JAD-166「JAMという物」
強敵との戦い、そして被弾。
大きく損傷してしまったブリリヤントハートは、今トラックに乗せられている。
「次元収納装置が無事でよかったですね」
「まったくね。トラックが出せないとなると、かなり厳しかったわ」
本当はもう少し隠しておきたかったけど、そうもいっていられない。
さらに損傷が広がって、出せなくなる方が問題だと考えたのだ。
幸いというべきか、こちらでも次元収納装置の噂はあるらしく、尊敬のまなざしが来た。
一獲千金の象徴みたいなもので、10年に1回ぐらいは話が出るようだ。
「改造された獣、ミュータントは殲滅を完了と。戻せるか確かめたかったけど、無理か」
「私たちは神様じゃないですからね、限界はありますよ」
戦いから数日たったけど、まだ片づけは当然のように終わっていない。
むしろ、大物は全くの手つかずだ。
今日あたり、援軍がやってくるらしいので、それからが本番。
それまでは何をしよう、と外に出たところで気配。
「姐さん、人手が来ましたよ」
「噂をすれば、さっそくね」
迎えに来てくれたライアンを引き連れ、トラックごと現場に向かう。
向かう先は、あの巨大な無人機のいた場所だ。
無人機が出てきた場所自体は、すでに探索と確認が入っている。
結果として、謎の設備がやはりあり、そこは沈黙していたという。
仮定に仮定を重ねた話になるけど、あの無人機が動けた時点で、設備に用がないのだろう。
資源探索をし、回収し、手駒を増やし、巨大な戦力にまとめる……ちょっとおかしい話だ。
「まるで……そう、まるでもう本隊が来ないと判断したかのよう……」
「アレの目的ですか? 確かに、ちょっと無駄使いですよね。あれではほかのことに使えません」
とても機能美を感じられない、ハリネズミのような砲塔の数。
しかも、中身はまるでガラクタで出来たコートのような状態だった。
コアとは別になっていたけど、あの人型は……。
「着きましたよ。まるで爆撃でもされたみたいな状態ですね」
「我ながら、派手に戦ったわ」
ほとんどは、自重か何かで崩壊した敵機のものだ。
一部は、私たちの砲撃によるものだけど……うん。
「あんたが戦ってくれたジュエリストでよかったか?」
「ええ、レーテよ。機体は見ての通りだけど、まあ手伝うぐらいはね」
振り向けば、援軍のリーダーらしい男性。
態度的に、こちらを侮るようなものではないのが、好感が持てる。
「なるほど。他の住民に代わって礼を言うよ。ありがとう。まさか戻ってこれるとは……今はいいか。何か持って帰りたいものがあれば言ってくれ。功労者には報いなければな」
「それは見てみないとね。カタリナ、わかる?」
「ほとんどは普通に扱える金属だと思いますけど……探ってみますね」
目を閉じ、探索に集中するカタリナ。
私も視界を意識して切り替え、石の、星の力の流れを……うん?
(何か流れがある……)
思わず、ライフルではなく、ブレードを握る。
JAMのASブレードと同じように、石の力を刃にできるそれは、妙に安心感を与えてくれる。
力の流れを見極めるべく、じっと集中していく。
残骸の奥、そこに向かって何か流れている。
「レーテ、普通じゃないのがあります。行きましょうか」
「ええ、私も感じるわ」
一応、確認することを周囲に伝えて、移動。
がれきのような残骸をひょいひょいと飛び越え、その場所へ。
残骸の隙間から見えるのは、別の色。
「これ、あの人型?」
「でしょうか? 頭部になりそうな部分はつぶれてますね」
詳細を確かめるには、残骸をどかす必要がある。
見えている範囲でも、妙な親近感。
(これ、ブリリヤントハートと似てる?)
もちろん、全身は別物だ。
だけど、手足が似ている気がする。
「これ、移植できないかしら?」
「やる価値はありますね。そのためにはまずは……っ」
突然の大きな音。
明らかに警告音ですと主張する音の源は、つぶれた頭部付近!?
「逃がす……かっ!!」
なぜかその時、何かが出てくると感じた。
手にした筒から光の刃を生み出し、近くのがれきを駆け上り、大きく跳躍。
瞬間、人型から何から空中に飛び上がった。
「こんのおおお!!」
小さな、球体。
それに、刃が沈み、両断。
小さな爆発が起き、私も吹き飛ばされる。
「レーテ!」
「っと、助かったわ」
カタリナにキャッチされ、私にはけがはない。
「なんだったんです?」
「さあ? でも、報告用の脱出ポットみたいな? データが運ばれるパターンだったから」
両断してしまい、確認は難しいけどたぶん当たり。
ようやくというべきか、残された人型に向き直る。
「JAMに正規部品って考えはないものね。持ち出して、確認しましょ」
「了解です。うまくいくといいですねえ」
爆発に、人が集まってくる気配を感じつつ、人型周りのがれきをどかしにかかるのだった。




