表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/278

JAD-136「可能性たちの墓」


「これで、どうして動いて……生きている?」


「うっすらと、石の力が膜のように覆ってるわね」


 大きさはブリリヤントハートの半分ほど。

 ずいぶんと小柄な相手だ。


 武装はしっかりとしており、戦えそうなのが怖い。

 その場で、じっくりと観察していると……こちらに向かってくる。


「いえ、これは……私たちを認識していない?」


 ふと、感じたものがあった。

 その場を移動してみると、相手は何事もなかったように移動を続ける。


 それはまるで、決まった場所を移動しているだけのよう。


「レーテ、まさかあれは……」


「ええ、たぶん。部品として残ってるだけだわ」


 生きているけど、死んでいる。

 自分を保てていない、生体部品としての何か、なんだろう。


 岩山兼建物に近づくと、さらに異様なことがわかる。

 門番と言えそうな感じで、さっきと同じのが2機。

 こちらも、侵入者のはずの私たちに見向きもしない。


 その姿に、哀れみよりも、親近感が芽生えてしまう。

 この感覚を、私は知っている。


「行きましょう」


「はい」


 覚悟を決めて、建物へ。

 岩山を利用した、基地といった方が良いだろうこともわかってきた。


 石の力が働いているのか、入り口は開いているけど、何かフィールドがある。

 不思議と、機体はそれをするりとすり抜け、中へ。


「なんでしょう。初めてなのに、久しぶりのような」


「そうね。私とカタリナ、2人の眠っていた場所に似てるのよ。技術がね」


「あっ……」


 もちろん、見た目は3つとも違う。

 けれど、雰囲気というか、根幹にある技術が同じなのだ。


 その証拠に、知らない場所なのに迷わずに進める。

 いくつもの通路、小部屋は無視。


 奥にあった大きな扉。

 JAMが通過も可能な大きさのそれを、そっと開く。


「今、スキャンされましたよ」


「でしょうね。私たち、招かれてる」


 そこは、研究所であり、工場だった。

 何年たっているかはわからないけど、古ぼけた機材たち。


 でも、まだ生きている機械群。

 いくつものモニター、いくつもの……シリンダー。

 実験そのものは続いていないのか、現状維持といった感じだ。


 液体で満たされたシリンダーの中には、人影。

 男も女も、老いも若きもといったところ。


 ただし、みんなほぼミイラ化している。

 まともには生きていない。

 せいぜいが……外のあれのように使えるかどうかだろう。


「これは、何なんでしょう」


「私よ。私の、可能性だわ」


 この場所に入ってから、ズキズキと頭が痛む。

 刺激が、記憶を揺さぶる。


(ああ……私は、生きているんだ)


 そんな言葉が浮かび、涙がにじむのがわかった。

 ここは、私と同じ存在を研究していた場所の1つだ。


 おそらく、私がいたのが支部のようなもの。

 本命は、ここだ。


 無事なのが、支部、予備である私だけっぽいのがさらに切なさを感じさせる。


「降りるわ。危険があるかもしれないけど……」


「最後までお供しますよ。かけがえのない相棒じゃないですか」


 そんなのはいいのに、と思いつつ、感謝を告げる。

 かけがえのない相棒、そのことにうれしく思う。


 念のために武装はしつつ、コックピットから外へ。

 一番目立つコンソール、モニター群へと近づく。


 と、電子音が響いた。


「もし、もし私が正気を失うようなことがあったら、どうにかして止めてね」


「わかりました。キスしてでも止めて見せますよ」


 笑いながら、コンソールにある認証装置へと手を。

 知っているものと、使い方の変わっていないことに少し驚きつつ、待つ。


 そして……ランプがグリーンに。


『エンハンサーの情報を確認。前回認証日時……不明。ようこそ、未登録者』


「文明崩壊と情報伝達の断絶が発生。共有を求めるわ」


 適当に思いついたままを口にしてみる。

 そもそも、反応してくれるかどうかも賭けだったけど……。


『防衛機構が自動制御されていることを確認。さて、何からお伝えしましょうか。おとぎ話風に行きましょうか』


 案外、お茶目な管理AIらしい。

 戸惑いも感じつつ、口を開く。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ