JAD-217「誤認」
「撃たないんですか」
「少し、変な感じがして」
地上に降り、船らしき場所の無人機を倒すべく進んですぐ。
目標となる相手を見つけ、ズームして狙い撃つ。
そんなところで、私の手は止まった。
拡大された映像の中では、無人機たちが動いている。
が、決まった動きしかしていないように見える。
「なんていうか、動きが無さすぎない?」
「……言われてみれば、何やってるんでしょうね、アレ」
目標となる無人機は、船らしき場所の周囲をうろつくだけだ。
離れて資源を採取するでもなく、何の目的があるのだろう。
さらに観察を続けて、気が付いたことがある。
これまでに散々味わってきたソレがない。
「武装が1つもない? 採掘、採取だけの機体なのかしら」
「そんな馬鹿な、とは言えませんね。資源採取だけが目的のグループでしょうか?」
カタリナの推測には、頷きにくい。
なぜなら、無人機が守っているのが船らしきもの、つまりは宇宙からの物ではなさそうだからだ。
少なくとも、この星で作られたものだと思う。
とても宇宙を飛ぶような姿には見えないからね。
空を飛ぶのか、水上船なのかはわからないけど、それなりの大きさ。
「どうでしょうね。うーん、いつでも撃てる状態は保って。試してみるわ」
言うが早いか、私はブリリヤントハートをそのまま前に進めた。
焦る声を聞きながら、さらに前に。
当然、無人機からもこちらがわかるはずだ。
そして、攻撃行動は受けずに目の前にたどり着いた。
「嘘でしょ。レーテ、目の前の機体から通信のようなものが」
「ええ? 中身は……わかる?」
「少し待ってください。ええっと、全部は解読できませんが、隕石の中身で見つけた言語と同じです」
モニターに表示される文字列は、所々読めない。
でも、読めた範囲ではこうだ。
作業環境、指揮者に異常あり、情報を求む……だ。
「なるほどね……でもこの状況であの集落の人は襲われたということは……」
ふと、無人機と船らしきものの周囲をよく見てみると……。
明らかに、奪い去られた跡がある。
でも、あの人たちがやったことじゃない。
(ということは、だ。無人機が抵抗できない誰かが……!)
そこまで考えたところで、警報じみた音。
カタリナが何かを探知したのだ。
「北方より反応! 何度も出会ってる無人機と同一です」
「ははーん……そういうこと」
おそらく、武装するタイプの無人機は、採取・採掘を行う無人機より上位存在なのだ。
正確には、宇宙に打ち出された際、後発として武装する方がとかそういう感じ。
だから、目の前の無人機が逆らえないのではないだろうか。
「迎撃準備、見つけ次第、撃破」
「了解!」
そしてすぐに見つかる武装した無人機。
森林を進みやすいようにと多脚式だが、それ以外はなじみある相手。
すぐに攻撃を打ち込み、破壊する。
「残骸は回収するのね……再利用かしら」
「それはそれ、これはこれってやつですかね」
武装していない無人機たちが、撃破された無人機を回収に向かう姿は少しシュールだ。
それよりも、船らしきものや、武装していない無人機を確かめるより先にすることができた。
「北方の無人機設備を探査、破壊に行きましょ。そのあとにゆっくりと、ね」
「そうですね。そうしましょう。そう遠くないとは思うんですよね」
私も同意である。
なぜかこちらを見送るような姿の、無事な無人機たち。
その姿を見て、気が付く。
「そっか。こっちを味方だと誤認してるんだわ」
「ブリリヤントハートと近い存在なんでしょうか……」
「それも後で考えましょ」
後ろ髪をひかれつつ、ひとまず北上し、探索に向かう。




