JAD-147「昔取ったなんとやら」
「レーテ、本当にあの隕石が?」
「わからないけど、わかってからじゃ遅いから」
眼下の景色はぐんぐん変化していく。
高速で、まっすぐに。
トラックだとまだ半日ぐらいはかかりそうな距離を、飛んでいく。
そして、森が途切れた。
かつての戦場、そしてメテオブレイカーがたびたび巨大ゴーレムを相手にしている場所。
「メテオブレイカーを確認! すでに立ち上がってますよ」
「次があるかも、そう思ってるのかもね」
あるいは、援護をしてくれるつもりなのか。
視界の隅に、火球。
目標の、隕石だ……隕石としては、大きい!
家一軒ぐらい、と言えば本来の大きさがわかるだろうか。
「あれがそのまま落ちたら、この辺は危険ですよ」
「たぶん、大丈夫だわ」
迎撃すべく狙いを定めたところで、拡大したモニターにそれは映った。
何の変哲もない、ただの岩石に見えたそれに、腕のような何かが生える。
それは、明らかに力を帯びて発光しだした。
モニターの中で、隕石の周囲をフィールドが多い、見る間に減速、低速で地面に落ちた。
砂煙は上がったけど、本来の想定からいけば微々たるものだ。
モニターに踊る数字、そして感じる気配。
「戦闘準備。行くわよ」
「了解! この反応は……強烈な力場を確認。次元がゆがみます!」
前から、不思議だった。
メテオブレイカーを含んだ迎撃装置を開発した人類。
それでも、各地で何かの襲撃にあっていたという。
その代わり、たくさん隕石が落ちてきたという情報は残っていない。
そこから推測できるのは……。
「隕石内部から反応多数! もしかして、これは……」
「ええ、そうね。昔あったという次元収納、それも宇宙由来だったってわけよ」
今も昔も、人類はしぶとい。
謎の襲撃を受けても、その技術をなんだかんだ吸収、再利用もしていた。
物資を収納するために使ったりしたという、次元収納。
一部の軍施設などにしかなかったとされるそれが、襲撃者の秘密の1つ。
「下手にあの状態で打ち込むと、どんなことになるかわからないのよね」
「だから、出てきたのを迎撃、ですね」
頷いて、機体を一気に前に。
まずは手持ちのライフルで正面から一撃だ。
すでに出てきた相手に向けて石の力を練り上げ……発射!
地上のそれとは違う、人型の機械に向けて力が吸い込まれ、爆発。
「よし、効いてる。第一に武装、第二に頭部を優先。可能なら核は残すわ」
「せっかくですもんね。強気に行きましょう!」
オリジナルのJAM用動力源、核。その入手は発掘しかないのが現状だ。
でも今は、生きたそれが目の前にある。
「背面武装は任せるわ」
「はいっ!」
相手もこちらを認識したのか、エネルギー状の弾丸が飛んでくる。
明らかに、石の、星の力だ。
でも、あの中に生き物の気配は感じない。
仕組みが違うのか、それとも……。
「倒してから……考える!」
続々と、動くものが出てくる。
明らかに隕石の大きさとは合わない量。
「狙いが甘いっ!」
「砲撃型出現!」
散発的な攻撃を回避していたところに、相手の増援。
荒野に、光の帯が乱舞する。
たった1つだって、当たってやるわけにはいかない。
右へ左へ、あるいは上空に。
当たれば必殺かもしれない攻撃を、回避していく。
(懐かしい……そんな感情を抱いてしまう)
おそらく相手は無人。
でも、無人機相手の行動は慣れたものだ。
記憶での、となってしまうけれど。
ゲージや数字は見えないが、まるでゲームの様だ。
不明勢力を調査、場合によっては殲滅せよ、みたいな?
「大型2! この出力は!」
「多少大火力とてえぇ!」
ブースターを集中、一気に加速。
大型の砲台を背負った一機に向けて突撃する。
感情の無い機械の瞳が、こちらを射抜く。
向けられた砲から放たれる光。
「ASブレードセット、たたっきる!」
石の力には石の力。
迫るエネルギーに、こちらもエネルギーをまとわせた刃を振るう。
通常、金属等を切り裂くのとは違う衝撃が機体を駆け抜ける。
二つに分かれたエネルギーが地面に穴をあけるのを感じながら、至近距離へ。
「そこっ!」
しっかりと刃を通し、両断。
巨体の背後へと抜け、そのまま背面武装のコントロールを確保。
もう一機へと、砲撃を叩き込んだ。
「二機目も沈黙。隕石のスキャンを実施。外から確認する限り、完全に中身は機械ですよ」
「でしょうね。外は、宇宙での移動に適した岩石で覆ってるんだわ」
周囲には、もう動けない謎の機械たちが転がっている。
あとで回収するとして、隕石を停止させないとだ。
『同胞。そちらに端末を向かわせます。無力化に協力いただけますか』
「できるの? なら、お任せするわ」
メテオブレイカーからの通信。
その内容に驚きつつ、壊す以外が可能ならと了承。
念のために、武装は構えながら端末の到着を待つのだった。




