表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/278

JAD-178「乱戦の始まり」


 戦いの始まりは、人間からだった。

 最低限の戦力を残し、集まった戦力で一気に移動。

 どうせいつか見つかる、ならば……というわけだ。


 そうして、たまたま巣穴から出てきていた兵士アリは即座に仕留める。

 無言で、大地に沈む兵士アリが仲間を呼んだ様子はない。


「ほかの詳細な地図はともかく、この辺りだけでも提供した甲斐はあったわね」


「予想より、奥の方で遭遇できましたね」


 まだまだ兵士アリは少ないようで、攻撃は散発的だ。

 それでも、明確に敵が出てきたことでこちら側の士気は上がっていく。


 殺意、とも言い換えることはできるんじゃないだろうか?

 戦争、争いが悲惨なのは変わらない。

 けど、感情の無い相手との戦いはより悲惨に思える。


「もしかしたら、向こうも何かを感じ取ってるのかもね」


「まさか、振動センサーでもあると?」


 答えず、口だけはゆがませる。

 正直、わからないというのが正しい。


 何があってもおかしくない、そう思っておいた方が良いように思うのだ。

 似通ってる部分はあるとはいえ、相手は宇宙からの来訪者、別の文明なのだから。


『警戒しつつ、進もう。弾はちゃんとこめておけよ』


「緊張してる感じね……無理もないか」


 無線で聞こえるこちら側の部隊長の声は、雑音交じりでもわかる緊張具合。

 倒せているとはいえ、生き物のような相手が大きく、そして数も多いとわかっているからだ。


 一体どれだけの数を倒すことになるのか……。


「もうすぐ、視界が開けますよ」


「そうね。私たちも準備を……何?……ざわめき? 飛ぶわ!」


 私以外も、もしかしたら感じたかもしれない。

 急に、何か気配というか空気が変わったのだ。


 断りを入れつつ、飛翔。

 といっても、木々よりは上という低空だけど……っ!


「なんてこと……!」


「別方向で戦闘が? え、これは!」


 データを確認したカタリナが戸惑うのも無理はない。

 なんと、機械アリの巣穴がすでに戦場になっていた。

 そして、その相手は……この前まで相手していたタイプの無人機だ。


 仲間割れ? いや、それにしては……。


『どうした? 何が起きている?』


「見たままを言うわ。機械アリが、無人機と喧嘩してる」


『……なんだと?』


 道理で、こちら側には全然機械アリが来ないはずだ。

 散発的過ぎるのが怖いぐらいだった。


 無人機たちが来たのは、川の上流側、つまりはまだ人類が取り返していない領域だ。

 そこはわかる、わかるのだが……。


「様子を見ながら、機械アリの殲滅を優先、でどうかしら?」


『ひとまずその方向で行こう。無人機は相手の仕方がわかるが、機械アリはな……厄介すぎる』


 まだ戸惑いが残っているが、話はまとまったようだ。

 ゆっくりと、人間側は移動していく。

 無人機たちとは反対側にという位置関係へ。


「一体どういうことなんでしょうね。派閥、でしょうか」


「そういう感じかしらね? ほら、企業でもみんな同じことをするわけじゃないし……」


 言っていて自分でも苦しいが、そうとしか考えられない。

 さすがに、侵略者Aと侵略者Bがいるというのを考えるのは、大変すぎる。


 そんなことを考えつつ、警戒はしながらも様子見。

 無人機と機械アリの戦いは、激しさを増している。


「機械アリの数、予想以上ね」


『まったくだ。射撃で応対する無人機に、数で押し寄せる機械アリ。とんでもないな』


 理想はこのまま痛み分け。

 両方が消耗したところで、機械アリ側を先に……でもそううまくいくだろうか?


 幸いにも、さっそくお互いに戦力が一時的に減ったようだけど、さて?


「突入準備、しますか?」


「うーん……まだ奥に大量にいそうなのよね。それに……」


 言葉の途中で、巣穴の底からやはりというべき機械アリの増援。

 また戦いが激しくなるかと思ったが、視界に飛び込んできたのはとんでもない物だった。


「一気に上昇! ライフルは高出力から、散弾をイメージ!」


「りょ、了解!」


 周囲に砂塵が舞うのもお構いなしに、飛び上がる。

 と同時に、穴の底にいた機械アリが……飛んだ。


 ジャンプではなく、フライ、だ。


「羽アリっ! 落として見せる!」


「ロック補助は任せてください!」


 まずは十数体。

 重なるロック音を聞きながら、トリガー。

 まばゆい光が細い弾丸となって飛んでいく。


 幸いにも、羽根アリの強度は低いのか、あっさりと迎撃。


「よし、落とせる」


「レーテ! まだ来ます!」


「そんなもの……よね! 上空より地上部隊へ。上はやる。支援と地上侵攻をよろしく!」


『了解した。飛びあがる前にできるだけ倒して見せるさ』


 頼もしい声を聞きながら、空に上がってくる羽根アリをにらむ。

 羽根アリたちは、攻撃のあれこれを設定されているらしい。

 集団が、脅威としてこちらを認識したのか迫ってくる。


「ちょうどいいわ。やれるもんならやってみなさい!」


 気合を入れるべく叫び、手に力を籠める。

 久しぶりの空中戦が、始まる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ