JAD-173「カウンターミッション」
「テストケース18項目目、ルビーから火を出せるか。どうぞ」
「テスト開始……これも出るわね」
謎の装飾品、つなぐ鍵と情報の残っていた腕輪を付けた翌日。
感じる予感のままに、町の外にJAMのテストと称して出てきていた。
目的は、私自身の変化内容の確認。
私は、石の力を生身でも扱えるようになっていた。
(もっとも、疲労も激しいのだけど)
今も、指先に火をともす程度のことをしただけで、少し息が上がってくる。
とても、戦闘行動やそれにふさわしい力は振るえないだろう。
「ま、半分は慣れでしょう。それに、本質は別にあるわ」
「JAMの操縦、その誤差ですね」
頷き、立たせたままの愛機であるブリリヤントハートを見上げる。
移植した両足、そして片腕はもう色も同じものに塗装しなおしている。
不思議と、最初からこうだったのではないかというぐらいになじんでいる。
ありえないほどの偶然で、ちょうどいい部品取りができた?
あるいは、JAMというものがもともと、そういう設計思想だったからなのかもしれない。
「できれば色々試したいところよね。少し、遠出でもしようかしら」
「そうですねえ……しばらくは防衛戦力の復活が必要でしょうし……」
今のところ、この地域の戦況は拮抗、あるいは人類側に傾いているように感じる。
しかし、それも不安定な物だと思う。
結局、大元やまだ見ぬ場所の状況はまだ不明なままなのだから。
(もし、予想通りなら……あれがうじゃうじゃいる……?)
想像するのは、人類の町に鎮座する巨大無人機たち。
いつか来る主人を待ち続けるのか、また宇宙へと旅立つのか、それはわからないけども。
「周囲の探索……偵察、そのぐらいかしらね」
当たり障りのないものだと、こうなるだろうか。
そうと決まれば話は早い。
ブリリヤントハートに乗り込み、町へと戻る。
もう結構知り合いが増えてきた中、責任者が在中している建物へ。
「あ、姐さん!」
「ライアンじゃない。何、今日はここで手伝ってるのね」
出会った時より、ずいぶんと元気そうなライアン。
なんだかんだ、実戦についてきたのもあってか、大人びた気もする。
「そうなんすよ。町は取り返しましたけど、途中の土地はまだ不明なんで。今、ルートを確かめるスケジュールを組んでるんすよ」
「そう……私も一枚かませてもらっていいかしら?」
都合がいいことこの上ない話だ。
依頼料なんて出せないというライアンに、補給ぐらいでいいと告げ、話に加わる。
(なるほど、前に線でわかるとか言ってたわね)
無人機たちは、妙にシンプルなラインというか、エリアを動くという。
まるで陣取りゲームのようだと思ったのは、間違いじゃない。
集落、町の無い部分の確認と、どこまで無人機が来ているのかの偵察。
それが主目的だということもわかり、こちらも話がしやすい。
いくつかのルートのうち、一番不安が残るルートに参加することにした。
連絡が取れていないが、無人機の目撃情報もほとんどない町方面へのルートだ。
「ここは川辺なのもあって、畑作が盛んらしいんすよ。うまく無事が確認できるか、解放できれば食糧事情も楽になるはずっす」
「そういうことね、了解。じゃ、行ってくるわ」
もう?なんて言いそうなライアンと、町の代表者たちに手を振り、外に出る。
まだ時間は昼前だ。
暗くならないうちに、ある程度進んでしまおう。
「カタリナ、トラックで移動。機体はうつ伏せで迎撃用の姿勢で」
「わかりました。運転は任せてください」
何度もこなしてきた依頼と同じこと。
警戒はしつつ、緊張しすぎないように。
「反撃作戦、塗り替えしの始まりですかね」
「そうなるわね。順調にいくことを祈りましょう」
荒野へと、トラックを進める。




