JAD-187「星の住民」
北上を続けて見つけた集落。
そこには、何者かに襲われた跡がこれでもかと残っていた。
そして、残された動物たちが自由に生きている。
「発電施設は完全に沈黙、と。JAMの動力を流用してるやつね」
「前にもありましたね。あれほどの大きさではないですけれど」
頷きつつ、再稼働が可能かを確認する。
動力部をのぞき込み、がっかりするまではお約束。
建物ごと崩れてたし、仕方ないか。
当然のように、ぽっかりと穴が開いている。
これが発掘品か、生産品かはわからないけれど、どこかに持っていかれたようだ。
ポンプで水をくみ上げるのは、無理。
となると、古いタイプの井戸があるかどうかだけど……。
「色々探した私の時間を返して欲しいわね?」
「そう言われても……楽でいいじゃないですか」
何かというと、集落の中を見て回ると、泉があったのだ。
ここに出るように調整したのか、もともとそういう土地なのか。
今も、滾々ときれいな水が沸き立っている。
「まあね、愚痴よ愚痴。となるとこの子たち、水は十分だし、餌も何かしら食べてるわよね」
「です……ね」
今も後ろには、飛べない鳥がぞろぞろと。
雑草が目立たないのは、彼らのような存在が食べているからかもしれない。
一応検査をして、水の補給を……んん?
「カタリナ」
「はい? 襲撃ですかっ」
思わず、真剣な顔になっていたんだろう。
銃を構えるカタリナに首を振り、周囲を見渡す。
無人機は残骸がある。
けれど……あってもおかしくないものが、ない。
「ちょっとあれだけど、なんで1人分も骨がないのかしら」
そんなに大人数で暮らしていたわけじゃないとは思う。
けれど、動物たちは放置で、無抵抗に脱出というのはあるのだろうか?
抵抗があったことは、あちこちの戦いの跡が証明している。
予想よりも激しい戦闘跡だが。
「人間は、先にこの場所を脱出していたんじゃないでしょうか」
「どうしてそう思うの?」
カタリナが指さすのは、崩れた建物と無人機の残骸。
そこには……爪痕だ!
「動物はアレに対する囮ってこと?」
「そうかもしれないな、ぐらいですけど」
とたん、集落の外に気配。
覚えがあるような、ないような。
幸いにも、気配はトラックの反対側だ。
「機体まで撤退、戦闘準備」
「了解!」
駆け出し、気配を背中に感じながらたどり着く。
すぐに機体に滑り込み、荷台から立ち上がらせる。
カタリナもコックピットに入ってもらい、トラックは次元収納へ。
そしてそれを待ってくれていたかのように、集落の外にある森が膨らんだ。
「ドラゴン!?」
「にしては小柄です!」
どうしてこんな場所に、とか、あの鳥は食べられなかったのか?とか疑問が浮かぶ。
でも今は、小粒のブレスをとっさに回避することに集中だ。
間合いを取ると、意外にもこちらまでは襲ってこない。
続々と増援が集まり、見える範囲で10頭程度。
「縄張り……?」
「それっぽいですね。いつからかは知りませんけど」
集落のがれきを、まるで自分たちのおもちゃだといわんばかりに踏みつけている。
大きさはトラックの半分ほど。
対人として考えれば十分すぎる大きさ。
しかし、ドラゴンとしては小柄だ。
羽根も小さく、幼体……にしては強そうだ。
親というか、そういうのもどこかにいるかもしれない。
「亜種ということにしておきましょう。ここの無人機は、あいつらに襲撃されたみたいね」
「どうします? ここを解放しますか?」
「しないわ。奪還を頼まれてるわけでもないし、どちらかというとあの子たちもこの星に生きてるんだもの」
なんとなく、親近感のようなものを感じてしまう。
集落の動物が食べられていないところを見るに、食生活は肉食ではないようだ。
あれだけの体をどう賄うのか、非常に気になる、気になるが……。
「私たちが今調べることじゃないか……行きましょ」
「了解です。ゆっくり休めるかと思ったんですけどねえ……」
これ以上刺激しないように気を付けつつ、集落を迂回して北上を続けるのだった。




