JAD-179「機械軍団VS一人軍団」
10話分飛ばしていたので、差し替えました。
「好き勝手に飛んでくれちゃって!」
叫びながら、モニターをにらむ。
集中し、力の流れを読むべき意識を切り替えた。
見える範囲には、たくさんの羽根アリ。
そして、見えないところにもきっといる。
「敵機増援多数!」
「わかってるっ! サーチは任せるっ!」
両手にライフルを構え、当たるを幸いに連射。
散弾気味にした光の弾丸は羽根アリたちを穴だらけにしていく……でも足りない!
羽根アリたちは、脅威を排除するための物らしい。
自分たち以外で唯一空にいる相手、こちらを認識しているようだ。
無秩序に飛んでいるように見える相手を、笑っちゃうぐらいにどんどん叩き落とす。
「狙う方が大変ねっと!」
殺気なんてないはずなのに、何かが突き刺さってくるような感覚があった。
相手の動きが変わり、多少正面が落とされてもいいようにか厚みを帯びた陣形に。
(戦いの途中で切り替え!? どこかに指揮官機がいる!)
「出力低め、薙ぎ払うっ」
「了解っ!」
散弾モードから、通常の照射モードへ。
空に光の帯が伸び、そのまま機体を回転。
水の出るホースをそのままに回転するかのように、光が円を描く。
見える範囲の羽根アリを薙ぎ払った手ごたえ。
それでもまだ、増援は尽きない。
「地上は混戦です。幸い、無人機とこちらは反対側なせいもあって、ぶつかってないようです」
「それは朗報ねっっと」
私が飛んでいるのは、どちらかというと無人機側の空だ。
当然、戦えなくなった羽根アリが落ちていく先は、兵士アリか無人機たち。
少なくない被害が出ているのに、どちらも上を気にした様子はない。
(やっぱり、生き物ではないのね……)
「こいつら、石の力を感じてるのかしら?」
「かもしれません。最低でも、指揮官機はそれを可能としていると思いますよ」
同意の声に頷く。
そうでなければ、こうも私たちに集中してこないだろう。
地上でも、多くの戦いが続いているのだから。
まるで誘蛾灯に群がる虫のように、私たち、ブリリヤントハートへの攻撃は止まない。
ありがたくもあり、その裏にある何かが怖くもある。
少し高度を上げただけで、羽根アリは動きを変えてきた。
「横がだめなら真下って? 甘いっ! ブレード!」
この羽根アリ相手なら、ASブレードでなくても十分。
予備のブレードも構えつつ、両手の刃を急降下しながら振るう。
紙を切り裂くように羽根アリを両断し続け、息を吐く。
戦いに、興奮しているのがわかってしまう。
「バラバラじゃなく、何か連携めいた動き……謎が残ります」
「逆に、この方がありがたいんだけどね、ほんっと」
実際問題、これだけの相手が全部バラバラに突撃、あるいは四方に飛んで行ってた方が厄介だ。
まとまってこっちに来てくれるからこそ、戦いやすい。
小さくても車ほどはある相手が、100や200と突撃してくる。
その光景自体は、うっかりが怖いけどねっ!
しばらく、まだ空を舞うことになりそうだ。
続く戦いは、長いような、短いような。
「こっちの威力はまだ上げられるのよっ」
まるで生きた槍のように、集団で突撃してくる羽根アリ。
多少先頭がやられようと、食いつこうという狙いか。
「グリーンダイヤ! 開け、光の口! ジェーマ・レイ!」
再び周囲を薙ぎ払った後、一度上昇して距離を取る。
「そういうこと……ははっ、私たちはまだまだ強くなれる!」
戦いの最中、機体の変化を明確に感じ取る。
動力炉となるクリスタルジェネレータに、宝石を入れて力を引き出すのがJAM。
いつも必要に応じて入れ替えていたけれど、そこに変化があった。
無数のポケットのようなものができ、そこに石が入るようだ。
迷わず、ほとんどの石を放り込んだ。
「カタリナ、貴石変換準備!」
「わかりました! これは、内部で切り替えが!?」
「そういうことみたいね!」
どうしても、これまでは石の交換に時間が少しかかった。
通常なら気にもならないけど、戦闘中だと隙になる物。
それが、ほぼなくなったといっていい。
「敵機、増援! まとめてきましたよ!」
「だったらこっちも……アパタイト!」
ネオンブルーの輝きで、すぐにコックピットが満たされる。
放たれるのは同じくネオンブルーの幻想的な色の弾丸。
ただし、実体もある。
眼下に、無数の花火が出現するのを見ながら、地上を観察する。
どうにかこうにか、戦いは有利に進んでいるようだ。
機械アリは、あまり多方面での戦いに向いていないのかもしれない。
「仮称将軍アリが減っています。どうします」
「どうするもなにも、女王個体がいると話が早いんだけど……あっ」
唯一、戦いがない方向である川のほう。
そちらに、動く影を見た。
「逃げて、再起を図ろうって? 今回は、それはできないわっ!」
ひときわ大きく、お腹になる部分を兵士アリに抱えられながらの機械アリ。
詳しくはわからないけど、動ける生産設備、自立した工場ということか。
この距離でも女王個体とわかるそれを逃がすわけにはいかない。
羽根アリを引き連れたまま、急降下。
それに気が付いたのか、羽根アリも無数に後ろについてくる。
しかし、こちらのほうが圧倒的に早い。
羽根アリを置き去りに、地上へと迫る。
推定女王個体も慌てた様子だ。
「遅い」
地面に勢いよく着地しながら、ASブレードの刃を長くし、両断。
振り返りつつ、空から迫る羽根アリに向けて、もう片方の腕でライフルを構えた。
同時に、ボックスから予備のライフルたちを出現、機体にくっつける。
そう、JAMに明確な設計図等いらない。
どんな形でもいいということは、どんな武装の仕方でもいいということだ。
ブレードもライフルも、あくまで石の力を形にするための道具でしかない。
フィルター、変換機、増幅器……そのどれでもある、という感じ。
逆に言えば、何か回路でくっついてなくたって、力は注げるのだ。
「ファランクスショット! なんてね」
空に、無数の光の帯が放たれる。
連射された光の弾丸が、羽根アリたちをまとめて撃ち貫いた。




