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JAD-181「未来を思う」



 町があるはずの場所。

 そこにあったのは、機械アリたちの巣であった。


 どうにか、そこを解放することはできたのだが……じゃあこの後はどうしよう、となる。


「住むわけにはいかないものね、これ」


「一応、鉱山としては有望なんじゃないでしょうか?」


 川のそば、町があった場所は……すり鉢状に採掘され、その深さはかなりの物だ。

 ビルが1つや2つは、縦に入りそうなぐらい。


 例のよくわからない結晶以外にも、採掘できる資源は結構あると思う。

 問題は色々あるので、実行できるかは別かな?


 少し離れた場所に積みあがった土や岩たちで埋めなおした方が良いのかしら?

 それはそれで無意味というか、手間というか……有効利用したほうがいいのは間違いない。


「どうやって掘って、運び出すか。あと、排水の問題があるわね。横穴と違って、これじゃ全部下に貯まるわ」


「ああ、そういうことだ。協力……というか、肝心なところをほとんど任せてしまったな」


 ブリリヤントハートを降り、穴を覗いていた私たち。

 そんな2人の会話に、作戦のリーダー格が話しかけてくる。


 名前も特に聞いていない、これっきりの関係といった具合だ。


「依頼だもの、構わないわ。もらうものはもらっていくわけだしね」


「違いない。それが命を賭ける価値ってやつだ」


 JAMを操る探索者、傭兵。それらはまとめてジュエリストと呼ばれる。

 日常でも、石の力を使う機械を動かすのに、ジュエリストは重要だ。


 人間の中でも、石の力を引き出しやすい人、そうでない人がいる。

 大体の場合、ジュエリストはその力が強いのだ。


 結果、JAMで戦う人間は前線に立つことが多く、その分危険にさらされる。

 逆に言えば、お宝を最初に発見する存在であることも多い。


 倒した敵の素材やらなんやらも、優先権みたいなものがあるわけだ。


「残骸はいらないわ。使うあてもないし」


「ありがたい。依頼金に色をつけるように言っておくよ」


「それはそれとして、これからどうされるんですか?」


 まだまだカタリナは、人間らしさといったものを学んでいる最中。

 だからこそか、私が少し聞きにくかったこともズバリと聞いた。


 私が気にしすぎたかもしれないけどね。


「そうだな。上流か下流、どちらかに村を作るだろうな。そこから拡張をし、農業と鉱山、両立を目指す」


「そう、長くはいられないけど、手伝えることがあれば安く受けるわ」


「ありがたい。もし可能なら、ここに残る面々の護衛、その手伝いを頼んでもいいだろうか?」


 たくましくないと、この土地では生きてはいけない。

 そのことを証明するような、良い笑顔。


「そうね。野営は嫌いじゃないわ、私。食事ぐらいは出るんでしょ?」


「思ったより早く終わったからな。好きなだけふるまおう」


 冗談めいたこちらの言葉に、返ってくるのも余裕のある言葉。

 報酬は物納でいいわ、と答えるぐらいには、悪くない気分だった。


 無人機や機械アリが湧き出てきたり、獣が戻ってくるかもしれない。

 そう考えた警戒網の構築を手伝いつつ、しばらくの野営が決まった。


 周囲の面々が、思い思いにテントを用意する中……私はブリリヤントハートの中にいた。


「トラック、出さないんですか?」


「うーん。なーんか、微妙な感じがして。別に他の人に遠慮してるわけじゃないのよ?」


 トラックを出すとき、一緒にあの謎結晶も出すことになる。

 戦力の減っている現状で、それをやると危険な気がしたのだ。


 今度、遠く離れた場所で出すべきだと感じていた。


「それもそうですね。まだ十分な検査もできていません」


「そういうこと。ま、この中でも寝られないわけじゃないわ」


 旧文明か、それに近い技術レベルで設計、生産されたらしいブリリヤントハート。

 コックピット内部も、そこそこ余裕がある。


 適当に物資を置くようなスペースもあるし、2人して姿勢を崩すぐらいは問題ない。

 とはいえ、ずっと中というのも息が詰まる。


「散歩にでも行きましょうか」


「お付き合いしますよ。もうすぐ日暮れですし」


 ブリリヤントハートを降り、向かうは機械アリの巣、鉱山部分。

 足元に気を付けつつ、鉱山と地平を見る。


「大きいわね……」


「はい。ここまで掘って、あの結晶体はどんな価値なんでしょう」


「さあね……機械アリが宇宙からの来訪者なら、その主は知ってて探させてる……はず」


 わかったことも多いけれど、わからないことも増えてくる。

 何よりも、私自身のことがますますわからなくなってきた。


 私を設計した人物は、どこまで知っていて、何をさせたかったのか。

 教育のためだろうあのゲーム世界は、本当にただのゲームだったのか。

 もしかしたら、あり得たかもしれない未来や……。


「レーテ?」


「ううん、何でもない。風が出てきたわね。戻りましょ」


 30分もいなかっただろうから、散歩になったかは不明。

 それでも、気持ちは切り替わったのを感じたのだった。




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