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JAD-256「極限下の命」



「私たちは勘違いをしていたのかもね」


「はい。これを見てしまうと……」


 高度をとったブリリヤントハート。

 そこから見える光景は……不毛の大地だった


 北への旅路。

 もともと、人はほとんど住んでいないだろうと考えていた。


 以前入手した衛星画像でも、年単位で空白の地域なのだ。

 これは、生き残っている衛星が少なくなってきているから。


 そのうえ、ひどく雲が多くいつも白い状態だった。


「あの人たちも、ぎりぎりの逃避行だったということですね」


「ええ。向こうから渡ってきたとは言っていたけど……確かにこれは、南下しないとだめね」


 雲の下には、水と氷、雪と……ほぼ草木のない土地。

 視線を上げれば、遠くぎりぎりにうっすらと緑。

 この高度でこれなら、地上を進んで数日はこんな調子だ。


 この地域は見渡す限り、まるで命の存在を許さない流刑地のようだ。

 その点でいえば、彼らもフロンティア、開拓者ではあったわけだ。


 来た方向を思い出せば、急に植物が生えているラインがあった。

 とある川を境に、はっきりとしているのだ。

 このあたりが、自然が復活しているかどうかの境目なんだろう。


(だからって、まず攻撃から排除をではね。こちらも反発しかないわ)


 彼らは、まず対話から入るべきだったのだと思う。

 もっとも、それが許されない環境だったのだろう。


「あの辺なら降りられそうね」


 広めの場所を見つけ、徐々に降下。

 周囲の状況を確認しつつ……金属反応?


「残骸ですね。もともとあったのか、彼らのものかは不明ですが」


「無人機みたいね。じゃあ彼らのかしら?」


 凍り付いていて、土と一体化してるかのような残骸。

 その陰に、ほんのり緑があることに驚きつつ、一息。


 本当に、何もない。

 わずかな草木には、生命力とは……と驚かされる。


 台地は波打ち、あちこちが風か洪水で削られたのか穴やへこみ。

 これではまるで、寒い砂漠のようだ。


「力の具合はどう? どうも浅いというか、鈍い気がする」


「データ上も間違いないです。ここ、ほとんど地面から力が引っ張れませんよ」


 長居はしたくない、そうつぶやいた時にひらめき。


 この無人機は、どうやって残骸になった?


「っとぉぉーーーー!!」


「レーテ!? 何かが通り過ぎました!」


 とっさに大きく機体をジャンプ。

 報告通り、何かが通った。


 地面がえぐれ、雪と氷が舞う。


(ざっとだけど、大きい! 生き物!?)


「こんな時に吹雪……」


 幸い、空中には攻撃できないらしい。

 殺気が迫ることもなく、ビルの高さほどに浮いたこちらに何かぶつかることもない。


 その代わり、周囲の風が強くなり、地吹雪も併せて白くなっていく。

 これではこちらから攻撃するのはなかなか……ん?


「ライフルセット。最低出力でね」


「了解です」


 上からだからこそわかる、その歪みのような部分へと射撃。

 吹雪を照らすように、光の弾丸が飛び……大きな何かの体表を削った。


「見えないからそうだろうと思っていたけど、透明、いえ……投影、かしら」


「体温が感知できませんよ。生き物ですかね?」


「たぶん、防寒でもあるんでしょう。熱を逃がさないようになってるんだわ」


 ちらりと確認できた姿をデータにすると、四足動物だとわかる。

 体表は、うろこというかそんな感じのもので、周囲の地形に合わせた見た目になる。

 その代わり、上から見たときに変だったわけだ。


 ここだけで暮らしてるわけじゃなく、ここでも暮らせる、といったところ。

 本来は遠くに見える自然のある場所が住処なのかもしれない。


「うまく使えば防御機構に流用できそうだけど、今度ね」


「はい。ここを進んでいて、一部が撃破されたってところですね」


 残骸が生まれた理由に納得しつつ、飛んだまま北上を続けることにした。

 予定の海峡までは、まだしばらくかかりそうだ。




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