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JAD-233「大事なもの」



「そうなると、やはりJAM戦で最後にモノをいうのは、自分の素質でしょうか?」


「否定も肯定も難しいわね。敢えて言うなら、自信を持って力を振るうことかしら」


 悲観的なのもまずく、楽観的過ぎるのも良くない。

 言葉は古いかもしれないけど、訓練を信じろ、といった感じだろうか。


 記憶でしかないけれど、この世界はやりこんだ。


「私も、つまらないなあと思うような単純な訓練を延々とやったわ。動かない的、動く的とか問わずね」


「なるほど……。今あるJAMだと、戦力としては限界を感じていたので」


 自分自身の年齢は正直わからないけど、おばさんってほどではないはず。

 つまり、少年のような年頃の彼らにとって、私は物心ついたらJAMに乗っていた、ぐらいの感覚だ。


 手っ取り早く強くなる方法は、あるにはある。

 世界にまだまだ眠ってるであろう、旧文明のJAMを発掘、復活させることだ。


(問題は、見つかるかどうかだけどね)


 かなり前に撃破した、無人運用前提のJAM、ラストエイトなら意外と数はありそう。

 あれをうまく改良したらいけるかも?


「どうしても、出力の問題はねえ。私は運よくあの子を手に入れたけど、ね」


 青空教室とでもいうべき会話がされているのは、訓練場の脇。

 ブリリヤントハートと、彼らのJAMが並んでいる。


 こういっては何だけど、兵器としての見た目は彼らのJAMのほうが上。

 ブリリヤントハートは、前の損傷によるパーツ付け替えを含め、少し見た目のバランスが悪い。


 ただ、内部の動力源、クリスタルジェネレータの容量や運用可能な石の数は全く違う。


「拠点防衛用なら、複数の動力を積んで、強引に複数石の運用をしたらどうかしら」


「そんな手法が? 持ち帰って相談してみます」


 ゲーム時代にもあった兵器を思い出しながら、ふと口にしたネタの食いつきはよかった。

 行きつく先は、復興中のあの戦艦と似たようなものよ、なんて告げることになる。


 船体自体は、穴が開いただけ。

 私が開けた、とも言うけれど。


 ともあれ、動力も修理すれば問題ない状態だ。

 あの時は、巨大クラゲの排除と、戦艦としての戦闘能力を沈黙させただけだからね。


「砲台の代わりに、若干移動できるJAMを砲台とするのはありかもね」


 そんなつぶやきも、彼らは真剣に聞いている。

 思った以上に、私のことは評価されているようだ。


 それに……。


「つまりこの場合、敵機はこういった場所に潜む可能性が……」


「川を冷却、機体反応をごまかすために? そんなことが……」


 少し離れた場所では、カタリナの勉強会だ。

 これまでの戦いや、私が語ったゲームとしての記憶、施設で吸収した知識。

 それらを使った、もしも、の机上演習のようなものだ。


 今は、いかに潜むかが課題のようだ。


 前に遭遇した、JAMを動力とする施設。

 そこでは長期間の運用のために、JAMを川に浸していた。

 結果として、冷却のためのリソースを他に回していたわけだ。


「運動もそうだけどね。自分に何が出来るのか、その武器の性能と出来ることを把握しておくのは、やっぱり大事ね。そのうえで、気持ちで負けないように」


「気持ち、ですか?」


「そ、気持ち。勝てるという慢心は良くないけど、勝つという気持ちは大事。そういうことね」


 この辺りはなかなか難しい問題だ。

 あまり前のめりだと、撤退やそういう判断が出来なくなるからね。


 ゲームと違い、現実はやり直しが効かない。

 死んでしまえば終わり、だからこそ、だ。


「後に続く者のために、というのも否定はしないけれど、まず自分が生き残って、自分がつなぐ。そのつもりがないと、何も残せないかもしれない」


「……すごく、よくわかりました」


 感情が、思ったより顔に出ていたのかもしれない。

 自分という存在への疑問や、今を生きていることへの自負、その他もろもろ。

 きっと彼らは、私やカタリナが幼いころから一緒に戦い抜いたペアのように見えてるに違いない。


(間違ってはいないからいいかな?)


 訂正するつもりもない。

 彼らの生きる何かになれば、それはそれでいいことだと思う。


「さ、見回りの当番もいるんでしょう? そろそろ行かないと」


 ちょっと空気が硬くなったのを、自分でほぐしに行く。

 動き始めた兵士たちを見送りながら、カタリナと隣り合う。


「良い芽が出るといいですね」


「そうね。尋問結果次第じゃ、どうなるか……」


 そんなことを話していると、部下を伴ってリンダがやってくるのが視界に入るのだった。




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