JAD-232「別ライン」
「これで最後っ!」
背中を見せながら逃げるという相手を、躊躇なく撃ち抜く。
無人機の一機は、火花をあげながら倒れこんだ。
「最後とは言ったけど、実際どうかしら?」
「わかる範囲では全部倒したと思いますけど……数が数ですからね」
頷きながら、残骸をライフルの先でつつく。
似ているけど、新しい相手だ。
四脚式のボディー、そして武装は貧弱と言っていい。
どこで生産してるのか、火薬式のような銃以外は、近接戦闘が主のようだ。
「動力は……何かしら。まさか、バッテリー形式?」
JAMのように内燃機関と似たようなものかと思ったら、違う。
むき出しになった中心からは、四角いボックスが。
電気ではなく、石の力を閉じ込めておくような感じだ。
「レーテ、これは……」
「ええ、どうも混ざってるわね。宇宙からの来訪者に、こんな技術はなかったはず。後から開発されたのかもしれないけどね」
少なくとも、私やブリリヤントハートの関係者にはなかった技術だ。
これで、この数の無人機が同時に動けていた理由はわかった。
後は、どうしてこんな形で攻めてきているか、だ。
「聞いてみて、わかるといいのだけど」
そもそも、こうして北方に集落とかがあると聞いた覚えがない。
どうしても寒いことが多い土地だから、住むには向かないのだ。
「記録からの推測なんですけど……ここじゃないんじゃないでしょうか?」
「……どういうこと?」
飛んで帰還しながらの時間。
カタリナから告げられたのは、別の場所、別の大陸からじゃないか?ということだった。
「まさか。海を越える方法もそうだし、あんな形で?」
「私もそう思います。ですけど、発掘した設備でとするには都合がよすぎませんか?」
それは、そうだ。
今のところ、多くの生産設備は発掘に頼っている。
参考にして、工場を新設できた例もあるけど、多くは再建、復活だ。
だからこそ、ちぐはぐな感じになっているのが実情。
「ううーん。否定できない。だとしたら……国が産まれるわね」
ゲームとしての記憶が、そう告げている。
外敵となる相手に対し、人は団結か、内輪もめになる。
現状だと、団結だろうと。
そうなると、今は企業がかろうじて集団を維持する中、それは国という形になるだろうと。
違う大陸からの、別の価値観を持った存在。
確実に、火種が増える。
「っと、こっちの戦闘は終わってるわね」
「片付けも始まってますね。あ、誘導員がいます」
そうこうしてるうちに、陣地にたどり着いた。
誘導を受けながら、降下。
こちらにやってくるのは……リンダだ。
「ひとまず、動く相手はいないと思う。遠くに散らばってたら別だけど」
「了解した。指示がいなければ、まっすぐ帰るしかしないだろうから、大丈夫だろう」
これまでも、撤退具合はそんな感じだったらしい。
多少楽観が混じってる気もするけど、それはまあいいかな。
幸いにも、こちら側の被害はけが程度で済んだようだ。
「相手の頭をつぶしてくれたおかげだ。後からで申し訳ないが、追加報酬は出そう」
「あ、それなんだけど。情報ってもらえるかしら」
はてな顔のリンダに、顔を近づけてささやく。
別の土地どころか、大陸を渡ってきた可能性を探りたい、と。
驚く彼女だが、それ以上には態度にも出さないところは優秀だ。
「私で収まる話ではないな。とはいえ、尋問に使えるネタだ。後から結果を知らせよう」
「そ、任せるわ」
面倒なことは、人に任せるに限る。
カタリナを連れて、出かけることにした。
もともと面倒を見る予定だった兵士……多くが新兵相当、な人たちを見に行くのだ。
リンダに場所を聞き、次元収納からトラックを出し、機体をのせて向かう。
次元収納に関しては伝えてあったからか、あまり驚かれなかったのが逆に印象的だった。
そんなに離れていない場所にある宿舎のような建物。
併設された土地で、見覚えのある人たちが何やら特訓中のようだ。
「戦いの後なのに、大丈夫なの?」
「いえ、休む前に少し体そのものは動かしておいた方が良いと言われたもので」
こちらに気が付き、集まってきた兵士たち。
兵士といっても、まだまだ若く、少年が近い。
「なるほどね……聞きたいことがあれば、答えられる分には答えるわよ。JAMの操作とかそういうの」
なんとなく言ってみたところ、次々と質問を受ける羽目になるのだった。




