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JAD-154「戦場の景色」



『増援!? どこの所属だ!』


「どこでもないけど、人間の味方のつもりよ!」


 明らかに無人の機械に襲われていた武装トラック。

 潰される直前に、滑り込むように割り込み、無人機を蹴り飛ばす。


 地面に転がった相手に、数発打ち込んで沈黙。

 飛来するミサイルのような何かを即座に迎撃。

 そうしてるうちに、どこからか聞こえてくる無線。


「どっか突っ込んでほしい場所があれば手伝うわよ!」


『ちぃ、なら後方に打ち込んでくる奴がいる! けん制を頼む!』


 突然の状況のわりに、思ったよりこき使ってくる予感。

 だめでもともとって奴だろうな。


(良いじゃない。逆にやりやすいわ)


 有人機も戦ってる場所で援護をと言われるより、わかりやすい。

 適当に相手後方に打ち込めば、反撃とばかりに飛んでくる無数の砲弾。


 想像通りなら、相手はこの星にやってきてからこれだけの物資を作り上げた可能性がある。

 それは恐ろしく、興味深いことだ。


 でも、ほとんど同じ方向から来たような?


「射撃元確認、座標出します!」


「なんでまとまってるのかしら? 面で制圧したいなら、向きを合わせるだけでいいのに……」


 マップに反映された相手の位置。

 なぜか、たくさんの支援射撃タイプだろう相手が、一か所に並んでいる。


 もしかしてこれは……。


「指揮タイプがいなくて、増殖してるだけ?」


 疑問を口にしながら、ちょっとだけ飛んで角度を確保。

 邪魔者がない直線状にいるはずの相手に、全砲門開け!みたいな。


 こっちにくる弾丸をそのまま叩き落す勢いで、連射。

 少しずつ当てる場所を変えて打ち込めば、気持ちいいぐらいに直撃していく。


 そのことで、相手の支援射撃は激減。

 そのことがわかったのか、人間側の勢いが増した気がする。


「地上戦力、突撃を始めてますね」


「巻き込まれてもなんだし、援護だけしてましょ」


 はぐれてる相手戦力や、歩兵や車両に迫る相手を優先にっと。

 まるで、ゲームでNPCの戦闘を見守るような感じの時間が過ぎていく。

 一度傾いた天秤は、思った以上に勢いを生んだようだ。


「終わったかしら?」


「そのようですね。戻ってきますよ」


 多くのJAM、車両、歩兵たちが戻ってくる。

 歩兵は、みんな車両か荷台に乗っているようだ。


『そこのJAM。支援は感謝するが、報酬は出せないぞ?』


「それ目当てだったらもっとほかのやり方でやるわ。お茶ぐらいはいただいても?」


『そうか。少し先に陣地がある。ついてこい』


 声色に、疑いの感じはない。

 もしかしたら、この辺りは人対あれらの構図が一般的なのかもしれない。


「ずいぶんと、あっさりしてますね」


「外敵があると、人間も協力せざるを得ないのかもね」


 もっとも、それでも身内争いをするのも人間、なんてのはよくあることだ。

 私の場合、そういうことを記憶してるから、に過ぎないけど。


 相手を刺激しないよう、少し離れてついていく。

 視線を感じる気がするのは、気のせいじゃないだろうなあ、うん。


「前方に金属反応多数。これは……」


「すごい、武装都市ね」


 見えてきたのは、力。

 重機やJAMで建築したのだろう壁、備え付けられた無数の砲台。

 どこか急ごしらえな印象を受けるのは、やはりあの無人機のせいか。


『ようこそ、終わりなき闘争の世界へ。あの黄色いテントへ来てもらいたい』


「わかったわ……ふむ」


「あちこち修理中ということは、そういうことですね」


 どうやらここそのものも、戦いの現場ではあるようだ。

 押して押されて、相手の底が見えない分、人間が不利、かなあ?


 ブリリヤントハートから降り、周囲を観察する。

 案外、女性の兵士みたいな人も結構いる。


 視線を迷わせつつ、テントへ。


「アンタがあのJAMの?」


「ええ。ひとまず有人側を手助けしようと思って」


 変な奴だな、なんて言われつつ、席を案内される。

 簡単に自己紹介をしたところで差し出されるカップ。

 本当にお茶を一杯、のつもりだろうか。


(この味は……)


「わかる口か。美味いだろう? 少し後方に、良い土地があってな」


「戦場を遠ざけたいのだけはよくわかるわ」


 込められた意図を予想しての発言に、相手もほほ笑む。


「そういうことだ。人や物と違って、畑はそう簡単に動かせん。アンタがどこの誰かは知らん。稼ぎたいなら案内するが?」


「話は聞かせてもらいたいわね」


 私のすぐ横で静かにたたずむカタリナ。

 組み合わせ的に、オペレーターやサブパイロットだというのはわかるはず。


 そんな彼女を馬鹿にした様子もないので、話を前向きに考えることにした。

 お代わりとして出てきたお茶、紅茶の類に癒されつつ、会話を進める。



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