JAD-148「手掛かりは残骸の中に」
あっさりと沈黙した敵機たち。
長引く戦いというのは、案外ない物だと思う。
あるとしたら、例えば大きな施設を制圧するだとか、広く展開した敵を撃破するとき、だろうか。
もしくは……ひたすらに硬い相手、となる。
「ルーチンも弱いのよね……火力はあるのに」
「やはり、自動的な制圧目的でしょうか」
ここまで来ると、もうはっきりとしてくる。
人類、この星は脅威にさらされてきていた、と。
武装やそのほかの部位を失ってなお、核が動いてるのを感じる。
なぜかわかる手順で、私はその1つ1つを停止させて回った。
「メテオブレイカーより端末の到着を確認」
「中で見たことあるやつね」
普段は清掃や整備をしているタイプだったはず。
無骨な胴体に、各種アタッチメントを交換できそうな手足。
そんな機体が、次々と隕石の形をした何かに入っていく。
『助かりましたよ、同胞』
「なあに、ちょうど良かったわ。やっぱり、崩壊前もこんな感じだったの?」
『記録によれば、ですね。最初のころは、開発途上地域に展開され、発見や把握が遅れたそうです』
なるほど、そうなるかと思った。
火力はあるが、防御は甘い。
おそらく、かつての文明、例えば火薬を使った武装でも十分撃破できただろう。
あくまでも、対応がちゃんとできれば、だが。
おそらくは、対処に成功した地域と失敗した地域がある。
その繰り返しで、一度人類はピンチに陥ったのだ。
(機械による攻撃はそれで説明がつくとして……ミュータントは?)
『そちらに輸送車両を移動させます。収納を手伝ってもらっても?』
「もちろん。あ、終わったらトラックの回収に向かうわ」
自立式の迎撃兵器であるメテオブレイカー。
自分で整備・改良を可能にするある意味では完成した箱庭のようなものだ。
資源の回収、装備修復の技術があって当然だった。
回収しやすいように、残骸たちを集めて回る。
そして、隕石の中から端末たちが出てきたころには、隕石の中身も、沈黙。
力も今は発動していない状態だと感じることができた。
「大漁ですね。解析がはかどりそうです」
「問題は、これがほかの大陸にきっと落ちてるだろうってことよね」
メテオブレイカーは複数存在するはず。
しかし、現在も稼働しているかどうかはわからない。
そばのメテオブレイカーが迎撃できない角度も当然存在するのだ。
「そこは、向こう側に行ってみるとわかるのでは?」
「それもそうね」
やってきた無人トラックに、残骸を詰め込んでいく。
隕石そのものは、なんとブリリヤントハートで運ぶことができた。
思ったより軽く、そして当然のように中身はメカニカルだ。
「完全にガワをかぶった宇宙船じゃない……」
「こうしてみると、あんなに中身があるようには見えないんですけどね」
カタリナの言うように、パワーオフ状態では変な形ではあるが、単なるコンテナだ。
おそらくは、隅に見える機材が次元をゆがめてると思うのだが……。
「これも解析次第、かしらね」
ひとまず、隕石コンテナを先にメテオブレイカーのところへ。
もうすぐ夕方だけど、あまり私たちには関係ない。
「うちのトラックを回収しながらだから、また明日ね」
『わかりました、同胞。解析をして待っていますよ』
気が利いたセリフを聞きながら、機体を飛翔させる。
すぐにトラックへとたどり着き、森を切り開きながらメテオブレイカーのもとへと。
結局、メテオブレイカーのもとにたどり着いたのは、早朝であった。
「解析作業が進んでるみたいですね」
「砦モードになってるし、そうみたいね」
迎撃の姿である巨大兵器から、普段の姿である砦の状態へと移行していたメテオブレイカー。
周囲はその変形によって、荒れているが仕方ない。
巨大な動力源、そしてコストパフォーマンスを最優先したジルコニア5色による力。
それらが、メテオブレイカーを歴史の生き証人とたらしめている。
ひとまず、変形時にもちゃんと格納、固定されるらしい駐車場にトラックを駐車。
懐かしさすら感じる再会に向けて、歩き出すのだった。