JAD-254「陸と海」
後30話弱で区切りとさせていただく予定です
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
「カニカニ、良いカニ?っと」
「汚染はなさそうですね。やはり、記録にある油による駆動じゃないのが大きいのでしょうか」
私たちがいるのは、戦艦の浮いている港から少し離れた浜。
岩がごろごろしており、カニタイプのミュータントが不定期に上陸してくるらしい。
そこにブリリヤントハートは火力過剰すぎるため、ほかの面々と一緒に生身だ。
持ち帰るために、機体自体は持ってきたけどね。
「だと思うわよ。海にはいろいろ沈んだままなんでしょう?」
「はい。探知機ではそこら中に古いのから新しいのまで沈んでますね」
それもどうかと思う状況だけど、この場所がかつて争いがあった場所なのは確実だ。
海中となれば、保管状況は良くないだろうけど、一部はまだ再利用できそうである。
引き上げる気は、ないのだけどね。
「やっぱり、変なところだけは技術があるのよね……発掘品がベースだけど」
「解析して、生産できているのはすごいことだと思いますよ。車両とか特に」
うなずき、自分たちと同じくカニ退治を続ける面々を見る。
男女、老いも若きもという様々な面々で、目的は食料確保だ。
実際、このタイプのミュータントは基本的に食べられ、美味しいらしいのだ。
加工され、保存食のように流通もしてるのだとか。
「加工用の機械も作ってるんでしょう? 動力は石、あとは太陽光と水素か……」
諸事情から、戦闘行動をするJAMなどには使えない動力。
でも、いわゆる化石燃料を使用しない点ではとてもメリットがある。
多分、石による動力、機材がなければここまでにはならなかったとは思うけどね。
「石の力が、もしなくなっても人類は存続できるんでしょうかね」
「できるでしょ。ない時から人類はいたんだもの」
不安げなカタリナに即答し、いくつかのカニを撃つ。
沈黙したそれらを集め、回収しやすいようにして今回分は終わりだ。
適当に自分たちが食べる分だけは切り分けておき、あとは周囲の同業者に譲る。
大した金額にもならないし、持ち帰るのも面倒な量だ。
お礼を言いあいながら、コックピットに。
なんだか、磯臭い気がする。
「レーテ、足が濡れてますよ」
「本当ね……消臭の力なんてどこかに石にあったかしら?」
冗談を言いながら、先に移動を開始。
向かう先は、別の仕事場だ。
しばらく移動した先では、JAMと人間が一緒に作業している。
護岸工事である場所だ。
監督役だろう人に声をかけ、岩を運ぶのを手伝う。
これはJAMの独壇場であり、ほかのJAMも同様の作業だ。
個人的にはトパーズあたりでも使えば、すぐなのだがそれはしない。
仕事を奪うことになるということを、これまでに学んでいるからだ。
「レーダーに感あり。沖にいます」
「了解。ラストピースより警告。ミュータントらしき反応あり。迎撃に移るわ」
無線の返事を聞きつつ、装備したままのライフルを手に構えさせる。
立ったまま、反応のあった方向に向き、索敵開始。
沖に向かったあたりに、何かの集団。
何か浮いて移動してるから、魚ではないと思う。
「不明ミュータント集団が移動中。威嚇射撃で進路変更を試みるわ」
当てないように気を付けつつ、ダイヤの光る一撃を何発か放つ。
それは水柱を上げ、いくらか海を蒸発させる。
一発一発の威力や、熱量が上がったような実感があった。
「火力のデータ調整が必要っぽいですね。予想より強いですよ」
「弱いよりはいいわよね? さて……ん、逃げていくわね」
そうして再び工事の手伝いに戻る。
それから何度も同じようなことをしつつ、作業を進める。
(やっぱり、見えないのは厄介ね)
たまたま水面にいる相手ならばいいけども、そうでないと直前までわからない。
石の力による感知も、完全ではないし、限界がある。
不意打ちがある前提でいるほうが、いいのだろう。
例えば飛んでいると、海中から巨大なミュータントが口を開けて飛び上がってくる、なんてことも。
もしそうなれば、中から脱出するのがいいのだろうか、なんて考えたりもする。
「水中戦……は回避したいところね。相手のフィールドに飛び込むこともないわ」
浅瀬ですら、足元から何が来るかわからないのだ。
見通しの悪い、外洋のど真ん中でなんてのは考えたくはない。
(まずはやることやりましょうかね)
仕事自体は順調に終わり、数日を同じように過ごす。
火山の変化がないことも確認しつつ、出立の日が来るのだった。




