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JAD-014「帰るまでが……」



 灯りの少ない坑道に、幾条もの光が走る。

 それは壁を照らしながら、狙いたがわず目標に突き刺さった。


「スライム3匹に着弾、崩壊を確認」


「ふう……スライム種の酸は厄介だものね」


 決して強くはないけれど、隙間があればどこへでも入り込む厄介な相手。

 それでいて、生身で襲われれば脱出はほぼ不可能。

 車等の機械類も、一部の配線などはその体液で溶かされてしまうという。


 元は、どこにでもいる単細胞生物だったはずが、環境の激変により異常進化したと聞いている。


(ま、私からするとゲームのよう、ですむのだけど)


 実体弾と違い、発射後に熱が残るかは使っている石次第の光線銃。

 今回はトパーズを使用しているので、どちらかというと実体弾に近い。


 水晶のように鋭く刺さる形や、今回のように無数の砂もどきを叩きつけることもできる。

 その砂もどきも、しばらくすると消えてしまうのだけども。


(火傷とかは残るのに、火は消えるんだから、謎よね)


 結果は残り、その過程というか事象は消えるという謎具合。

 それなのに、結構量産されている兵器だというのだから、よくわからない話だ。

 そもそも、どうやって宝石を動力源にして、それを使っているのかも謎なのだから。


「追加はなさそうですね。……レーテ?」


「少しぼっとしてたわ。ごめん」


 考えても仕方がないことだ。

 この世界で目覚めた理由も、いまだにわからない。

 記憶が本物なのかどうかということも、しっかり割り切っていかないといけないのだ。


「ゴーレム、早い動きだったわね。コアも少し違うかしら?」


「みたいです。検査結果、出しますね」


 いくつかの表示が半透明なウィンドウとなって目に入る。

 体部分は、ほとんどがよくある岩塊だけど……コアは少し違う。


「濁ったルビーのようにも見えるけど、これ、違うわよね」


「はい。だいぶ品質は悪いですが、スピネルかと」


 赤、青、緑等様々な色を示す宝石の1つ。

 それから得られる力は、JAMとしてはやや物足りないけれど、特徴がある。

 それは、合成、人工的に作りやすいというものだ。


 ゲーム上の設定ではあるけれど、人類が一番最初に合成に成功したとされてるらしい。

 地球の歴史と比べてどうかは、知らないけども。


「成分的には、天然物、ね」


「そうみたいですね。一応確保しておきます。あ、人が来ましたよ」


 安全確保の連絡をしたからだろう。

 入り口から、ゆっくりとだが人と、機械がやってくる。


『お見事です。ではさっそく採掘に入ります』


「ええ、スライムが隠れてるかもしれないから、警戒は続けるわ」


 一見すると、JAMで脅しながら作業させてるみたいで、少し気になる。

 もやもやしてる間にも、どんどん現場は整えられ、けたたましい音が響き始める。


 採掘が始まり、その後は平和な物だった。


 暇つぶしに、邪魔そうな岩塊をブレードの練習台にさせてもらったぐらいである。


「なんでみんな、驚いてたのかしら?」


「たぶん、普通のJAMのブレードでは、斬れないからだと思いますよ」


 カタリナの指摘に、首をひねる。

 光線銃とブレードの使用は、ジュエリストであればごく普通だと思うのだけど……。


「レーテは上手いですから。ジェネレータからの効率が全然違うんですよ」


「そういうものかしら?」


 まあ、下手なつもりはないけれど……ね。

 岩塊を脇にどかしつつ、念のための警戒を再開。

 そうこうしてるうちに、今日の分の採掘時間は終わりを迎えるようだった。


「交代制でずっと掘るかと思ったけど、そうでもないのね」


「途中で声を拾ったんですけど、隆起した鉱山の場合、鉱床とかが普通のとは違うそうです。本来ならあり得ない組み合わせで出てくるそうですよ。例えば、石英の層の横に貴石の原石があったりと」


 撤退していく人と機械、車を見守りつつ、小さなカタリナの声を聞く。

 つまりは、普通の鉱山ではないわけだ。


「道理で、大掛かりに採掘した岩塊も持っていくわけね。中に原石がゴロリとしてるかもと」


「そういうことみたいですね」


 随分と、事前に聞いていたより丁寧に掘るなあと思えば、そういうことか。

 別に騙されたわけではないけれど、思ったより美味しい話になりそうと思ったりした。


 出てくるのが石英、水晶だけじゃないのなら、話が色々変わってくるからなのよね。


「ひとまずは、無事に帰ってもらうまでがお仕事ってことで」


「そうですね。行きましょう」


 実際には、採掘場所の確保が仕事だけど、終わりが良くなければ色々と面倒なことになる。

 もう夕暮れだし、何かあってもいけないので護衛として街まで戻る。


 無事に採掘が出来たと、喜びの声を聞きながら宿に戻る私。

 賑わっている酒場で聞こえてきたのは、鉱山から数組が戻ってこない、という話だった。



 

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