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JAD-160「武器に善悪はない」


 宇宙からの襲撃者、その先兵である無人機たち。

 彼らの残した設備、生産されたものは、私たちでも流用できると判明した。


 具体的には、まずは武器。

 どういう仕組みかはまだ全部わかっていないけど、使えるものは使おうと思う。


 そして、電源を落とした状態の設備。

 これは……。


「変換器? これが?」


「としか言えませんね。最低でも組み立て済みパーツ、物によっては完成品ができてきます」


「姐さん、変換機っていったい……」


 ライアンの茫然としたつぶやきを聞きながら、試したことを考える。


 一部を検査の上、少しだけ電源を投入しなおしてみた。

 作りは人間サイズの何かが操作することを前提としているようだった。


 すごく気になる部分だけど、そのあたりは別の機会に考えよう。

 本命としての機能部分だが、転がっていた鉱石類を投入口に入れた。


(ここまではいい。記憶でも、成分を細かく分解し、インゴットにするようなものはあったし)


 今回のこれは、それどころではなかった。

 1丁だが、手持ちサイズの銃器がいきなり出てきたのだ。


「材料が1、完成品が10だとすると、普通は素材から部品を作り、それを組み立てて作る、これは当然よね。でもこれ、決まったものが、材料さえ入ってきたらいきなり出来上がるの」


「それは、工業的な部分を省略していると?」


「そうなるわね」


 ライアン以外の声、その主はもうすぐ白髪も混じるかなという大人の男性。

 町に戻ってきた、関係者らしい。

 逃げるように言われた、副町長というところ。


「地域の奪還に成功したら、封印するか……利用を制限すべき代物ですね」


「それがわかるなら、安心だわ」


 武器が増えるということは、後の時代に争いの種をばらまくということでもある。

 それがわかっている感じの返事に、頷く私。


「レーテ、解析結果出ました。作れるのはこれだけのようです」


「どれどれ……なるほどね。絞ってる分、効率重視になってるのかしら」


 タブレットに表示されるのは、3種類ほどの武器。

 1つは手持ちサイズ、2つはJAMなどが使えるサイズ。


 いずれも、石の力を使った武装、となるようだ。

 試してない1つは、ひときわ大きい。


「手持ちサイズでも、十分な威力だったから、まずそっちでいいかしら」


「そうしましょう。これの電源効率はいかほどで?」


「さすが謎技術ね、ほとんどいらないわ。これ、起動時に使うぐらいみたい」


 言いながら、なんてトンデモ、と感じる。

 周囲を流れる星の力を内部で受け止め、タービンを回すかのようにエネルギーを取り出している。


 仕組みはわかったけど、どうしてそれができるのかがわからない。

 少なくとも、私を設計した過去の人類にはなかった技術だ。


 だというのに、だ。


(あっさりと私たちが使える。そのことに疑問は……仮に抱いても、それどころじゃないか)


 10年先より、今を乗り越えなければいけない。

 そのことを改めて感じ、設備の設定をいじる。


 わずかな音を立て、動き始める設備。

 集めておいてもらったくず石や、がれきを放り込んでいくと……出来上がる。


「なるほど、これは確かに変換機だ。作業員を呼んできましょう」


「見事な物よね。じゃ、後はよろしく」


 あとは出来上がるのを見守るぐらいしかやることがない。

 ライアンとカタリナを引き連れて、外へ。


 少しの間なのに、妙に長く地下にいたような気がしてくる。


「姐さん、そのうち町を出るんですか?」


「ま、そうね。私はよそ者だし」


「私たちには、目的があるんですよ」


「そうですよね、わかりました!」


 ここで、どんな?と聞いてこない限り、ライアンはいい男になる気がする。

 私が言うのもなんだけどね。


 しんみりした様子のライアンに、私は拳を当てるようにする。


「姐さん?」


「ちょっとぐらいなら、修行してあげるわ」


 まだまだ子供だなと思うほどに、ライアンの表情が明るくなる。

 町の西で、と言ってやれば機体を取ってきます、と走り出した。


 その様子を見守りながら、歩き出す。


「いいんですか?」


「このぐらいは、ね。それに、たぶんそろそろ……」


 来るわ、と聞こえないように小さくつぶやく。

 まだ周囲に人がいるからだ。


「そうですね。それも確かに」


 ブリリヤントハートを置いてある場所へ向かい、いつものように搭乗。

 機体を約束した場所である町の西へ向け、移動しようとした時だ。


 空に、気配を感じた。


「望遠準備」


「了解。ライフル、長距離用設定に切り替えます」


 祝砲を撃つかのように、ブリリヤントハートに上を向かせる。

 長物であるライフルを構えたまま……いた!


 甲高い音を立て、ダブルダイヤの光が空へと伸び、それを撃ち抜いた。


 注目を浴びながら、そのまま待つことしばらく。


「落下物を確認。どうします?」


「変なところに落ちても困るから、拾うわ」


 いうが早いか、すぐに飛翔。

 JAMサイズのそれ、おそらくは無人の偵察機を空中でキャッチだ。


 この町を奪還したということは、ここにいた連中と本体との連絡か何かが途絶えた形になる。

 だから、そのうちこういうのが来るだろうと思ったのだ。


 少し飛んだまま、ライアンの待つ場所へ。


『姐さん、それは敵ですか』


「そうね。でも、すぐには変化はないと思うわ。様子見をすると思う」


 だから、実践訓練よと告げる。

 戸惑う彼に告げた内容は、敵陣地の発見を目的とした偵察、だ。



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