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JAD-016「目がくらむということ」



 闇の中に、街の門が浮かぶ。

 この時代にも残る技術で、夜でもまだ人類は生きていられるのだ。


 眩しいほどの輝きなのは、獣がわずかな隙間から入ってくることがあるから、ということだった。


「なんだか、送り出されるみたいで…嫌よね」


「そうですか?」


 カタリナとなんでもないような雑談を交わしつつ、外へ。

 私以外にも、何人かの人員が同じ仕事を受けているはずだ。

 宿代にもなるか微妙な、低額の仕事なのだけど。


「よっぽど何もないけど、念のためにだからってことですか」


「どこもコストはカットしたいものよ。これが終わったら、トラックを取りに戻らないとね」


 多少問題が出そうでも、次からはトラックごと移動するようにしよう、そう心に決めた。

 戻れる場所があるというのはいいことだけど、気軽に旅に出られないのも、問題だ。


「まずは決まった通りのルートを……あら」


 どうやら、私が考えている以上に連中は我慢できない、あるいは急ぎのようだった。

 チェックしていた人員が担当している側で、明らかに指定ルートを外れた動きが見えた。

 念のためにと、しっかり稼働していたレーダーに、くっきりと。


 どこに隠れていたのか、トラックまで合流して来た。


「仕事を放棄する奴がいたから、注意しにいきますよっと」


「建前って、大事ですよね」


 一部ばかり人間臭くなった気がするカタリナに苦笑しつつ、機体を滑らせるように吹かせる。

 夜の闇に、機体各所のライトと、ブースターの光が目立つはずだ。


 それに対し、事故防止のためのライトすら、つけていない集団。


「そこのトラック込みの集団、止まりなさい。仕事は朝までのはずよ」


 複数の無線チャンネルで呼びかけるも、反応無し。

 元より返事が来るとは思っていない。

 当然、トラックやJAMらしき影も動きを止めず……ちょっと!?


「回避ルーチン起動!」


「撃ってきたあ!? こんな街のそばで!?」


 思わず汚くののしりそうになるけど、それどころじゃない。

 夜の闇の中、目立つだろう私に向けて、何発かの実弾。

 幸い、背後には街がない角度だったので荒野のどこかに消えていった。


「街の方へ警報! それでカインもわかるでしょ!」


 相手がそのつもりなら、こちらも動きを変える必要がある。

 手早く閃光弾を上空へ打ち上げ、周囲を明るく照らすことにした。

 そのまま回避運動を行えば、追加の攻撃が何発も叩き込まれる。


(明らかに遠慮なしね。そこまでして、持ち帰る中身なのかしら)


 強力なJAMは、1機で戦況を変え……れることもある。

 私の知る限りでは、大人の拳ほどのアメジストで、特殊な雷を放つ機体があった。

 実際に電気的に影響を受けると同時に、宝石からの力もしばらく引き出せなくなるらしい。


 このぐらいになれば、どこかの都市や軍が切り札的に入手をとも考えられるけど……。

 だからといって、こんな風に目がくらむだろうか?


「まずはトラックの足を止める!」


 ブリリヤントハートの動力源は、坑道に行った時と同じトパーズ。

 スライム相手には砂のようにしたけど、今度は鋭い、穂先だ。


 相手のJAMがカバーできないように、左右に引っ掻き回してから……ヒット!

 同時に、こちらも被弾のビープ音。


「っとと、ダメージは!」


「肩部装甲に被弾! 影響は軽微です」


 着弾に意識を向けていたら、回避が甘くなっていたようだ。

 揺れる機体に、慌てて状況確認をするも、大丈夫だった。


 と、そこに街の方から複数の照明弾と、増援。

 バイクやトラックなど、街の自警団らしき相手も含まれている。


「推定JAMはこちらで相手をする!」


『了解した。よろしく頼む』


 短いやり取りの後は、一方的だ。

 元々、立ち去るのが目的な側と、阻止する側とでは条件が異なる。

 目的の物が逃げられなくなった時点で、相手は捨てて逃げるぐらいしかないのだ。

 とはいえ、そこで逃がすつもりは、無いのだけどね。


「動きは悪くない。けれど、運がなかったわね」


 言いながら、最後の1機の足を撃つ。

 崩れ落ちるように倒れる機体に近づき、反撃できないように武器を潰した。

 どうやら、戦闘用JAMではなく低適性の宝石でも動く重機ぐらいな機体だったようだ。


 その後、逃げようとしていたトラックのコンテナの鍵をブレードで切る。

 中に見えたのは、何人かの人影と、その奥にある複数の小さなコンテナだった。


「はあい。ルームサービスは必要かしら?」


 出来る限り優しく、スピーカーで声をかけると、ライトに照らされた男たちは笑い始めた。

 助けられたと理解したらしい男たちが、外へと出てくる。

 後は街の人間にお任せでいいだろう。


(ゴタゴタのうちに、中身をもってくような奴もいるんだろうけど、ね)


 正直、どんな宝石がこんなことをさせたのかは気になる。

 が、ばれたときが面倒だし、曰く付きの宝石というのは、どの世界でも変な話が付きまとう。

 呪い、なんてのはあるかどうかは怪しいけど……無いと断言するには、不思議なことが多すぎる。


「カタリナ、どこかの王様とかが持っていた宝石を使ったJAMの話、聞いたことある?」


「噂程度にはライブラリに残ってますね。やはり、どこもそのクラスだと秘匿されてますから……」


 申し訳なさそうに答えるカタリナだけど、想定内。

 いつの時代でも、貴重なはずだし……言い換えると、王族が戦争に出るのか?って話だもんね。


 パイロットが死亡しても、そのまま動き続けたというJAMの話は……ゲームにもあったのよね。

 この世界でも、それが存在しないと言い切るのは、難しい。

 出会いたくはないけれど、覚悟はどこかでしておかないといけない。


 記憶が本当に私の物なのか、私は本物なのか。

 そんな考えが浮かび……首をふってかき消す。

 本物だろうと偽物だろうと、私は私として動くだけだ。


「私たちはコツコツいきましょ。確実にね」


「ええ、そうですね。このまま強くなれば、きっと」


 七色のダイヤを、手に入れる。

 まさに夢のような目標が、いつか手に届くだろうか?


 そんなことを考えながら、夜の街に戻る。

 見回りの仕事は中止になり、街の代表者からは都合がいい時に話がしたいと連絡が来た。

 なんだか疲れたので明日にしてもらって寝るのだった。





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