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JAD-242「虫虫パニック」


 封鎖されていた壁をJAMたちでゆっくりと動かす。

 異様な気配を感じ、そのまま覗き込むように中をうかがった。


(静かすぎる……)


 それに気が付いた時、すぐに私は風を銃口から放ち、前に風の壁を作る。

 何もいない、けれどそれがある

 そんな焦りが、冷や汗となって背中を伝う。


「ガスの準備を」


『もうか? いや、すぐ準備する』


 外からの質問に、ブリリヤントハートの指を敷地内を通る川へと向ける。

 その先では、川面に浮かぶ白い何か。


 ゆっくりと流れるそれは、死んだ魚だ。


「すぐそこに来てるかもしれないわ」


『了解。こっちは密閉されてるがそっちは?』


「こっちも大丈夫。おじいちゃん、なければ出すわよって、まあ、あるわよね」


 足元のスミスおじいちゃんは、いつの間にか大きなガスマスクを装着していた。

 考えてみれば、金属加工となればそういうこともあるか。


 準備完了の返事を聞きながら、壁を大きく開いた。

 特に何かあるようには見えないけど、いやな感じだ。


 経過したであろう年月のわりにきれいなのは、荒らすような動物がいなかったから?

 いや、火山活動自体は最近活発になったはずだし……。


「石で浄化とかできたかしら?」


「やれなくはないと思いますけど、特定の部屋の中ぐらいが限界かと」


 直接可能な石自体に心当たりはないけれど、風を応用したらできなくはなさそう。

 そんなことをつぶやきつつ、壁の内側を見て回る。


 外壁近くには、銃座が複数。

 工場らしい建物もまだ形を残している。


 そして、多くが一度植物に覆われたのだろうとわかる。

 わかるのだけど……今は枯れている。

 その結果、廃墟に見える場所も多い。


「外の木々が調子悪くした原因、火山関連のガスは最近ってことかしら……」


「そうですね。あるいは規模は小さく、壁にさえぎられていたということでしょうか」


 今入ってきた場所も、閉じておく方がいいだろうか?

 何かあったときにスムーズに逃げられないのは問題かな?


 と、発砲音。


「状況は!?」


『何かが動いてたんだ。逃げやがった!』


 少なくとも生身の人ではないだろう。

 それに、私の知っている動物でもなさそう。


 となれば、答えは限られる。

 無人機か、環境対応の……ミュータント!


 あえて前に飛び出ると、周囲へ一気にサーチを仕掛ける。

 敷地全体が暖かいけど、さらに暖かい箇所が複数。

 

 川であったり、日向であったり、不自然な熱の塊であったり。


「そこっ!」


 これまでにはできなかったような、生身でやるような動きで射撃。

 トパーズによる石の弾丸が塊に吸い込まれ、悲鳴。


 すぐに、ほかの気配は逃げ出すのを感じた。


『確認は任せろ。警戒を頼む』


「了解。仕留めきれてないかもしれないから気を付けて」


 JAM以外の面々を陣形の中に入れつつ、周囲を警戒する。

 一度見つけると、古ぼけた建物たちの陰に、何か潜んでいそうな気がしてくるから恐ろしい。


 そしてしばらくして、引きずられてきたのは……昆虫?

 しかし、大きい。


 羽根のある甲虫の類のようだけど、犬ぐらいある。

 つややかな状態であることから、たまたまいたとは思えない。

 ここで、暮らしていたんだ。


「どうする? ちょーっとお宝さがしするには時間制限がありそうだけど」


『多少は想定内だ。こちらは続行してもいいと思う』


「室内なら、迎撃はしやすくはありますね」


 少し目を閉じ、集中。

 そうして承諾の返事を返した。


 めぼしい場所からということで、大きめの建物へと向かう。

 外はだいぶ傷んでいるが、建物自体はまだ健在。

 どれだけの年月を過ごしてきたかはわからないけれど……。


『こんな時にだが、意識して力の使い方が変えられるはずじゃ』


「ほんっと、もう少し早く言ってよね」


 結局、こういう武器は石の力を増幅するものであり、使いやすくするためのもの。

 究極的には、JAMの指先から撃つこともできる。


 溜息1つ、構えたままのライフルに意識を集中。

 通常通りの発射から、拡散、至近距離へ。


 中に、あいつらがたくさんいる可能性を考えて、だ。


『迎撃は頼む』


「ええ、開けて頂戴」


 言うが早いか、隙間に動くものを見つけ、発射。

 細かい砂粒、石礫上の力が放たれる。

 それは、隙間から飛び出ようとする甲虫らへと吸い込まれた。


「撃てるだけ撃ちなさい! おじいちゃんたちは隠れてて!」


 幸いにも、無数にというほどではない。

 何かの遊戯のように、何匹もが順番をずらして飛び出てくる。


 それをひたすら撃ち落とす時間が……続いた。





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