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JAD-251「強化と進化」



「結論としては、直接ブリリヤントハートに核を増やすのは無理じゃ」


「じゃあ、どういう意味なの?」


 スミスおじいちゃんの部下たちが、芋虫の検査を進める中の会話。

 核を増設するかと言いつつ、実際にはどうも違うらしい。


「増設する隙間もないからな……。やるのなら、連結じゃ。いうなれば、2機のJAMをくっつける感じになるな」


「そんなことが? でも制御はレーテ1人でできるんでしょうか」


 大っぴらに言うことでもないけれど、カタリナは人間ではない。

 だから、石の力を引き出すのに限界はある。

 無人機がそうであるように、方法がないわけではないのだけど……。


 そんな疑問に、おじいちゃんは技術者にありがちな笑みを浮かべる。


「普通なら、無理じゃな。できなくはないが、戦闘行動は厳しい。そこで」


「そうか……くっつけることで、一緒だと認識させるのね?」


 思いついたことを口にすれば、肯定のうなずき。

 手慣れた手つきで、紙に設計図らしきものが描かれていく。


 ブリリヤントハートの後ろに、バックパックとして大きく覆いかぶさるような何か。

 そこには核、クリスタルジェネレータを示す部分と、ブースター、そして武装類。


「メインの動力、推進は本体で。武装や追加の推進力として使う。そこでじゃ。あのトラック、売ってみんか? 代わりにこのバックパックを用意する」


「トラックを? まあ、移動時の宿泊所みたいに使うだけだけど……」


「最近、燃費もいいですからねえ」


 ブリリヤントハートの進化、成長により大きく変わったものの1つは、通常時の燃費だ。

 移動だけなら、かなりの距離を移動しても消耗は許容範囲内。

 石英や水晶自体はあちこちで入手できることを考えると、確かにトラックは邪魔なシーンもある。


 いろいろ改良して、長い付き合いだったけれど……仕方ないか。


「一応、大人が数名は座れるような空間は確保できるじゃろう。シート部分を倒せば寝れる。それに、そんなのは関係ない手段があるんじゃろ?」


「まあ、ね。雑品や物資は他にしまい込むわ」


 このやり取りだけで、次元収納がブリリヤントハートに増設されてることはわかるはず。

 今は機体の腰裏付近にあるそれを、うまいところ移植してもらわないといけない。


(あ……どこかで工房も一度出さないとだめね)


 収納してる物資も含め、一度出さないと次元収納の機能がトラブルを起こすかもしれない。

 そう考え、芋虫の調査で騒がしいのをいいことに、おじいちゃんに内緒話だ。


「なるほど……確かにそれは大っぴらにはできん。有象無象が、寝込みを襲いに来るのは確実じゃ。よし、その時には倉庫に一度出して、すぐに収納するとしよう」


「ええ、よろしく。お代はこのぐらいでいい?」


 貯金(といっても電子上のお金だが)から結構な額を提示。

 一応、理由はあるのだ。


「ずいぶん多いが、その価値があると思ったとしておこう」


「そうね。これなら……外や上にも行けるかも、しれないから」


 含みを持たせて口にした言葉に、カタリナははてな顔だが、おじいちゃんは笑みを深くした。

 そう、試算通りの性能上昇なら、今より大胆な行動がとれる。


 高高度で、ドラゴンと真っ向勝負や、長距離の高高度飛行などだ。


「まずは核を取り出してからじゃな。手伝ってくか?」


「そうさせてもらうわ。カタリナもデータ、しっかりとっておいてね」


「もちろん。ばっちり保存しますよ」


 方針が決まればやることも決まる。

 部下たちに混ざる形で、芋虫の調査と解体を進める。


 やはり、生命体ではなく機械だったようで、あっさりと分解できた。

 いくつかのブロックに分かれ、機能別といった感じ。

 肝心の核部分は、予想通りの大きさに収まったようだ。


「周りの部分が種のような感じ……だと思うが、まだわからん部分もある。核自体は何かできる感じではないな」


「レーテ、危なくないですか?」


「今更よ。JAMというかブリリヤントハート自体、発掘品なんだもの」


 もちろん、できるだけ安全を考えた設計にするのだけどね。


 前に入手した、JAMの強化アイデア、追加装甲、追加ユニットのデータを引っ張り出すことにする。

 初めて見るであろうそれらに、おじいちゃんの目が輝くのを感じる。


「これは……これも発掘機体と同時期のものじゃな? よし、やろう!」


 少年のように元気いっぱいになったおじいちゃんの姿に、私もうなずきを返す。

 きっと、とんでもないものを作ってくれるだろうという予感があった。




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