JAD-170「タイムカプセル」
どこにでも、変わり者はいる。
目の前の光景に、心の底からそう思った。
「こいつはたまげたね」
「これがあるのを……あいつらは感知していたの?」
一言でいうと、隕石の中身と同じだった。
外からではありえない広さの空間が広がっている。
そして、中には様々な機械群が眠っていた。
「レーテ、左手にマニュアルがあるようです」
「カタリナがわかるってことは、そういうガイドも準備されて……」
ここの準備をしたのが、この星の人間か、それ以外かはわからない。
ただ、カタリナたちを研究、設計した存在とは近いか同じのようだ。
そうでなければ、こんな都合よく彼女が情報を受信しないだろう。
何かのスイッチでないことを祈りつつ、壁に埋め込まれたモニターに触れる。
そういえば、この中の灯りは一体、なんだろうか?
「星外機械群のアーカイブ? 技術研究?」
「見た限り、大きいので10機ぐらいはあるねえ」
空間の広さは、奥行きは100メートルはあろうかというほど。
高さも、JAMが立っていられそうだ。
その証拠に、外で戦った覚えのある無人機が複数、固定されている。
「みんな電源は殺されているみたいですね。それに、自律稼働できないようです」
「そりゃあ、そうじゃなきゃ研究もできないわよね」
もっとも、自分では動けなくても、どこかから感知するだけの何かは残っているようだ。
無人機たちがこの町に来たということは、そういうことだ。
(でも、ここには入ってこられなかった……あの扉があるから?)
おばあちゃんと一緒に、空間を進んでいく。
興味深い物は多いけれど、まずは全体を把握だ。
そうして、一番奥、いくつものコンテナがある場所に、それはあった。
一抱えほどの、球体の模型。
「模型……でも、これは……」
「なんの模型だろうね? 気のせいか、どこかで見たような」
「お二人にはわかるんですか?」
カタリナの不思議そうな声を聞きつつ、おばあちゃんと2人で頷きあう。
そっと手を伸ばし、私の指先がその一部に触れた時、発光しだした。
「っ!? これ、石の……星の力? カタリナ、メテオブレイカーからもらった星の地図とマッチング開始!」
「は、はいっ!……うそ、そんな!? スターストリームと完全に一致します」
「星の力、その地図ってわけかい」
おばあちゃんが、この場所を作ったのは空の裏切り者だといっていた。
カンでしかなかった言葉が、おそらく真実を当てている。
自分の意思で裏切った、ではないのだが。
当然、この星の人間には石の、星の力の全容はわかっていない。
わかるとしたら、石の、星の力のことを知っていた存在だけだ。
そして、この星には無人機たちが、その力を求めてやってきた。
「最初のころ、隕石は……無人機は見つからずに任務を遂行してたんだわ」
「現地調査、どれぐらい有用な場所か……ですね?」
「どれだけ搾り取れそうか、わかった上で動き出そうって腹かい。大したもんだ」
そのために、まずは星の地図が作られた。
無人機たちが落下しようとした場所、あるいは落下したであろう場所は……!
「ほとんどが力の集まる場所に近いですね」
「先に落ちた無人機たちが、誘導したんだわ」
なんという性能、なんという厄介さ。
でも、ここにこの地図と無人機たちのサンプルがあるということは、だ。
「それを、この星の誰かが奪い取ったんだわ。当時の技術者か誰かが」
「外に出てないのは、間に合わなかったか、認められなかったか……両方かねえ」
前文明は、ある時を境に急激に崩壊した。
その時、人類を襲った存在は、どこにいってしまったのか。
ミュータントとして世界中にいる存在も、今は危ないけれど隣人。
とても、世界を制圧してくるほどの規模じゃあ、ない。
(私は、何か思い違いをしていないだろうか?)
じわりと、何かがせりあがってくる。
その違和感の塊とでもいうべきもの。
それは……無人機たちの狙いは、何なのかという根本的なものだ。
「おばあちゃん、どうして人は減ったのかしらね」
「さてね。大方、人同士の争いが一番でかかったんじゃないのかい?」
何でもないようなその一言に、衝撃を受ける。
そうだ、その通りだと。
「人類は、宇宙からの来訪者やミュータントに対して一丸になれたようで……むしろ、分断が進んだ?」
私のつぶやきが、妙に響いた気がした。




