JAD-157「彼方の意地」
「これで4つ! カタリナ、後何体!」
「残骸も反応しちゃって……まだいます!」
自分の目でも、同様の状況。
集落を占拠している無人機たちを、薙ぎ払うように倒してすぐ。
親玉らしき相手を倒し、これで後はと思ったところで増援だった。
しかも、どこからか相手はうじゃうじゃと現れる。
「事前に準備したにしては多すぎる。それに、これが当たり前ならもっと早く押し込まれてるんじゃ?」
「わかりませんね。それより、来ます!」
思考を一度切り替え、目の前の相手に集中。
小さいのも大きいのも、続々とだ。
幸いにも、動きが悪い物や火力が薄いだろうものはライアンたちに任せる形で動ける。
恐ろしいはずなのに、彼らも踏ん張って頑張っているようだ。
今のところ、犠牲なく戦えている。
もちろん、私たちがほとんどを引き付けているというのが大きいだろうけど。
町で聞いた話そのままの光景。
終わりなき戦い、まるで私たちと、まだ見ぬ相手との意地の張り合いだ。
「奪還が難しいってこういうことかしら。なんだか、終わりが見えないわ」
「確かに。こんなに出てくるなんて思ってませんでしたよ」
愚痴はこぼれても、戦わないわけにはいかない。
いちいち倒したかも面倒になってきたので、アクアマリンの力で丸ごと凍らせることも増えてきた。
氷の中でまだ相手の灯りが消えない状態は、どこか不気味で……うん?
「数を確認。少し減ってない? というか、倒した分だけ増えてない?」
今更ながら、おかしいことに気が付いた。
さっきから、同じペース、同じ状況の攻防が多すぎる。
「ええ? 7体撃破……! 増援7!」
「もしかして……ひとまずみんな凍らせる!」
見えている範囲の相手に、凍てつく力を放つ。
青い光としか言えない弾丸が飛び、無人機たちを無力化していく。
そして……。
「うん。鈍ってる。出てきてるのはライアンたちが倒した分かしらね」
「妨害が少しありますけど、無線は届きそうですよ」
引きずりだすことも考え、一度後退。
まだ戦闘が続いているところまでやってきた。
『姐さん! 被弾したんですか!』
「誰か姐さんよ。奪還が難しい仕組みがわかったわ。ひとまず凍らせる」
言いながら、青い弾丸を打ち込み、凍り付かせる。
彼らに近づき、犠牲が出てないことを確認し、ほっと一息。
「どうも、倒した分だけ補充されてるらしいの。一通り凍らせて、本体に行ってくるわ」
『なるほど……気を付けて!』
ブリリヤントハートに手をあげさせ、そのまま一息に飛び上がる。
残骸や氷の像を飛び越え、おそらく増援の大本へ。
地元の物、そうじゃない物、色んな機械群の残骸が転がっている。
そんな中に、ぽっかりと開いたいくつかの採掘用だろう穴。
「時間との勝負ね、一気にどんどん行くわよ!」
「はいっ!」
全身に青い光をまとわせながら、突撃。
動く相手はすべて凍らせる。
進路確保の場合も、あくまで行動不能な程度にとどめる。
少し手間だけど、その甲斐もあってか、増援はかなり少ない。
そうなれば、こちらの対応にも余力が出てくるというわけだ。
ずいぶんと大規模な採掘場のようで、結構な距離を進んだ。
途中、待機しているかのようにたたずむ無人機を見つけ、そのまま凍結。
外の数が減ると、これらが出てきたんだろうな……。
「右手奥に、これまでに未確認の反応あり。ここじゃないでしょうか」
「了解っと。あのへんね……とりゃっ!」
門番のようにたたずむ無人機、その武装を凍らせて、蹴り飛ばす。
壁にぶつかったところでさらに青い弾丸。
生きてるけど、動けない。
そんな状況を作り出した勢いで、目的地へ。
「はー……いかにも、ね」
採掘場所だったのか、彼らが広げたのかはわからない。
ホールのようになっている場所に、戦わないだろう機械群。
今もなお、資源を採取し、何か生産するということをしている。
問題は、明らかにこの星の人類が使わない工作機械なことだ。
生産ラインがおかしすぎるとも言える。
「早い、なんて早さですか。普通に原材料を加工してる風には見えませんよ」
「謎技術ね……来る」
侵入者あり、ようやくそう判断したのかホール内の無人機たちが動き出す。
それでも、能力がこれまでと一緒なので大した相手ではない。
すべて凍らせながら、採掘・生産設備へと接近。
「停止方法がわからないもの、仕方ないわよね」
本当は、研究し、再利用したい。
でも、今はここの奪還を優先だ。
ブレードを取り出し、カンに従ってザクザクと。
結果、すぐに採掘行為も、生産部分も停止した。
「変に撃つと、爆発しそうだもの」
「同意です。ひとまず、これでなんとかですね」
増援は終わった。
となれば、ようやく掃討開始である。
このまま中を対応してもいいのだけど、一応彼らにも聞いておこう。
貴重な戦闘経験(動かないので的当てだが)を得る機会だ。
警戒はしつつ、外へと脱出するのだった。




