものではなかった様子。

 最初は輸送業だと思ったようだけど、機体が荷台にあるのに、随分と驚いていた。


「思ったより道路状況がいいわね。整地されてるのかしら」


「重い物が行き来しますから、公共事業みたいになってるのかもしれませんね」


 ほら、と言われそちらに視線をやれば工事中の看板。

 JAM未満の重機や、作業員が道路を補修しているのが見えた。


 その周囲の町並みを見つつ、まずはジュエリストが集まる場所へ。

 酒場か、仕事が集まる役場というところだ。


 以前のような政府はないけれど、近い存在は各地にある。

 その人たちが、自分の地位の維持を引き換えに、人々をまとめているのだ。

 さぞかし美味しい汁をと思うかもしれないけれど、その苦労はかなりの物だと思う。


「外にはミュータント、いつ尽きるかわからない資源、大自然の猛威、ですものね」


「ええ。私はなれってお願いされても、嫌だわ」


 カタリナとそんな雑談をしつつ、目的の建物を見つける。

 トラックが何台も止まり、行きかう人でにぎわっている。


 他と同様、トラックを止めて防犯装置をオン。

 まあ、機銃や警告音声がセットになったようなものだけど。

 こんな白昼堂々、そういうことをする連中もなかなかいないでしょう、多分。


「さて、どんな話があるのやら」


 カタリナを引き連れ、役場らしい建物に入る。

 瞬間、様々な視線が刺さるけど、スルー。

 いちいち気にしていては、きりがない。


「今日来たところよ、何か登録とか必要かしら」


「いや、ダメなら戻ってこないってだけだ。駆け出しと一緒で悪いが、そっちから選んでくれ」


 とても役場の対応とは思えないけれど、公務員なんて言葉が意味を持たない時代だ。

 こうでもしないと、やっていけないみたいなところもあるのだろうか。


 気にせず、雑に印刷されたチラシめいたものや、掲示板に書かれた物を見ていく。


「護衛はまだちょっとパスで……あら、野良ゴーレムの排除?」


「実入りが少なそうだと思われてるんでしょうか」


 着飾っているわけではないけれど、女性(カタリナはほぼ少女の姿だ)2人となれば、目立つ。

 背中に視線が刺さるのを感じつつ、仕事を選んでいく。


 結局、野良ゴーレムの排除と、街道の見回りをセットで受けた。

 どちらも役場が依頼主だったから、ちょうどいい。


 どちらも明日から実行することになる。

 後は宿を探しに、街に出ることにしよう。


「さーて、どこがいいかしら……ね?」


「あれ、なんでしょう……JAMですよね」


 街にトラックで乗り出してすぐ、道路を進む人型を見つけた。

 都合5体、見た目はほぼ同じ姿。

 なんというか、鎧って感じの様子が、町並みに溶け込めていない。


 道路の脇にトラックを寄せ、彼ら?が通り過ぎるのを待つ。

 大げさなブレード、もう大剣と呼べそうなものを背中に備え付けている。

 敢えて言うなら……そう、騎士…そういった類だ。


「お姉さんたち、ここは初めて?」


「ええ、そうよ。さっき着いたところなの」


 窓を開けていたからか、道端から声。

 そちらを向けば、看板を抱えた1人の女の子。

 人受けしそうな態度に、思わず返事を返してしまう。


「そっかー。あれね、この街の騎士団だよ」


「騎士団? ええっと……ちょうどいいわ。泊めさせてもらおうかしら」


 少女の持っていた看板は、宿屋の物だったのだ。

 力仕事は出来ないから、外で宣伝と呼び込みを、というわけだ。


 喜ぶ少女の案内を受け、ひとまずトラックを駐車場へと向ける。

 エンジンを切り、降りた私たちに、少女は濡れタオルを差し出してきた。

 サービスの一環、ということなんだろうけど、なかなか珍しい。


 チップは後で揉めるかもしれないから、封を開けていない焼き菓子を1袋そのまま渡す。


「いいの? やったー! あ、こっちだよ」


 片手には菓子袋、もう片方の手で私を引っ張る少女。

 その勢いに苦笑しつつ、招かれるまま宿へ。


「いらっしゃいませ。何泊されますか?」


「ひとまず一泊は。仕事、受けた後なのよね」


 これまた珍しいことに、カウンターのすぐ後ろの壁には、大きく料金表。

 個人的には、ここは信用出来るなと感じる。


「それはそれは。地図等ご入用でしたら、ご相談くださいね」


「ありがと。さっそく周辺の確認だけでもさせてもらおうかな。カタリナ、その子に部屋を案内してもらって?」


「ええ、わかりました。お願いしますね」


 元気よく動き出す少女に、カタリナが引っ張られていくのを見ながら主人とカウンター越しの会話だ。

 慣れているのか、既にプリントされている地図が出て来た。

 地形が変わることもあるし、あくまでも参考だと念押しされつつ。


「山に森、沼地なんてあるのね」


「泥からは良い成分が抽出できるとか聞きますけど、何か棲みついてるそうで」


 その後も、確認したい項目を聞き、少女が改めて呼びに来たので部屋に向かう。

 掃除もしっかりされていて、思った以上に過ごしやすそうだ。


 ひとまずはと荷物を降ろし、しばしゆっくりするのだった。


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