JAD-204「始まりの歌」
「わかってたけど、しつこいっ!」
「まだまだこっちに来てますっ!」
無人機同士の争いへと突撃。
宇宙へと資源を射出しようとしていた側を主に攻撃だ。
拮抗していたところに、私たちが突っ込めばバランスは変化する。
そう思っていたのだけど、不思議なことにこちらにどこからか無人機たちが出てきた。
結果、外の争いは拮抗したままとなっているようだった。
「指揮官機の判断かしら?」
「恐らく。左前方、追加!」
建物らしき場所の正面は、無人機同士の争いが一番激しい。
その裏から突っ込んだのだが、結果は見ての通りだ。
どこからか機械アリのお株を奪うかのように、無人機が湧き出てくる。
周囲の建物か倉庫のような場所に、待機状態で詰まっていたに違いない。
「この距離なら、斬った方が早いわね……」
無人機たちは誤射を恐れない、そう思っていた。
けれど、ここの無人機はそうではなかった。
ブリリヤントハートをつっこませると、射撃量が減るのを感じた。
無人機たちの背後には、目的地となる大きなテントのような建物。
「あの中につっこみつつ、岩壁でふさぐ!」
「了解! カウントいきます。4……3……2……1!」
カウントに合わせて、石をメインダイヤのまま、トパーズとペリドットに。
機体の速度を一気に上げながらまっすぐに。
そして、その背後に出来る限り分厚い石壁を生み出した。
「つっこ……むっ!」
正面の壁を、ブレードで砕くように切り裂き、機体を滑り込ませる。
瞬間、次元収納を起動させたときの感覚が全身を覆う。
「隕石もどきか、類似品の中に入ったっぽいわ!」
「スキャン開始してます。今のところ、可能性は高いです」
中は、とても明るかった。
天井の見えない不思議な空間。
色んなものが、雑多に散らばった倉庫のような光景。
でもどこか、どこかで見覚えがある。
私は、ここと同じようなものを……知っている?
「……テ、レーテッ!」
「はっ!? 状況!」
「突入後、レーテが硬直。呼びかけに応答なし。幸い、敵対者なし、です」
頷き、操縦桿を握りなおす。
何かの精神攻撃? ううん、そうではないと思う。
信じられないけど……はっきりと、思い出した。
「ここ、私が記憶してるゲームの設定、その中にあった倉庫兼工房と同じだわ」
「どういうことです? 見た限りだと、無人機はうろついていますが」
そう、こちらに攻撃してこない無人機がたくさん、動いている。
まるで、この中にいるのはみんな同じだといわんばかり。
後ろを振り返れば、壁に穴は開いているが、それだけだ。
外は見えず、私たちがそういうところを超えてきたのだとわかる。
「外から破ったのに、中は影響を受けてない……相当な空間ね」
「レーテ……ここ、隕石の中ですよね?」
「たぶんね」
よく見ると、壁には無数の模様。
よくわからないが、回路の類だ。
テントのように見えていたのは、ここを隠すためだろう。
機体をゆっくり進めると、見えてくるものも変わる。
コンテナのようなもの、カプセルのようなもの。
雑多な資材、そして残骸状態のあれこれ。
そして、無人機を生み出すだろう機材。
そんな機材の横に、人間が使うとしか思えない作業場所があった。
「このサイズ……どう見ても人間用だわ。無人機が使うものじゃない」
「でも、人が関与してるんですか?」
詳細はわからない。
どこかの星にたどり着くまで、できるだけ生き延びて何かしていた……のかもしれない。
あるいは、後から来る同胞が操作できるように?
「っ! レーテ、正面の機材から……通信です」
「……いいわ。つないで」
何が出るか、不安が募る。
けれど、まずは動いてから、そう感じた。
どきどきしながら、通信の結果を待つ。
幸いにも、ドアップで変な怪物がということもなく、音が流れ始めた。
「……音楽?」
それは、音楽だった。
この星では聞くことはできないだろう、独特の音。
楽器だろう音が重なり、確かに音楽となってコックピットに響いた。
そして私の心の中は、懐かしさと、恐怖でごちゃまぜだった。
(間違いない、間違いないわ……これは、この音楽は……!)
「荒廃した世界で、生まれ落ちた私が拠点に戻るたびに聞いていた……」
ということは、私を遥か東方で作り出したのは、ここの関係者?
ただの記憶ではなく、ゲームという形で効率よく刻み込んだ……そういうことだろうか?
「開拓の始まり、あるいは今日も生き残ったことを感じていた……始まりの……歌」
無言のコックピットに、音楽は響き続けた。




