表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/278

JAD-192「奇妙な文化との遭遇」



 初めての、だけど覚えのある敵機との戦いの後。

 町中の無人機を狼たちは噛み砕き、爪で倒していっていた。


 私は、そんな中大きな狼と向き合っていた。

 もちろん機体越しにだ。


「受け取ってくれるといいのだけど……」


「わかりますかね? あ、咥えましたね」


 何かといえば、自爆した戦車もどき……その機体にあった毛皮だ。

 結構な部分が焼け焦げてしまったが、装甲ごと吹き飛んだためか、形が残っていた。

 がれきからそれをたまたま掘り出した時、狼たちのリーダー個体が近づいてきたのだ。


 戦闘中には、口に武器らしきものを咥えていたが、今はない。

 別の個体に預けているのかもしれないし、もしかしたらもしかするかもしれない。


 いずれにせよ、だ。


「それは返すわ。その代わり、私もここを探すけど、良いわよね?」


 伝わるとは思ってないが、ブリリヤントハートの腕を発電施設に向ける。

 しばらくそうしていると、狼たちは別の場所に移動し始める。


 見えなくなるまで、じっと待っている間、手がじっとりとしたのは言うまでもない。

 戦えば負けないだろうけど、戦わないで済むならその方が良い。


「妙に緊張しましたよ」


「まあ、ね。それより、状況はどう?」


「無人機は沈黙、おそらくこの町の中で動いてる無人機はいないかと」


 やはり、これまでの無人機とは少し違い、自立して動いているのが少ないようだ。

 例外はあの戦車もどきであり、普段はあの戦車もどきが指揮を執っていた、となるだろう。


 そうなると、あのJAMが地下で何をしていたのか、なんだけど……。


「戦いのとき、こいつ……妙に光ってなかった?」


「映像確認します……はい、確かに。戦い始めてからかなり光ってますね」


 モニターに映し出されたコックピット内部の映像。

 適当に固定しておいた結晶が、虹色に光を放っている。

 脈打つようなその光は、時折強い光を放ち……んん?


「私が大きく力を使って攻撃した時ね」


「確かに、そのタイミングです」


「何か連動してるのか、ちょっとわからないわね。ひとまず調査を先にしましょう」


 今までと毛色の違う相手との戦い。

 記憶の、ゲームのままの相手という謎の存在。


 その正体を探るべく、施設へと入る。

 が、早々にその足が止まることとなった。


「どうみても不安定よね。消えたり見えたりしてる……」


「そりゃあ、相手ごと空間の天井を破りましたからね。まだ維持できてるのがすごいですよ」


 そう言われると、何も言えない。

 勢いでやったこととはいえ、さすがにまずかっただろうか?


 地下に向かうスロープが、途中でおかしいことになっていた。

 地下空間が見えていた場所が、自動ドアが開閉するように不安定な動きを示している。


 下手に入れば、閉じ込められたりする可能性がある。

 それだけならまだしも、次元の彼方に飛ばされてはかなわない。


「入り口近くに見えるコンテナだけでもつかめないかしら?」


「だったら、石の力を弱く伸ばした刃にしてひっかけた方が早くないですか?」


「そうね、そうしましょう」


 石の力は、強い力だ。

 けれど、普段の生活にも使える万能めいた力である。

 何より、その形は自由。


 ブレードの先に光を伸ばし、フック状の先端を作る。

 戦いならば、これで相手の機体をひっかけてなんてやれるけど、その前に斬った方が早い。


 今回はその刃を、物が切れない程度の力で伸ばし、空間をまたぐようにして差し込んだ。


「よっと……確保っと。あっ」


「閉じちゃいましたね」


 1個を手元に寄せたところで、地下空間が閉じてしまった。

 最悪の場合、中身が飛び出してきたりするので、警戒し……息を吐く。


 今回は何もなかったと口にしようとし、爆音に驚く。


「状況!」


「はいっ! ええっと、発電施設の裏です!って……これ、飛び出してきた穴の部分ですよ」


「あ、なるほど……閉じた時のエネルギーが、穴から出ちゃったのね……」


 そちらは後で確認するとして、回収できたコンテナの確認だ。

 毒となる成分が混じっているかもしれないので、JAMによる開封とする。


 慎重にコンテナを開封し、ライトで照らし……。


「何よ、これ……嗜好品?」


「中身は空っぽいですよ。パッケージだけです」


 コンテナに詰まっていたのは、さまざまな商品らしきもののパッケージ。

 ただし、スキャンした限りでは、空。


 ほとんどが、未開封だとわかるというのに、だ。


「まるで、手にできるカタログね。待って……これ、読めないわ」


 近くに転がったパッケージの1つを拡大。

 そこに描かれていたのは、この星では使っていない文字だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ