JAD-156「ミッション遂行中」
『なあ、本当に?』
「故郷を取り戻せるなら、なんだってするんでしょ?」
無線で聞こえる、戸惑いの声。
声の主は、少年と青年のはざまにいるライアンだ。
私が先頭であらかた片付けるから、撃ち漏らしを頑張って倒す。
どうしたらいいか、できることなら何だってする。
そう言いきったライアンに告げた作戦が、こうだった。
『そいつはそうだけどさ……』
わずかな会話でもわかること。彼は、優しい。
乱暴な口調で話しかけてきたのも、自分だけじゃなく仲間を守るための物。
そのことが、なんだかほほえましい。
「大丈夫。まあ、見てなさい」
見えないだろうけど、笑みを浮かべて通信終了。
もう少しで、現場が見えてくる。
意識せずとも、だんだんと集中力が増していく。
明確な敵意はあるかわからないけど、敵対者のいる場所へ。
もっとも、相手はそんな感情を抱いてないかもしれないが。
「スキャン可能な範囲に入りました。やっぱり、ほぼ同一ですよ」
「決まった戦力を決まった範囲で維持、地域を制圧して……資源確保、かしらね」
ずいぶんと、意地の悪い流れだと思う。
少なくとも、送り出した当人?たちはそこに先住民がいる可能性をわかっている。
そうでなければ、こんな武装したものは必要ない。
「殺意なき殺意、厄介ね。でも……」
背面武装も起動、両手にはライフル。
使う石はダイヤとアクアマリン。
故郷を取り戻すのだ、あまり派手に壊してもね。
「クリスタルジェネレータ出力上昇。いつでも」
「了解。吶喊よ!」
ぐんっと、機体が前に押し出される。
急加速を可能にした、大出力。
白い光が推進力となって、後ろに伸びる。
地面を滑るように飛び、一気に敵陣、制圧された彼の故郷へ。
遠くに見えていた相手が、一気に鮮明に見える距離となる。
「やっぱり、反応が遅い!」
向きを変えた無人機たちが発砲。
しかし、その動きは単純なもので、もうそこには私はいない。
ほとんどの機体の中央部へ向け、光の弾丸を打ち込む。
爆発は、しない。
私の攻撃方法もそうだけど、無人機の動力がそうなのだ。
「解析終了。やっぱり、みんな電力です。石の力を、電力に変換してます」
「最悪、力ある石がない、そんな星でもってことか……」
先に叩き込んでやれば、相手の注目は全部こちらに。
開けた場所で陣取り、ダンスを踊るように移動しつつ、迎撃。
建物そばの相手は凍らせ、そうでなければ撃ち貫き、撃墜していく。
ゲームでやったような光景だけど、これは現実だ。
「敵戦力、減少を確認。ライアンたちが入り口付近にとりつきましたよ」
「いいじゃない。よくわからない状況でも確認に来る、大事なことだわ」
少し後退し、彼らとの距離を詰める。
それをチャンスと考えたのか、無人機のいくつかが突出し……彼らが撃ち抜いた。
『邪魔だったか?』
「いいえ。大事なことよ。さて、ちょっと奥の親玉をどうにかしてくるわね」
大丈夫そうだと判断し、無人機を蹴散らしつつ集落の奥へ。
外からでも見えていたが、この集落は小山に覆いかぶさるようにできている。
あるいは、鉱山外の集まりがそのまま町になったのかもだが。
力の流れに従い、そちらへ向かえば……いた!
「巨大機械確認。輸送用でしょうか」
「たぶん、ね。ついでに現地の指揮もしてるんでしょ。町の外に出てきた奴は管轄外なのね」
二回りほど大きな、無骨な機械。
明らかに知的生命体の意思を感じる武装。
それらが私たちに向けられ、発砲。
「斬る!」
「砲撃支援は任せてください!」
ライフルを片方仕舞い、ブレードを握らせる。
背面武装の管理はカタリナに任せ、突撃。
左右に揺れ、砲撃の支援を受けながら距離を詰める。
見えてくる相手は、まるで人型のような顔。
「詳しい話は、別のに聞くわ」
そう言い切って、巨体を切り上げるようにして振るう。
石の力を十分にまとわせたブレードは、すり抜けるような手ごたえ。
溶けるような音を立てながら、巨体は崩れ落ちた。
「周囲の動きが変わりましたよ」
「大方、指揮が途切れたからでしょうね。掃討にかかるわ……待った!」
言い切り、片っ端から、ひたすらに撃墜にいそしむ予定が崩れた。
集落からは少し離れた、おそらく資源採取の場所に動く影。
まだ終わりじゃない、そのことを感じながら構えなおす。




