JAD-231「違う相手」
「凍り付けっ!」
空中から、まるで寒波が襲い掛かるように青い弾丸を発射。
相手JAMの顔も上を向いており、焦った様子がよくわかる。
「!? 直撃を回避!」
「へぇ、やるじゃない」
普通、初見の相手となれば動きは鈍る。
私のように空からの攻撃は、これまでなかったはず。
だというのに、ぎりぎりボディーへの直撃は回避した。
その代わりに、片腕は凍り付いたようだけど。
「相手が被弾部をパージ! まだ逃走してます」
「戦い方はうまくないわりに、逃げるのはうまいじゃない……」
まだ残る残骸や木々を障害物に、思ったより早く、うまくという感じで逃げる有人機のJAM。
初めて見るタイプの姿に、興奮する自分がいる。
やっぱり、こういうJAMとの戦闘は記憶が思い出される。
「レーテ、一致するデータ、ありません。類似データとの一致率も半分を切ってます」
「なるほどね……やっぱり、こっちの工場じゃないか」
一時的に速度を上げ、回り込む形で降りる。
正面から見ると、やはり……違う。
どうしても工場製品、発掘品は土地の色合いが出る。
同じ設備で生産された物が特にそうなるわけだ。
これは、元となる設備がいつの時代かという違いだと思う。
つまるところ、この有人機はこちらではまだ見つかってない設備からの生産品か、発掘機だ。
「聞こえる? 投降するなら命は保証するわ」
返事は、発砲だった。
残った腕と、無理やり括り付けられたような砲からの攻撃。
そのどちらも、赤い光の……石の力だ。
「っと。ルビー、そのほかか……遅いっ!」
私の知る限り、ルビーなどによる火系統の攻撃は手軽で威力が高い。
その分、連射が効きにくく、発射にもわかりやすい予兆がある。
その隙をつき、一気に踏み込んだ。
(よく見たら人が見えるじゃない。昔のロマン機?)
ガラスのような透明部分の奥に、人影が見える。
そこは外す形で、緑の光を帯びた刃で残りの腕を切断。
返す刃で、外付けの砲もだ。
そのまま体当たりする形で、転ばせる。
「もう一度言うわ。投降しなさい」
コックピットを貫く位置で、刃先を少しだけ沈める。
相手からすると、薄皮1枚向こうに死神の鎌がある状態。
モニターの中で、相手が両手を上げたのが見えた。
「そのまま。カタリナ」
「わかりました。拘束してきますね」
一見、美少女、美女のカタリナだけど人間ではない。
なんだかんだと、対人で不覚を取るような能力ではなかったりする。
コックピットをこじ開け、ロープで操縦者を縛るのを見届けた。
カタリナにはそのまま、クリスタルジェネレータから石を取り出してもらう。
やはり、ルビーのようだ。あまり質は良くないようだが、そこそこ大きい。
これでこのJAMは石の力を使えない状態。
「持ち帰るわ。こっちに戻ってきて」
「よいしょっと。若そうでしたよ」
頷き、両腕の無いJAMを肩に乗せるように抱える。
そばにあった片腕も、ひとまずつかんで飛び上がる。
攻撃方法が減ったけど、空にいれば避けるだけでも十分役割はあるだろう。
「まだ戦闘は一応続いてますね」
「みたいね。さっさと戻って合流しましょう」
縛り上げた操縦者がどう思ってるかはわからないけど、味方のもとへと急ぐ。
前に移動している陣地にアピールしながら降りれば、数機の味方JAMが近づいてきた。
「捕虜、でいいのかしらね? 捕まえたわ」
『おお! それは朗報だ。置いておいてくれれば、我々がちゃんと守ろう』
「ええ、リンダにもよろしく伝えておいて。少し前を手伝ってくるわ」
言うが早いか、JAM本体と腕を降ろして前線に向かう。
まだまだ、無人機が暴れているようだ。
味方の隙間に陣取り、当たるを幸いに撃ちまくる。
すぐに戦況は大きく傾いていく。
(もともと、有人機の指揮がなければこんなものかな?)
無人機自体も、なんだか見覚えがないような気がしてくる。
そのあたりは、この後調べればわかるのだろうか?
「敵機、後方の相手が撤退していきます」
「追うわ。一機たりとも帰さない」
追撃をかけることを周囲に伝え、一人飛翔する。
この戦いはまだ何度かは続く。
そんな予感が、浮かぶのだった。




