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JAD-150「戦いは準備で大勢が決まる……らしい」



「テスト項目103。エネルギー枯渇結晶への、充てん作業実施」


「了解。こうね」


 メテオブレイカーに滞在を始めて数日。

 本当は今すぐにでも現地に飛んだ方がいいんだけど、準備が必要だ。


 機械としての機体たちもそうだけど、何よりも私たち自身。


「やはり、比較しても相当な伸びです」


「なるほどね……これが、石の、星の力を理解するということかぁ」


 言いながら、視界の間隔を意識して切り替える。

 まるで、目に映像が投影されるかのように、光が加わる。


 周囲を流れる、石の力だ。

 前からできてはいたけど、調整が効くようになっている気がする。


「ん、エネルギーの移行を確認。ほぼ半々だと思うけど、どうかしら」


「はい。そのようです。これで、鉱脈にある水晶たちから、掘らずに力を移動できますね」


 データ取りは多くの種類をお願いされた。

 そのうちの1つが、今やったこと。


 これまで、一度エネルギーを使った水晶などは、しばらく放置するしかなかった。

 星の力、スターストリームが噴き出す場所などに置くぐらいがせいぜいの対策。


「向こうがどうなってるかわからないものね、ありがたいわ……ほんっと、あの子は優しいわね」


「全くです。つまるところ、レーテや私のような存在がほかにいなさそう、ということですが」


 思わず、子といってしまったけど、実際どうなのか。

 稼働しっぱなしだけど、会話の経験はあまりなさそうな印象だった。

 執事の姿を投影している割に、してくれることは、かなり過保護。


 まるで、親の気を引く子供のような、久しぶりの帰省のような。


(私には両親の記憶なんてのも、ないわけだけど……うん)


 確かに、他にも似たような存在がいるならここまでしてくれることもない。

 さみしいような、不確定要素が減って安心するような、微妙なところ。


 改めて考えてみると、テスト項目の多くが、私たちの役に立つものだ。

 石の組み合わせによる、出力の変化、調整量の違い、人工と天然石の同時運用は可能かなど。


『可能性はまだゼロにはできません。観測できていないだけで、いるかもしれませんからね』


「それ、透明な人間がいるかいないかみたいな話にならない? 別にいいけど」


 唐突に、開けっ放しのコックピットに執事。

 どうやら、食事の時間のよう。


 不思議なことに、ここではいくらかの野菜などが栽培されているのだ。


「私とかがいないと、消費されないでしょう? これ、どうしてるの」


『分解……ですね。ですから、とてもうれしい、そう定義できる感情だと思います』


「わかりますよ。私も、レーテに旅の途中にあれこれした時には同じ気持ちになります」


 作られた存在、人と生活し、人を支える存在。

 カタリナとメテオブレイカー。

 実際の性能などは全く違うけど、本質は似ているのかもしれない。


「次は、もっとバリエーション増やしてくれない? 楽しみに寄らせてもらうわ」


『それは歓迎します。なあに、眠らせている運用区画はまだありますからね』


 もしかしたら、ブラックジョークというやつなのかもしれない。

 ほほ笑む執事に、そんなことを考える。


 食堂に行けば、そこには立派な料理が並んでいる。

 それにしても、保存食の肉をこうも調理しきるとは……。

 メテオブレイカーは本当に、単独での長期運用が狙いだったんだろうなと思う。


『話が変わりますが同胞、石の力は調子がよさそうですね』


「ええ、おかげさまでね。なかなか、こんな詳細にテストとデータを出すのは難しいもの」


 これは本当にそうだ。

 おかげで、戦うときでも行動の精度が変わった気がする。


 言い方を変えると、ステータスが向上したとか、補正値が増えたとか、そんな感じ。


(最適化されてきた……は機械じみた発言か)


「この調子なら、私たち単機でもかなり動けると思うわ。あとは、改良中の次元収納機能かしら」


『順調ですよ。生きた装置で、罠の類もありませんでした。通信機能もカットしましたからね。有線、接触以外での起動もできないです』


 さすが、である。

 私の懸念である本体たちに取り返される可能性が限りなく減った。


 イメージ図からいくと、腰のあたりに装置が追加され、そこに収納されるらしい。

 その代わり、収納中はある程度エネルギーを消費し続けるらしいが、当然だ。

 本格的に改良すると、強化武装として装着することもできるのだとか。


『予備動力炉にもなるはずです。こちらの用意したジルコニアたちを使ってください。なあに、すぐに自家生産しますので大丈夫です』


「何から何まで、ありがとう。必ず、戻ってくるわ」


 すると、それが何よりの報酬、そんなことを言われてしまう。

 カタリナも、傍らでほほ笑んでいる。


 どこか暖かい気持ちになったのを感じながら、食事を終える。

 そして、調整やテストを終わらせるべく、気合を入れるのだった。




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