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JAD-151「見つめるもの」


「システムオールグリーン。出力も安定しています」


「トラックの収納も問題ないみたいね。じゃ、飛びましょうか」


『ご武運を、同胞、後輩』


 空中に投影された執事の会釈。

 そこに、さみしさを感じたのは、私の思い込みだろうか。


 気持ちを振り払うように、スロットルを徐々に吹かしていく。

 機体はメンテナンスを受け、操縦者である私自身も調整を行った。

 より深く、JAMを知ろうと勉強したともいう。


「エネルギー誤差、半減してますよ」


「それでもまだ無駄があるか……まだまだね」


 徐々に小さくなっていく地上。

 落下の危険を考えると、案外高度があるほうが、なんとかなると考えた。


 それに、高ければ高いほど、生き物はいないと思ったからだ。


「ここまで上がっても、まだ山の上にはいないのね」


「そのようですね。行きましょう」


 ふわりと、機体を移動させていく。

 徐々に加速し、いつしか機体のとがった部分に雲のようなものがつながっていく。


「何か反応はある?」


「今のところは。さすがにドラゴンたちもこの高さじゃ……」


 人、それをフラグという。

 ゲームの記憶でも、そんなことを言っているNPCがいたような気がする。


 念のために、周囲の警戒は怠らずに飛行を続ける。

 眼下には、自然あふれる大地と、視界を遮るようなたまの雲。


(もう少し上に行くと、気流がありそうな気がする)


 この星の大きさも、正確なデータは持っていない。

 周囲を観察した限りでは、相当な大きさだと思うのだが……。


 視線の先で、上空に雲が途切れる空間を見つける。

 おそらく、あのあたりが気流の大きな流れがある部分だ。


「静かですね」


「ええ、本当に。私たち以外、何も……っ!」


 ほんの少し、機体を上に向けた私。

 瞬間、腰のブレードを抜き放っていた。


 剣に石の力をまとわせ、まるで目の前に敵がいるように構えた。


「レーテ?」


「よく考えたらさ、少しおかしいのよね。いくら文明が崩壊したといっても、打ち上げ施設の1つや2つは、生き延びてもおかしくない。あの時のように」


 思い出すのは、以前探索した施設。

 あれらは稼働してるとは言いにくいけど、無事なのが全くないとも思えない。


 つまり……地上と宇宙を、特に上に行くのを邪魔してるやつがいる?


「もしそうなら、高度を上げれば……」


 ほんの僅か、周辺の大気が変化した気がした。

 そして、何かが見ている。


「スキャンされている!? どこから!?」


「上よ!」


 遠い遠い空。

 その彼方に、そいつはいた。


 おそらく、衛星の一種。

 問題は、今の私たちみたいな相手をどうこうするためのものだったということ。


「回避っ!」


 空から、細い光が飛んでくる。

 極細だけど、当たればよくない結果になるだろう光。


「迎撃、いえ……撃墜兵器ですか?」


「暴走してるのか、昔の人類は対策として講じたのか。そこはわからないわね」


 宇宙からの侵略者が、何かを地上から打ち上げようとしていたのはわかっている。

 おそらくは資源だろうそれを、そのまま良しとはしなかったのかもしれない。


 ずいぶんと乱暴な手段だけど、攻撃されないマーカーとかもあるのかもね。

 追撃が来ないところを見ると、高度が問題らしい。


「ひとまず、衛星が増えていない理由は1つわかったわね」


「知りたくはなかったですよ、できれば……」


 気分を切り替えるべく、高度を下げて山脈へ。

 雪山である山々に近づくと、その巨大さがわかるというものだ。


「何か飛んでくる気配はなし。地上には何かいるでしょうか」


「少しはいると思うけどね……」


 おおよそ、人も、動物も生きるには向かない白銀の世界。

 そんな空間に、輝くものが見えた。


「見て、カタリナ」


「すごい……自然にできたんでしょうか」


 山脈の中に、白く輝く先端があった。

 自然と侵食され、残ったのかは不明。


 山の先端に、水晶の塊がある。

 手を伸ばすかのように、突き出た先は鋭い。


「力を感じる……星の息吹きが出てる箇所ね」


 世界には、こういう地点がいくつもあるに違いない。

 神秘的なものを感じながら、山脈を超える。


 しばらくは同じ雪山だったが、だんだんと様子が変化していく。


「なんだか、木々の様子が違いますね」


「そうね。山脈の東西で、がらりと環境が違うのかしら」


 新しい土地、新しい出会い。


 そして、新しい敵。


 すべてが未知の世界に、一歩を踏み出したのだった。



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