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JAD-021「大自然の猛威・前」



 夜明けの、荒野。


 砂漠ほどではないけれど、夜明けの一瞬は世界が変わる。

 そんな中を、トラックの荷台に機体を乗せた状態で走っていた。


「街からはだいぶ離れたわね」


『ええ、かなりの距離ですよ』


 タンセが見えなくなって、しばらくたつ。

 私たちが今いるのは、タンセから東に進んだ先にある湖への道。

 目的は、行方不明者の探索。


 砂嵐が収まった後、仕事を探しに出かけた私が出会ったのは、あわただしい様子のカイン。

 なんでも、同業がちょうど戻ってくる予定だったというのだ。

 そこにやってきたのが、珍しく街を直撃する砂嵐だった、と。


「このあたりは岩盤よね? 埋まってるってことは考えにくいけど……」


 つぶやきが、コックピット内に響き、消えていく。

 何かあるといけないので、機体の上半身は起こして、後方を警戒した状態だ。


 向かう先の湖に何があるかと言えば、砂浜。

 湖とはいうけれど、どうも底の方で海につながっているらしい。

 日々、満ち引きと共に大量の砂が舞い上がってくるらしい。


 そして、それは時折の砂嵐で各地に飛んでいく。


『砂浜の珪砂、石英の砂を採取、加工する……地道ですね』


「それが大事なのよ、きっとね」


 運転はカタリナに任せて、周囲を警戒する。

 今のところ、所々に林や森、岩山が広がっているだけ。

 獣はたくさんいるけど、車両がダメになるような相手は見つからない。


「単に立ち往生してるだけなら、いいのだけど……」


 頭をよぎるのは、砂嵐の中に生きる怪物だ。

 まさに、ミュータントと呼ぶにふさわしい生き物。

 ゲームでも、倒しにくさから出会いたくはない相手だった。


 砂嵐の中に生きる、大型の鳥。

 砂嵐を泳ぎ、中で生じる雷も糧とすると言われる生き物……だ。


(本当に生き物なのか、怪しいけれども……)


 砂嵐がずっと起きているわけでもないのに、他の場所では目撃例がないというのが怪しい。

 考えても仕方ないけれど、不思議生物には常識が通用しないから困る。


「晴れ渡る空っと。逆に、水が心配かしらね」


 そんなことを呟いたとき、ふと何かを感じる。

 私の特技、第六感みたいな……不思議な感覚。


「近くに宝石がある……呼んでる……」


 思えば、カタリナを見つけたときも近い感覚だった。

 初期設定のブリリヤントハート、見た目もまったくプレーンな機体。

 なぜか動くそれを操作して、たどり着いた洞窟の中。


 あの時もそう、覗き込むように角を曲がって……。


「何、これ」


『ガラス……だと思います』


 聞こえる声も、困惑に満ちている。

 それもそのはずで、岩山を迂回した先に、湖が見えた。

 が、そのそばに大きなクレーターが出来ていた。


 そしてそこは、陽光をキラキラと反射する何かで覆われていたのだ。

 海と、クレーター。そのこちら側には、林が点在している。

 一部は、森となり向こう側は見えない。


 湖に、クレーターがコブのようにくっついた状態だ。


「砂浜がガラスに? カタリナはトラックを自動操縦で岩陰に。義体ごとこっちへ移動して。出るわ」


『了解。すぐ移動します』


 嫌な予感がした私は、一気にジェネレータに火を入れて駆動させる。

 トラックから駆け寄ってきたカタリナを乗せ、ブリリヤントハートで飛び出した。


 自動操縦でトラックが岩陰に隠れるのを見てから、あまり意味はないと思いつつ、森へ。

 と、そこで見覚えのないトラックが数台、隠れているのが見えた。

 共通の周波数で、無線連絡を試みる。


「聞こえる? こちらジュエリストのレーテ」


『聞こえる。何とか生きているが、下手に出られない。あいつが、いつ来るか怖いんだ』


(あいつ? これを引き起こした奴の事かしら)


 機体を森に隠しつつ、望遠で現場を確認する。

 やはり、キラキラとしていて、驚きの光景だ。

 こんな光景を作るには、私もルビー等で大火力を行使しないと……火力?


「いたのはJAM? それともミュータント?」


『わからん。気がついたら吹き飛ばされていたんだ。こっちを狙ってというより、別の何かを』


 採取組は、とばっちりだったと。

 偶然の怖さを考えつつ、どう動くか思案する。


 宝石を感じる感覚は、収まっていない。

 近くに、あるはずなのだ。


 トラック達から、ではない。これは……そう、あのクレーターの中。

 あまり悩まず、私は動力をダイヤから交換することにした。

 メインはアクアマリン、そしてダブルとして……ヒスイだ。


「慣らし無しで、大丈夫ですか?」


「6つまでなら、十分経験あるから大丈夫よ」


 疑問を顔に浮かべるカタリナ。

 私はそれを半ば無視しつつ、2つの石を専用のボックスに。

 すぐに変換が開始され、力の変化を感じた。


 過去にはまだ届かないけれど、1歩近づいたと感じる力。


「さてっと……何が出るかしら」


 何も動く物は見えない。

 精々が波打ち際で、小さく動くかにぐらいだ。


 クレーターは、完全にガラス化していた。

 油断してホバー移動をやめれば、そのまま滑りそうなぐらい。

 いや、確実にクレーター中央まで滑り落ちるだろう。


「再利用は、エコだけど……これはちょっとねえ」


「何か、います」


 そう、クレーターの中央に何かいる。

 たぶん、生き物。


 今のところ、相手が人間を食べたとかそういうことはないけれど、放っておくわけにもいかない。

 ブースターを一気に吹かし、飛翔。

 角度を付けたところで、アクアマリンの力を使って氷の弾丸を作り出す。


「ロック。シュート!」


 数発の、氷の刃が打ち出され……仮称巨大アリジゴクに突きささる。

 そのまま、相手が沈黙したのを確認してガラス面の採取でもしようと降り始めた時だ。


 湖が、爆発した。



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