表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/278

JAD-204「始まりの歌」


「わかってたけど、しつこいっ!」


「まだまだこっちに来てますっ!」


 無人機同士の争いへと突撃。

 宇宙へと資源を射出しようとしていた側を主に攻撃だ。


 拮抗していたところに、私たちが突っ込めばバランスは変化する。

 そう思っていたのだけど、不思議なことにこちらにどこからか無人機たちが出てきた。


 結果、外の争いは拮抗したままとなっているようだった。


「指揮官機の判断かしら?」


「恐らく。左前方、追加!」


 建物らしき場所の正面は、無人機同士の争いが一番激しい。

 その裏から突っ込んだのだが、結果は見ての通りだ。


 どこからか機械アリのお株を奪うかのように、無人機が湧き出てくる。

 周囲の建物か倉庫のような場所に、待機状態で詰まっていたに違いない。


「この距離なら、斬った方が早いわね……」


 無人機たちは誤射を恐れない、そう思っていた。

 けれど、ここの無人機はそうではなかった。

 ブリリヤントハートをつっこませると、射撃量が減るのを感じた。


 無人機たちの背後には、目的地となる大きなテントのような建物。


「あの中につっこみつつ、岩壁でふさぐ!」


「了解! カウントいきます。4……3……2……1!」


 カウントに合わせて、石をメインダイヤのまま、トパーズとペリドットに。

 機体の速度を一気に上げながらまっすぐに。

 そして、その背後に出来る限り分厚い石壁を生み出した。


「つっこ……むっ!」


 正面の壁を、ブレードで砕くように切り裂き、機体を滑り込ませる。


 瞬間、次元収納を起動させたときの感覚が全身を覆う。


「隕石もどきか、類似品の中に入ったっぽいわ!」


「スキャン開始してます。今のところ、可能性は高いです」


 中は、とても明るかった。

 天井の見えない不思議な空間。

 色んなものが、雑多に散らばった倉庫のような光景。


 でもどこか、どこかで見覚えがある。

 私は、ここと同じようなものを……知っている?


「……テ、レーテッ!」


「はっ!? 状況!」


「突入後、レーテが硬直。呼びかけに応答なし。幸い、敵対者なし、です」


 頷き、操縦桿を握りなおす。

 何かの精神攻撃? ううん、そうではないと思う。


 信じられないけど……はっきりと、思い出した。


「ここ、私が記憶してるゲームの設定、その中にあった倉庫兼工房と同じだわ」


「どういうことです? 見た限りだと、無人機はうろついていますが」


 そう、こちらに攻撃してこない無人機がたくさん、動いている。

 まるで、この中にいるのはみんな同じだといわんばかり。


 後ろを振り返れば、壁に穴は開いているが、それだけだ。

 外は見えず、私たちがそういうところを超えてきたのだとわかる。


「外から破ったのに、中は影響を受けてない……相当な空間ね」


「レーテ……ここ、隕石の中ですよね?」


「たぶんね」


 よく見ると、壁には無数の模様。

 よくわからないが、回路の類だ。

 テントのように見えていたのは、ここを隠すためだろう。


 機体をゆっくり進めると、見えてくるものも変わる。

 コンテナのようなもの、カプセルのようなもの。

 雑多な資材、そして残骸状態のあれこれ。


 そして、無人機を生み出すだろう機材。

 そんな機材の横に、人間が使うとしか思えない作業場所があった。


「このサイズ……どう見ても人間用だわ。無人機が使うものじゃない」


「でも、人が関与してるんですか?」


 詳細はわからない。

 どこかの星にたどり着くまで、できるだけ生き延びて何かしていた……のかもしれない。


 あるいは、後から来る同胞が操作できるように?


「っ! レーテ、正面の機材から……通信です」


「……いいわ。つないで」


 何が出るか、不安が募る。

 けれど、まずは動いてから、そう感じた。


 どきどきしながら、通信の結果を待つ。

 幸いにも、ドアップで変な怪物がということもなく、音が流れ始めた。


「……音楽?」


 それは、音楽だった。

 この星では聞くことはできないだろう、独特の音。

 楽器だろう音が重なり、確かに音楽となってコックピットに響いた。


 そして私の心の中は、懐かしさと、恐怖でごちゃまぜだった。


(間違いない、間違いないわ……これは、この音楽は……!)


「荒廃した世界で、生まれ落ちた私が拠点に戻るたびに聞いていた……」


 ということは、私を遥か東方で作り出したのは、ここの関係者?

 ただの記憶ではなく、ゲームという形で効率よく刻み込んだ……そういうことだろうか?


「開拓の始まり、あるいは今日も生き残ったことを感じていた……始まりの……歌」


 無言のコックピットに、音楽は響き続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ