JAD-248「極限環境での出会い」
街を出て、火山へと向かう私。
自分でもわかるほど、少し気持ちが浮ついていた。
「私でよければ聞きますよ」
「わかる? ちょっとね。あの街、争いあったのにみんな一緒に暮らしてるなって」
何かといえば、街に住む人々のことだ。
以前、強硬派と呼べる人々の扇動により、争いがあった街なのだ。
そのよりどころである、ミュータントを動力に使った戦艦は無力化。
ミュータントとは一騒動あったけど、それ自体も解決済み。
後には、穏健派、中立派といった人々が残っていた。
逆に言うと、派閥が違うといっても争っていた相手だ。
(試しに聞いたら、そんなもんだ、なんて言われたっけ)
私にはよくわからないが、結局は企業同士の私闘のような感覚らしい。
決着がついたのなら、あとは気にしすぎないのがコツなのだとか。
おそらく、昔はもっと企業同士の勢力争いが激しかったのだ。
そんな中で、一般人が生きていくための処世術……なのかもしれない。
言い方を変えると、まだまだ命が軽い……のだ。
資料でしか知らない、昔々の都市国家に近いのかもしれない。
使える技術は、ずいぶんと上のほうに跳ねているわけだけども。
「私にはそのあたりはわかりませんけれど、争いが少ないならその方がいいと思います。あと……世界が狭くなるといいですね」
「なるほどね。それは私も同意だわ。移動手段も含めて、まだまだ世界は広すぎる」
念のために、ふわりと空に浮きながらの移動。
眼下では、今のところ平和そうな森と道が広がっている。
よく探せば、森の中はきっと騒がしいだろう。
「あの辺から色が違う……まだ灰も降ってきそう」
視線をあげると、その先には白系の光景が広がっている。
いや、焼けていたりして黒い部分も結構あるかな?
森を、火の暴力が駆け抜けた跡だ。
何か所も森に色を塗ったように、広がっている。
「火災は対応しきれませんから、どうしようもないですね?」
「ええ、そうね。本当は消火活動の一つでもしたいけど、きりがないわ」
念のために、人が全力で走るぐらいの速度に落として、森の上空を飛行する。
まだ地面は熱いのか、陽炎のように揺らめく部分もある。
そんな中、大きな甲虫がいた土地へと向かう。
「見えてきた。うーん、見事に直撃ね」
「逃げて正解でしたよ」
多少はあった緑も、ほぼ焼けるか枯れている。
建物たちも灰や岩石に覆われ、一部は溶岩らしきものが到着している。
ここにはまだ探索できるものがある可能性が残っている。
そう考えた私は、サブ石をアクアマリンに切り替えた。
「凍結……は危険な気がするから、雨をイメージで」
「了解です。散布開始します」
私がしなくても、そのうち雨ぐらいは降りそうだけど、地下に被害が出る前に、だ。
飛行したまま、しばらく水を撒くようにして移動する。
まだ熱い場所に水が降ったのか、水蒸気が霧のように周囲を満たす。
「さすがに何も襲ってこないとは思うけど、警戒」
「ですね。火山方面にいるっていうミュータント、どんな存在でしょう」
そんなことを考えつつ、少し高度を上げた時だ。
石の力を感じた。
すぐに視界に、力の流れが見えるようにしてみる。
確かに、何か力が動いている。
「チェック。火山方面に何かいる」
「了解。探査開始……金属反応? 山に近いところに、反応ありです」
(この状況で、私たち以外に金属が動いている?)
予想外の反応に驚きつつ、そちらへと向かうことにした。
念のために武装の準備をし、そのまま高度を上げる。
なんにしても、射程外、特に上空というのは有利だからだ。
「まずは様子を見るわ。相手がなんなのか知りたい」
「わかるものならいいんですけどね。対象まで距離2000」
徐々に近づく謎の反応。
燃え尽きたような森を超え、火山のふもとといって問題ない場所。
クレーターのようにへこんでいる場所が見えてきた。
どうやら、溶岩が一部、そこからも漏れ出ているようで赤い。
地上を歩くわけにはいかない光景に、のどが鳴る。
「こんな場所に生き物が……あれは?」
赤い溶岩だろう場所のすぐそばに、芋虫のような何かがいた。




