表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

246/278

JAD-245「逃避行」


「まずい、思ったより規模が大きいかも……」


 すでに出発の準備は整い、いざというところだった。

 私の目には、火山の根本から石の力を秘めたものが昇ってきているのが見える。


 ただのマグマじゃない、力が出てくる!


『どうする。どこかで隠れるか、少しでも逃げるか』


「ひとまずはできるだけ離れましょ」


 急いでこちらもブリリヤントハートを進ませる。

 しかし、さすがに1人で逃げてしまうのも目覚めが悪い。


 対処できるように、一番後ろに自分も参加する。

 トラックの方は、カタリナの力で自動操縦だ。

 だいぶ先行させてるし、地図通りにだから事故もないはず。


「怖いのは大きな飛来物と、いわゆる火砕流ですね」


「まったくね。地下施設は閉めておいたからいいとは思うけど……」


 また訪れる時を考え、シャッターはまた閉じておいた。

 さすがに溶岩に覆われたら溶けるだろうけど、ね。


「このままJAMで逃げ切るのは難しいかもしれませんね。幸い、人員は足りましたが」


 そうなのだ。車両に乗っていたのは、ジュエリストも含む。

 結果として、すべてのJAMは起動に成功、合計3機が確保された。

 それらが手にするのは、おそらく部品や機材の入ったコンテナ。


 燃料としての石英や水晶は分割して投入したから、補給の問題も出ている。

 果たして、どこまで逃げ切れるか……。


(いっそのこと、ここから山を狙撃して調整する?)


 どこか適当なところに大穴を開けて、というのはどうだろうか。

 そこまで考えたけど、さすがに時間が足りない。

 そうこうしてるうちに、力の流れがゴールにたどり着いた。


「噴火を確認!」


「ラストピースより全機へ。お目覚めだわ! スミスおじいちゃんや車両はとにかく遮蔽物を意識して!」


『そちらもな! 生きて戻っていじらせてもらうぞ!』


 上等、そう呟いて武装をすべて展開する。

 修復を受け、再度装備することになった背面ライフル2丁。

 それに使い続けている手持ちライフルも2丁。


 危ない軌道のものだけでも、どうにかする!


「さあて、腕の見せ所よ!」


 動力のメインをダイヤ、サブをペリドット、イエローダイヤ。

 ダイヤの熱線で大きいのをどうにかし、小さいのは風で吹き飛ばす!


 機体を反転させながら、背面飛行。

 結果として、空を舞う無数の粒をモニターにとらえる。


「数が……多いっ!」


 当然のことだけど、飛んでくる岩の数がとんでもない。

 小さいものは撃ち落とすより、吹き飛ばした方が早いはずだ。


 まずはすべてのライフルで暴風を上空へ。

 狙い通りに小さいものや靄のような何かが吹き飛んでいく。


 合間を縫うように突き進んでくる大きな岩へは、ダイヤによる閃光だ。

 小さいものは、これに巻き込まれることもあるだろう。


「止める……ダイヤの閃光、ジェーマレイ!」


 当たれば車両はもとより、JAMも相当なダメージになるだろう岩たち。

 しかも、今なら高温マグマの付着物もありだ。

 かなり、遠慮したい気分である。


 そんな気持ちのこもった一撃を何度も放ち、岩たちへとぶつけていく。

 幸い、多くは砕かれるか、角度を変えて関係ない場所へと落ちていく。


「計算続けます。噴火自体は続いてるようです」


「そりゃそうよねって……明らかにマグマがあふれてきてるじゃない」


 幸いにも、噴石自体は最初だけだったというか、向こう側に主に噴出したというか。

 私たちのいる方向は、メインではない様子。


 けれど……山の頂上付近、岩盤が薄かったのだろうと思われる個所が、崩壊していた。

 結果、ズームしなくてもわかるほどにマグマが噴出している。


(これだとすぐに火の嵐が地面を突き進んでくる!?)


 現に、すでに山肌を茶褐色の煙が大量に降り始めている。

 おそらくは、山の中にたまっていたガスなんかも一緒に出てきたんだろう。

 すべてを焼き尽くすかのような、おそるべし力だ。


「噴石の迎撃は中断! バリケードをひたすら重ねる!」


「バリケード!? そういうことですか!」


 うなずき、後ろを向いたままは変わらずに、今度は地上へ向けて力を放つことにする。

 メインをダイヤからトパーズに切り替え。サブはダイヤ2種にする。

 生み出すのは、岩の壁。


 できるだけ大規模に、まっすぐに、長く。


 海で波を防ぐもので、消波ブロックというものを知っているだろうか?

 あれの狙いは、防ぐというより、力を減らすものだ。

 むかーし昔から使われていたものだ。


 どうせどんな壁を作ったところで、すべての範囲を覆うのは無理。

 重要なのは、時間稼ぎであり、火の暴力、その減速だ。


 一定の壁、遮蔽物をいくつも作っておくことで力を分散させようというのだ。


「こっちはなんとかする。そっちは逃げてね」


『なんとかなっ! だがこの全力では30分も持たんぞ』


「10分も逃げられたら十分でしょう、距離的に」


 返事に覚悟を決めつつ、森を切り裂くように力を放つ。

 最初に作った壁が、赤い力に飲み込まれるのを確認しつつ、後退を続ける。


「軽減、約4パーセント。今の調子ならなんとか!」


「了解。いっそがしいわねえ」


 ぼやきつつも、何度か繰り返すうちに明らかにその効果を実感する。

 明らかに、速度が落ちているのだ。


 おかげで、より効率のよさそうな防壁を生み出すこともできた。


 そうして、安全な距離まで逃げられた……と思う。

 山が、赤い服を着こんでいる。

 足元まで真っ赤な、恐ろしい服を。


 周囲を、逃げる動物たちが通り過ぎていく。

 一目散に遠くへ、遠くへ……。


『終わりか?』


「たぶんね。まだ噴火はしてるけど……」


 溜息のように深く息を吐き……それが何かを確認する前に、力を放った。

 それは森から襲い掛かろうとしていた、大きな大きな甲虫を貫いた。


 確かな殺気のようなものを、感じたのだ。

 まさか、こんな甲虫とは思わなかったけど。


『助かった。まさかこの状況で逃げずにこちらに来るとは……』


「気にしないで。よくあることよ」


 親世代なのか、あのシリンダーにも収まらない大きさな甲虫の死骸。

 持って帰るお土産が、1つ増えたのだった。





終盤戦突入です。

終わりまでお付き合いよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ