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JAD-257「生命限界点」


「施設沈黙を確認。探索しますか?」


「不要ね。どうせ同じのしか生まないわ」


 地上に降り立ち、ライフルの片方を向け、発射。

 それだけで荒野に埋もれるように残っていた施設は崩落する。


 これで、無人機が湧いてくることもないだろう。


「時期の違う隕石が至近に落下、目的設定が違うからと争いあう無人機。不毛すぎますね」


「ほんとよ。そのせいでこのあたり、資源がほとんど残ってないわ」


 この星への突入時に、運が悪かったのか、隣り合う運はあったのか。

 これまでにも見た、無人機を生産する設備を含んだ隕石が複数。

 それらが、限りある資源を奪い合うように対決していたのだ。


 ただでさえ、動植物のほぼいない場所に、そんな戦闘。

 余計にこのあたりの復興が遅くなるのは明白だった。


 施設を沈黙させ、命の気配が薄い荒野をさらに北上。

 ここを南下してくる根性があるなら、一緒に暮らそうってなっておけばよかったのにと思う。


 でもそれは、もう訪れないもしも、だ。


「建物らしきものがあるから、何か補給ができればと思いましたが……ここで彼らは無人機を補充したんでしょうかね?」


「ありえるわね。結局、埋め込まれた何か以上の仕組みはわからず、できる、としかわからなかったわね」


 おそらく、偶然に手にしたか、引き継がれていた無人機用のコード。

 無線送信によるそれで、無人機を支配下におけるそうだ。


 その深度的なものは、本国にいる上層部が一番、彼らのは結構出回っている部類だとか。

 力の源は、利き手に埋め込まれたチップ。


(まるで、昔あったという認証システムみたいだわ)


 おそらく、いや……間違いなく、星外の技術。

 隕石とともにやってきた技術だ。


 偶然発掘できたのを解析、使用しているパターンと、受け継がれていたパターンがある。

 どちらもそれぞれに厄介だけど……。


「偶然手にしたというほうが、多少は気が楽……かしらね?」


「どっちもどっちですよ、たぶん。あ、レーテ。何かするにしても外はだめです」


 今出ると、寝てる間に凍り付きますよなんて言われてしまう。

 確かに、外気温はぐんぐん下がっている。


 確か彼らも、海峡が凍りつつも移動可能な時期だったからと言っていた。

 そうでなければ、向こうの大陸隅で暮らす状態だったと。


「だからか、生き物がほとんどいない……」


「はい。通り過ぎるしかできない、限界点ですかね」


 外の音を拾うことができたなら、風と私たちしか音を立てていないだろう。

 沈黙にも似た何かが満ちる場所を、低高度で飛んでいく。


 岩山、岩盤があれば立ち寄ることは忘れない。

 露出している水晶の鉱床があれば、回収するためだ。


 結局、それから数日かけて進み、ようやく目的の海峡だろう場所が見えてきた。


「ここ……か。確かに真っ白」


「車両程度なら乗っても大丈夫そうですね」


 本来は岬、崖だっただろう場所から見下ろす先は、陽光に白く照らされている。

 一面が雪、不自然なほどの白い世界。


 時折の山は、きっと氷だろう。

 氷の厚みはわからないけど、かなりのもの。

 これは下からの襲撃は気にしなくてもよさそうである。


「一気に飛んで行った方がよさそうですね。向こうについたらどうします?」


「情報収集、本当に世界征服みたいなことをするつもりなのか、とかね」


 私は星の管理者というわけじゃあない。

 単に、知り合った相手、その世界が蹂躙されるのをよしとしないだけだ。


 自分の好きに生きるからこそ、自分勝手でいいというわけじゃないからね。


(不幸な行き違いだった、とかなら意外と……)


 そんなことを考えつつ、飛行速度を上げた時だ。

 ブリリヤントハート以外の影が、雪原に現れた。


「直上! 巨大飛行物体!!」


「推定ドラゴンと設定! 回避っ!」


 襲い掛かるGに耐えつつ、真横にブースターの向きを変更。

 結果的に、斜め前に飛ぶ形でその攻撃を回避。


 落ちてきたのは、氷塊だ。


「あの見た目で恒温動物なんですか!?」


「聞いてみるしかなさそうね!」


 気配を感じさせない高度で、相手は浮いていた。

 空の青さに溶けてしまいそうな、青い体。


 不思議と、その瞳には敵意ではない光が宿っているような気がした。





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