JAD-145「星のしっぽ」
「さすがラストピース。面白い物が見つかったようだ」
「特定の人たちには、儲けが減る話だと思うけどね」
町に戻り、カインに報告してそのまま雑談。
特に大きな報酬があるわけでもない。
依頼ではなく、ただの確認作業だったのでこんなものだ。
ついでに聞き取りをしてみると、確かにゴーレムの動きに違いがあったようだ。
襲ってこない相手も結構いて、そういう相手は稼ぎやすいという展開。
「区別がつけられるといいんだがなあ……」
「襲ってきたのだけっていうわけにもいかないわよね。わからないもの」
こればっかりは、難しいなと思う。
私なんかは、そこらの野良ゴーレムじゃ相手にならないから余裕がある。
でも、歩きで探索してる人や、よくある探索者の装備だと少々厳しい。
相手は肉体ある獣やミュータントらと違い、手足の1本では止まらないからだ。
「私、わかりますよ。目です。光ってる色が違うんですよ」
「ええ? そうだったかしら……ああー、でも言われてみれば……」
記憶をたどってみると、確かに違う気がする。
緑や黄色の光だと、襲われた記憶がない。
みんな、赤かった気がする。
「なるほど。試す価値はあるな。この辺りの復興も大事なことだ。岩人形が役立つなら、それはそれで」
「まあ、別に追加が出てくるだろうから、大した差はないと思うけどね」
恐らくは、気の長い、とても長い復興計画だ。
たかだか1年、10年といった間隔は誤差だろう。
「むかーしからある、機械系の良し悪し判断ですよね、緑と赤」
「言われてみればそうね。ということはあれってこの星由来なのかしら……」
石の、星の力を使ってるからどっちなのかわからない。
人にはいろんな人がいる。
中には、復興のために技術を振り切った人がいたとしても不思議ではないか。
「それ以上は聞かないことにしておく。仕事は必要か?」
「その方が賢明ね。んー、面白そうなのがあれば、ね」
その後は雑談となり、店を出入りする人々を観察しつつ過ごす。
前よりも人の出入りは激しいような、そうでもないような。
少しばかり、重装備が増えているように感じる……気のせいじゃないわよね。
「ねえ、何か物騒度合いが増してる?」
「ここが襲撃を受けたとか、他の土地と戦争するとかそういう話はないな。ただ……」
声を潜めるように、顔を寄せてくるカイン。
ささやかれた言葉は、最初は意味が分からなかった。
遠くの土地で、派手な花火が上がってるらしい、という話。
ここでの花火、は比喩だ。
なんでも、マネーカードの処理を眺めていたら、覚えのない決済とメッセージがあったらしい。
戦争が始まった。現物しか役に立たない、と。
送金先を間違えたのか、どこかに届けとランダムだったのか。
「少なくとも、この町が関係してる範囲内では、そういうことは起きてない」
「東でもそうね。そこまでのことは起きてなかったわ」
入れ違いにというのは否定できないけど、そこまでではない。
起きそうな戦争は、終わっているのだし。
「だろうな。というか、だったらそっちからの話が出てきてる。それがない」
「ということは、西ですか。確か、あの山脈を超えた先にはまだ土地がありましたよね」
カタリナが言うのは、ここからひたすら西に向かうと見えてくる山脈のことだ。
地上を進むのは無謀なほどの、大きな大きな山々。
「らしい、としか言えない。まだ、かつての兵器が暴走しながら残ってるって噂だからな」
「ミュータントも多いらしいわね」
そう考えると、やはり人類は復興してるとはまだまだ言えない。
生き残っている、が正しいのだろう。
メテオブレイカーがいた場所よりも、さらにもっと向こう側。
一度、情報のすり合わせに合流すべきか。
そんなことを考えた時だ。
「レーテ?」
「何か……何か来る」
根拠なく襲い掛かってきた焦燥感。
そのまま、店の外へ向かい……空を見る。
「あれは……」
空をキャンバスに、何かが筆を走らせている。
まだ遠く、時間はあるけど……星の外からの、隕石だ!
「カイン! 警告出せない!? 隕石が来る!」
「なんだって!?」
それからは大騒動だ。
すでに外は騒がしく、みなが隕石を注視している。
幸い、大きさはそこまででもなく、落ちる場所も近くではなさそうだ。
それでも、どこかの町中に落ちれば被害は大きいはず。
油断なく観察すると……西へ。
「あっ!」
誰の叫びか、わからないままに視界に光。
長く伸びる光が、隕石を貫いた。
(メテオブレイカーが対処した?ということは……)
あの隕石が、普通の隕石ではないということだ。
もう一度メテオブレイカーに会うことを決め、旅立ちの準備をするのだった。




