JAD-188「奇妙な共闘」
『あと1時間ぐらいで、衛星画像からするとかなりの大きさらしい街があるはず、です』
「あるといいわねえ……」
ミニドラゴンの集団と遭遇してからしばらく。
まっすぐではなく、ジグザグに動きながら北上していた。
探索の意味もあるし、トラックが通れそうな道が限られているからというのもある。
無駄になりそうな時間だったけど、色々わかったこともある。
無人機たちは、資源を探す力はあるけど、占領からの運営みたいなことは命令を受けていない、と。
何度か、無人機たちがいる場所を見つけたけど、決まったことしかしていない。
すなわち、電源設備の流用と、資源採掘・回収、それだけだ。
十分……かな? まあいいか。
『無人機の生産設備は、ありませんでしたね?』
「そうね、なんでかしら? あってもおかしくないはずなのに……何か資源や施設で重要なものがあるかどうか?」
ここ最近出会った無人機は、倒したらそれまでだった。
増援を警戒し立ち回った割には、そのまま打ち止め。
油断させておいて、なんてしてこないかと無駄に時間を過ごしたぐらいだ。
『目的地の途中、重要な拠点ではないけれど……そう考えると説明はつきますね』
「もしそうなら、無人機の指揮官はゲームでもしてるつもりなのかしら? 制圧しあうゲームではないのよ」
不快感のようなものは、自身がそういうゲームを経験の1つとしてるからだろうか?
記憶にあるゲーム、ビル群を駆け抜けることもできる世界の、次の世界。
荒廃した世界を自由に旅する、いうなれば今と同じ内容。
そこではNPCとして、姿の見えなかった敵対勢力。
でも、それがこの無人機たちを想定した設定だったとしたら?
「考えても、仕方ないか」
『はい、そうです。目の前の相手は、考えただけではいなくなりませんね』
私がそういう答えを望んでいると、わかっているからこそのカタリナの冷たい返事。
うん、浮つきかけた気持ちが戻ってきた。
目的地となる街は、そこそこ大きいはず。
何か見つかるといいのだけど……。
(見えてきた……けど、おかしい。高すぎる)
遠くに見えてきた自然以外のもの。
ここからでもわかる。
明らかに、ビル群があるのだ。
「車両停止、ズームで確認する。もしかしたら、旧文明の街の跡かも」
『了解。停止3……2……1……』
スムーズにトラックが遮蔽物の手前に止まる。
機体をベッドから転げるように荷台から降ろし、そのまま遮蔽物越しに観察。
うん、詳細は不明だけど、明らかに半分ぐらいはかなり古い建物だ。
それでも何かわかるか……と思ったのだけど。
街の外、壊れた外壁付近で戦闘が起きている。
「どう見ても戦闘、ね」
「はい。こちらでも確認しました。あれは獣、いえ、ミュータントでしょうか?」
ただの生き物が、武器を装備している無人機にかなうとは思えない。
もっとも、私の知る限りではとなってしまうけれど。
まだ距離が遠いのではっきりしないが、何者かと何者かがぶつかっている。
光が飛んでるから、片方は石の力を使える存在だ。
「現場に向かうわ」
「救援するとしたら、どちらを?」
「決まってるわ。生きてる方よ!」
コックピットに飛び乗り、トラックを収納。
武装を確認し、飛翔する。
そう、戦うべきは無人機、あるいは機械アリ。
獣やミュータントは、襲ってくるのならであって、根絶やしにする相手ではない。
少なくとも私はそう思っている。
(相手にそれが伝わるかは別だけどね)
「映像確認! 出ます!」
「っと、犬……狼系!?」
街を襲っているのは、四足歩行の獣、犬や狼といったものだった。
なんと、明らかに撃たれても倒れていない。
すぐにその理由はわかる。
体毛が、輝いている。
「レーテ、見てください!」
「何って、嘘でしょう!?」
映像に映し出されたのは、狼たちの背後にいるひときわ大きな個体。
その口には、明らかに人工物がくわえられている。
そして、それが光っているということは、使っているということだ。
「たぶん、かつては人と一緒にいて、人が石の力を使うのを覚えて、それが伝わっている。ミュータントかどうかは別にして、道具を認識してるのよ」
「そんなことがあり得るんですか!?」
カタリナの驚きはもっともだけど、目の前にその証拠が転がっているんじゃあ、どうしようもない。
気分を切り替えて、銃口は無人機へと向ける。
狼たちに当たらないように、と発射。
飛んだままで、狼たちの上空へと移動した。
狙いは、無人機方面へと向けたまま。
狼たち、とくに大きな個体の視線が向くのがわかる。
「私たちは敵じゃないわ。少なくとも今は、ね」
伝わるかといえば伝わらないだろうけど、口に出さずにはいられなかった。
そのまま上空から、無人機へ向けて発砲を続ける。
光の弾丸が、無慈悲に吸い込まれ……今度は増援が来る。
「ここは当たり? 外れ? まあいいわ。アクアマリン切り替え!」
撃破から戦闘不能へ。
戦い方を切り替えていく。
「狼たちが破壊しないなんて気の利いたことはしないでしょうから、ちょっと無理していくわよ」
「無理無茶はいつものことじゃないですか、もうっ」
笑いながら、機体を前に。
片っ端から凍り付かせつつ、狼たちの撃破による増援も同様に。
ざっくり四方は数kmはありそうな壁に囲まれた中を、戦いに飛び回るのだった。




