JAD-164「大規模線・後」
「スキャニング開始、ターゲットが多すぎます!」
「泣き言言う前に、どんどんマーキングする!」
ビルの高さほどの場所を、浮遊する私。
ライアンたちの支援もしながら、自身に攻撃を向けさせるためだ。
射線も確保した状態となり、どこでも狙い打てる、そんな状況。
「ダイヤの輝きが、ただの光線じゃないことを教えてあげるわ! ジェーマ・レイ!」
機体が、ブリリヤントハートが教えてくれる。
いくつもの戦いや探索を経て、自分はどういう進化を遂げたかを。
まばゆい光が銃口から放たれ、無人機へと迫る。
もうすぐ当たるというところで、いくつかの細い光へと分かれるのが見えた。
それは集まっていた数機の無人機を貫いていく。
放たれる光の弾丸は、ただのエネルギーの塊じゃない。
意思の通じる、生きた弾丸だ。
「輝きは拡散、分散するのよ」
「着弾を確認、効果十分です!」
カタリナの声を聞きながら、手足を忙しく動かして応える。
すぐに無人機からの砲撃が飛んでくるけど、当たらない。
数々の光を放ちながら、じわじわと私は前に浮きながら進む。
攻撃を、まるで踊るように回避しつつ、だ。
「できるだけ遠くのを先に撃破するわよ。戦力を集中させるわ」
「了解です。正面は牽制にとどめます」
無人機のルーチンは、ある意味わかりやすい。
こういう場合に、脅威度が高そうなほうを優先するのだ。
それが、かなわない相手だろうと、だ。
「さあ、どんどん来なさい!」
自分を鼓舞すべく、そんな言葉を発しながらトリガーを引き続ける。
眼下では、自分たち以外の射撃が行われている。
(今のところ、大丈夫みたいね。先走ることもない)
簡単に倒してるように見えて、実際のところかなりの大群だ。
抵抗も激しかったのか、あちこちは廃墟になっているし、その分遠慮もない。
「そんな動きではっ!」
上下がひっくり返るような回避運動の最中、遠くの広場にいた射撃タイプを撃ち抜く。
やっぱり、この街が規模的に大きいのは、無人機の種類も証明している。
そして、合間にやってくる獣たちも。
『姐さん! 獣たちは俺たちが!』
「了解。きっちり仕留めなさい!」
正面の無人機はできるだけ倒さない、そのことはなんだかんだ負荷になる。
すっきりできないという点では、無視するわけにはいかない。
そんなわけで、彼らには獣を仕留める役目を預ける。
実際、獣たちは本能を制御しきれていないのか、突出してくるから狙いやすい。
放っておけば、こっちまで突撃してしまうぐらいだ。
「では、私たちは?」
「周りの無人機を間引きしつつ、正面は凍らせる!」
射撃の勢いをさらに増やした。
常に光の帯がブリリヤントハートから放たれているような状態だ。
両手のライフル、背面武装、全部フルオープンだ。
「これだけ打ち続けてるのは久しぶりですねえ」
「まったくよ。地上部隊は順調の様ね」
横から襲撃を受けるも、その数は少ない。
明らかに、多くの無人機が私を狙っているからだ。
よっぽど、明るく目立って見えているに違いない。
「敵無人機、正面奥から増援を確認」
「ようやく、か。飛びながらメインをアクアマリンに変換!」
「貴石変換完了! いけます!」
迫る砲撃を回避しつつ、背面武装、手の中のライフルをすべて正面に向ける。
お腹の底から、石の、星の力を吸い上げて回すようにし、武器へそそぐ。
石の力は、イメージも影響する。
おそらく、具体的であればあるほど、より力は現象として明確に変化するのだ。
雷が、その強さを変えるように。
「ちょうどいいわ。凍てつく雪山の園、その力を。ジェーマ・レイ!」
同じトリガーの言葉。
しかし、放たれるのは青白い、死神の吐息。
光線の通った箇所が白い靄で覆われるほどに、強烈な冷気が飛んで行った。
「着弾地域の凍結を確認。まだ反応はありますが」
「破壊には弱いけど、環境には強い。さすが惑星探索も兼ねてるだけはあ……回避っ!」
突然、ゾワっとした感覚が襲い掛かってきた。
叫びながら機体を横に滑らせ……メテオブレイカーを思わせる強烈な一撃が通り過ぎた。
「見てください! 大きな工場の中から!」
「なるほど。あの謎の設備を放っておいたら、こういうのが出てきたのかしらね」
工場を崩壊させながら出現した相手は、おそらくは無人機。
ただし、その大きさはJAMの数倍はある。
「ライアン、あいつはマズイ。あんたたちは周囲で他の相手を頼める?」
『気を付けて、姐さん』
「まっかせなさい!」
言いながら、試しに放った凍結目的の光は……何かに削られるように力を減らした。
眉を顰めつつ、少し近づく。
石はダイヤに戻し、正面対決だ。
「さあて、どんな相手かしらねっ!」
詳細不明ではあるけれど、負けるわけにはいかない戦いが始まる。