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JAD-018「似て非なる物」


 頭に染み入る電子音。

 どことなく、地球での記憶に近い音なのは、未練…だろうか?


「おはよう、カタリナ」


「ええ、朝食を貰ってきましたよ」


 タンセに戻ってきた私たちは、まずは宿で休むことにした。

 カインの店にあるガレージ内で留守番していた義体側のカタリナとも合流。

 まさに、魂が入るといった感じで様子を一変させる姿はいつ見ても感動する。


「あら、ちょっと豪勢ね。買い付けがうまく行ったお祝いかしらね」


「恐らくは。たぶん、1つはあのサファイアを買い付けてるみたいですよ」


 名前の知らないお茶をすすりながら、眉をあげる。

 私が手ごろな大きさにカットした、JAMへの適性も十分にあるサファイア。

 それを彼が買い付けたのだという。


(伝手は、街への警告、そのほかを一番早くやったから、でしょうけど……)


 カインたちの中でJAM操者、ジュエリストを増やすのか、他に売るのか。

 町長の様子だと、あまり拡散するのは望まないだろうから、自分達で使うためかな。

 それこそ、買い付けにくる頻度があげられれば、互いにいいだろうという形で。


「もしかして、氷や水のために使うのかもね」


「あり得ますね。サファイアあたりの氷や水は、空気中の水分を利用してますから消えないですし」


 あまり大規模かつ大人数でやると、周辺の乾燥がひどいことになるのが問題と言えば問題。

 JAM1機程度の出力なら、そう大した問題はない……と思う。


「ま、何かあるなら……馴染みになったことだし、手ぐらいは出しましょうかね」


「知ってますよ。そういって深みにズブズブって」


 やーめーてーよーと嘆きつつ、食事を終える。

 そうして久しぶりに、ブリリヤントハートをトラックの荷台に収め、トラックの整備を始める。

 と言っても、修理という訳じゃあない。


 向かう先は、タンセでも名が売れてる整備工場。

 JAMから家電までなんでもってやつ。


「おはようございまーす」


「でけえのが乗り付けたと思ったら……お嬢ちゃん、ジュエリストだな」


 目を守るための専用グラス、そしてくたびれたつなぎ。

 整備っていったらこうじゃないと!と心から思う。

 自然と、笑みも演技以上の物になっている自覚があった。


「ですです。一応、ラストピースなんて呼ばれてます。レーテと言います」


「嬢ちゃんが? いや、失礼。で、機体の改造か?」


 首を振り、指さすのはトラックの運転席。

 ピッカピカとは言わないが、使うには問題ない状態のはずである。


「足の方をさ、もうちょっと遠出に適した感じにしたいなって。後、荒れ地でもいいように」


「発掘探検でもするのか? まあいい。プランを立てよう。おい、洗浄とチェック回せえ!」


 工場長か、店長か、どちらにせよベテランだろう声に、他の人たちも動き出した。

 見守る間に、てきぱきとドッグに収まるかのように運び込まれた。


「トラックで戦闘行動……行けますか」


「度合いによらあ。獣ぐらいなら、機銃の2つでもつけりゃ、行けるだろ。もっと言えば、やりすぎれば拠点としてのトラックが弱くなる。危険物抱え込むのは、疲れるぜ」


 ごもっともな話だった。トラックで使える武装となれば、基本的には実体弾。

 要は、火薬を使った物か、レールガン的な物になる。

 どちらも、被弾時に炎上の可能性が高くなる。


「まあ、そうですよね。じゃあ機銃2門は確定で」


「あいよ。弾はある程度サービスしとくぜ」


 どんどんと、トラックの現状データが2人の間にあるタブレットに送信されてくる。

 私が感じられなかった損傷も、見つけてくれたようだ。

 見積もりを進めていく中、突然の嫌な音。


「どうしたあ!」


「親方! 電源が機嫌悪いですわ!」


 焦げ臭いなんてことはないけど、慌てた従業員の声。

 カタリナ曰く、もう治らない癖と言われたけど、私も親方について行って覗き込むのだった。


 そこにあったのは、工場で使ってるだろうメイン電源。

 なんと、通常のソーラーや水素電源に加え、備え付けの宝石を使う電源だ。


(そういえば、この動力源だけ名前が無いわね。ゲーム的には、いくらでもありそうなものなのに)


 そんなことを考えつつ、状態を確認する。

 ちなみに、カタリナはトラックの作業を手伝っている。


「ちょっと、違うのが混じってるわよ」


「ん、どういうことだ」


 疑問の声に、まず電源を一度落とすわよと告げ、安全のために電源をオフ。

 音が収まったその中から、2つの宝石を取り出した。

 1つは、ペリドット。いつだったかの兵器、ラストエイトの電源になっていた種類。


 そしてもう1つが、色付き水晶だった。


「ほら、よく見ると違うでしょ。引き出す力が違うから、安定してないのよ」


「くそっ、お買い得だと騙された!」


 まあ、そういうことらしい。

 市場の露店で、つい先日買ったそうだ。

 ここで私の悪い癖が出る。


「これ、ちょうだい? 私が見つけられたら、ちょっと蹴っ飛ばしておくから」


「ああ、いいぜ。どうせ水晶じゃここには使えねえ」


 親方からの許可も貰い、色付きの水晶を受け取る。

 昔の記憶風に言うと……そうね。

 1粒いくらのお高いチョコだと思ったら、どこでも買える安物だった、ぐらいかしらね。


 トラックの改良プランを決め、前金を払ったことで作業が本格的に始まる。

 全体の整備と、追加装備の装着ってところ。

 その間、私は1人でタンセをうろつく予定だった。


 ……のだけど。


「久しぶり、お姉さん!」


 一応、情報を探りにきたカインの店で、目利きの少年と再会、そのまま一緒に町をうろつくことになったのだった。



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