JAD-144「人の心」
予約日時間違えてました
「やっぱり……下のほう、掘り返すと荒地があるわ」
「まずは表面だけでも復活させれば、自然とってことですか」
機体から降りず、適当な草地を掘り起こしてみた。
その結果、ある程度下は、外で見るような荒野だった。
正確には、あまり畑とかに向いてなさそうな土、というところ。
でも、上層がこれだけ自然豊かなら、だんだん下にも浸透していくだろう。
「これ、全部の地域でってことはないと思うのよね」
「ですね。もしそうなら、さすがに目撃もされてると思います」
追い詰められた人類が、色々試した結果?
人は、星の力がおかしくなってきてることを知っていた?
(もし知っていても、数は少ないだろうなあ)
ぎりぎりまで、見栄を張るイベントを実施していたような人類だ。
一部の技術を持った人間だけが気が付き、用意していたんだろうか。
「誰が準備したにしても、遠回しな技術よね」
「本当ですよ。でも、案外こういうのじゃないと生き残れないのかも」
その意見には、賛成だ。
細かく機械で管理される施設よりも、このぐらいアバウトな方がいいのかもしれない。
10年、100年、あるいはもっと先。
自身が生き残ってない未来に届ける技術……うん、ロマン。
「ゴーレムがどこから来るかは……今度でいっか」
「被害はないですし、ええ。でも外でゴーレムに襲われたのはなんでしょうね」
「開墾の邪魔をするなってとこかしらね?」
こうなってくると、そのあたりも怪しい。
単純に考えると、故障した一部がってことになる。
詳細は、これから調査しないとわからない。
それでも一応の確認は取れたとしていいだろう。
「じゃあ、戻りましょうか。どう説明するか、少し悩むけど。ひとまず水に毒があるわけじゃなさそう、でいいわよね」
「そういう依頼ですからねえ。依頼でもない、お願いに近いですけど」
笑いながら、機体の向きを変えて歩き出し……ん?
何か、いる。獣だろうか?
草に埋もれそうな、小さな動き。
足を止めてズームすると、そこにいたのはゴーレム。
ただし、手のひらサイズ。
ブリリヤントハートの中からだと、アリのようなサイズだ。
「プランターでもやりますか?」
「来てくれるかしら、この子」
荷物の中にある、何かの時にまとめ買いしたプランター。
適当に周囲の土を入れ、ミニゴーレムの近くに置いてみた。
「あ、来た……」
「来ましたねえ……」
片腕ほどの大きさのプランターに、キラキラ輝くゴーレムがずぼっと。
まるで箱庭のような光景に、くすっとしつつトラックの荷台へ。
不思議と、大きいのと違ってすぐにはひび割れず、なんだか水浴びでもしてるかのよう。
これはこれで、面白そうだからいいか。
「体はクォーツね……クーちゃんと呼びましょう」
「レーテのそのセンスだけは、私……わかりません」
「そう? わかりやすくていいじゃない」
2人の間で、ミニゴーレム、クーちゃんは上半身を器用にくねらせていた。
落っこちないようにプランターの位置を調整して、再出発。
森を抜け、草原に出たころには夕方だ。
「私、とにかく力をつけようと思うの」
「何を、倒すんですか」
「笑っていられる子を、理不尽から守るため、かなあ」
クーちゃんがくねくね動いてるのを見て、思うことがあった。
いいことがあったのか、みんなで騒ぐ人々の姿。
獲物がたくさんとれたと、前時代のように騒ぐ町の人たち。
めでたいことがあれば、祝いあう人たち。
明日は来ると、信じて笑顔の子供たち。
「私は好きに生きていいと思うから、気分がいい方を選ぶわ」
「それでいいと思いますよ。私の中にあるプログラムも言っています。何かをするために生み出された人間はいない、と」
「ふふ、ありがと」
慰めることもプログラムされた行動、と人は言うかもしれない。
でも、私にはカタリナが成長して、自分で選んだ選択だと感じている。
人は、記憶にいるでもなく、肉体にいるのでもなく。
その行動とあり方に、あるのだと感じるのだった。




