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JAD-201「人類のいない地で」



「いつか遭遇するかなとは思っていたけれど、案外すぐだったわね」


「この距離ですから詳細は不明ですが、明らかに同系統ですね」


 木々のまばらな山脈。

 遠くからでもさみしいそんな場所へと向かっていた私たち。

 この星に初期に隕石が落ちた場所、そこへ向かうための近道だったのだ。


 途中まではトラックで進んでいたが、さすがに傾斜が急で機体に乗り換えた。

 そうして時折見かけるヤギのような動物を見送りつつ、進むことしばらく。


 中腹ほどにたどり着いたところで、山から離れた場所に戦闘の光を見つけたのだ。

 とっさに隠れ、ズームした映像は……この星の人類が関わっていない戦いだった。


「無人機対無人機、そこに機械アリ……まとめて出てきすぎでしょう」


「それは同感ですけど、どうします?」


 どうするも何も……どうしましょうね?

 見える範囲では、戦況は膠着している。


「どれにも味方したくはないけど……資源を宇宙に打ち出すタイプとは仲良くできないわね。その点じゃ、機械アリも同順位。敢えて順位をつけるなら、この星で自分たちの環境を整えようとするタイプのほうがマシかしらね」


「選びたくない選択肢ですね、ほんと」


 脳裏に浮かぶのは、長期間の命令待ちにより、暴走した結果になったAI。

 あれも、誰が悪いというわけではない事件だった。


 いつか来るかもしれない後続の人類。

 そのために環境を整えようとする無人機のほうが、まだ資源を再利用できそうである。


 もちろん、積極的に人類や獣、ミュータントすら相手にしてくる部分は受け入れられないが。


「それはともかく、アレが気になるのよ」


「確かに、ここからでも力が見えるようです」


 争いの源、それらしい建物が見える。

 姿は、以前見かけた宇宙への射出装置にも見えるけど、規模が違う。


 こっちは、船やそのぐらいの大きさの物を打ち上げできそうだ。

 無秩序にも見える集落っぽい場所の周囲には、自然もあるあたりややこしい。

 おそらく、石の力は十分発揮できるだろう。


「一体何を打ち上げようと……ふむ」


 無人機たちがどうやって見つけているかには興味があるけど、それは横に置いておく。

 これだけの争いだ。相応の何かなのだろう。

 例えばそう、虹色の謎な結晶、とかね。


 それに、さっきから見える戦闘の光が、明らかに石の力なのが気になる。


「長距離射撃用意」


「この距離で、やる気ですか?」


「直撃しなくてもいいわ。邪魔ができれば、それで動きが変わるでしょ」


 無人機たちに指揮官機がいるかどうかは不明だけど、たぶん、いるんじゃないかな。

 どちらにとっても、イレギュラーな争いだと思う。

 ましてや、機械アリまで参戦しているのだ。


 1本は使い捨てる覚悟で、ブリリヤントハートにライフルを構えさせる。

 岩肌に機体を横たえ、負担を減らす。


「動力はダイヤ3つ。チャージしたのを一気にお見舞いするわ」


「了解です。機体固定完了。照準用意」


 モニターも余分な投影はカットされ、正面の映像だけが残る。

 私は操縦桿を握り、意識を集中させる。


 なにせ、トリプルダイヤだ。

 制御をしっかりしないと、機体から光があふれて爆散だってしかねない。

 気のせいか、ブリリヤントハートの核となる動力部も声を上げた気がした。


「全力運転、チャージ開始」


 動力核、クリスタルジェネレータの出力が跳ね上がる。

 同時に、自分の体を石の力が勢いよくめぐるのを感じる。


(燃料代わりの水晶結晶だけじゃない……地面から……遠くからも!)


 視界は普通のまま。

 うっかり石の力も見えるモードだと、目がくらみそうだ。


「レーテっ!」


「ええ、やるわ。打ち砕け……ダイヤの閃光、ジェーマレイ!」


 普段はほとんどないはずの反動。

 それが今回は周囲の岩肌に機体がめり込むほどの物だった。


 とっさにモニターが焼けないように処理をするほどの、光。

 太くまぶしい光が力となって伸びていく。


 おそらく大気で減衰されながらも、それはまっすぐに伸びていく。

 見えてはいないけど、不思議と手ごたえを感じた。


「当たった……と思うわ」


「さすがにまだ観測できないですね。正面は無理です。移動できますか?」


 頷き、機体を立ち上がらせる。

 幸い、移動する分には問題なさそうだ。


 私もそうだけど、ブリリヤントハートも成長している。


 そうして1km近くを移動し、改めて観察開始だ。


「お見事、ですね」


「あらー、運が良かったわね」


 ズームされた先の光景。

 そこに映し出されるのは、先ほどまで高く長く伸びていた建物。

 今は、3分の2ほどの部分で倒れようとしているとこだった。


「接近戦用意。様子を見ながら乱入するわ」


「了解です。大出力はしばらく無理です。注意してくださいよ」


 いくらかの無人機たちがこちらに来るかはわからない。

 待つのもなんなので、直接乱入することにしたのだった。



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