表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/278

JAD-135「荒野の生存者」


「つまりは、これは不慮の事態だと?」


「かもしれない、ってぐらいよ」


 トラックの荷台で、機体の姿勢を変える。

 どこまで行くかわからない以上、トラックごといかないとだ。


 普段なら、地面に設置するように展開する防御フィールド。

 名前のわりに、砂ぐらいしか防げないそれを、機体を中心にした展開へ。


 砂嵐に向けて車を走らせるという、普段なら自殺行為に思える行動。

 でも、予想通りに、石の力が風に干渉を始めた。

 油の塊の中を、熱い石が滑りぬけていくかのようだ。


「やっぱり……前に言ってたじゃない? なんでセンサーより先にわかるのかって。これ、ただの砂嵐じゃない。石が関わってるわ」


「言われてみれば……だとするとこれは?」


「誰かの意志がこうしてるのね。今、生きてるかはわからないけど」


 生存者に対して濁したのには理由がある。

 運用面もそうだけど、そもそも石の力を引き出すための動力源、これが問題だ。

 細かい調整、出力の強弱をやるには、なかなか大変なのだ。


 少なくとも、今の時点で人類が製造できるものでは難しい、そう思う。

 つまり、この砂嵐の原因は……ある程度以上はそっちの技術を使っていることが確定している。


「スキャン継続中。確かに、力の波を感じます」


「これまで気が付かなかった、私たちの問題ね……」


 意識してみると、途端に見えるものが変わってくる。

 いいことなのか悪いことなのか、それはわからないけど……。


 普段の倍ほどの速度で、砂嵐の中を突き進む。

 不思議なことに、目視では何も見えないけど、力の流れを見ることで地形が丸わかりだ。

 風が避けていくところは、何かあるということだ。


 そうして、記録にすると半日は過ぎたころ……急に砂嵐を抜けた。

 何か、硬い皮を突き抜けた感覚。

 普通のトラック等なら今のは超えられず、吹き飛ぶんじゃないだろうか?


「機体チェック! 砂の噛みは?」


「ほとんどありません。いつでも!」


 視界に写る、荒野。

 遠くに、何か動くものが?


「機械……? こんな場所に?」


「シールドはまだ解かないで。近づいてみましょう」


 砂埃を上げながら進んだ先に、そいつはいた。


 ぽつんとたたずむ金属的な何か。

 不格好な四つ足で、頭には赤色灯。

 脈動するかのように点滅するその光は……石の力だ!


「武装は確認できません」


「いらないのよ……こいつが、原因の1つだわ」


 モニターに写している砂嵐とを交互に見る。

 偶然だろうけど、バレたかとばかりに、赤色灯が力を帯びた。

 これが隠したい秘密の中に、飛び込めたらしい。


 四つ足は、思ったより俊敏な動きで、移動し始めた。

 逃げるつもりか、それとも単に砂嵐の場所を変えるだけなのか。


「壊したらややこしいかもしれないから、無視!」


「え、レーテ!?」


 戸惑いの声をそのままに、中心部へ向けて突進。

 そのまま四つ足の脇を抜け、奥へ奥へ。


 追いかけてくるように、力の波動が周囲に広がり……風が産まれる。

 砂嵐が、時折無風になり収まっていたのはこのせいだったのだ。


(砂嵐のおおもとが、移動していたならわからないわけよねっ!)


 今度は、追い風となった砂嵐。

 偶然にも抜けた相手には、これでトドメとばかりに仕掛けるようだ。

 その力を逆に借りて、突き進む。

 

「どこまで行くんですかっ!?」


「どっかにあれの拠点があるはずよっ。例えばそう、アイツが来た方向とかにね!」


 砂嵐がまだ薄い中、ぎりぎりで岩らしきものが見える。

 とっさに回避したのは、残骸だ。

 中にもともといたのか、あとから来てダメになったのかはわからない。


 力の、星の力の流れるのを確認しつつ、さらに進む。

 そうしてどれぐらいたっただろうか?


「前方に何か反応があります! 大きい……」


「攻撃に警戒しつつ、接近するわ!」


 覚悟を決めて速度を上げると、音を立てて砂嵐を抜けた。

 とたん、視界に荒野以外の物が飛び込んでくる。


 大きな、大きな岩山。

 ただし、明らかに……。


「人工物……?」


「っぽいわね」


 もとは普通の岩山だっただろうそれが、人の手によってか加工された場所。

 そびえたつ壁のように見えるそれの前に、トラックを止める。


 振り返れば、砂嵐。

 ただし、どこからかくっきりと境目がある。

 まるで……そう、まるで防御フィールドの様。


 見渡せば、岩山を囲うようにその境目が存在した。

 隠す場所もないので、仕方なくトラックをそのまま停車し、機体へ。


「少なくとも、何かフィールド発生装置は生きてるわね」


「気を付けてください。金属反応、多数です」


 立ち上がらせつつ、機体にライフルを握らせる。

 背面武装もアクティブに。

 石はダイヤとイエローダイヤ、そしてブルーサファイアだ。


 いざとなれば収束しきれなくてもこの大容量のエネルギーを放てば……。

 と、視界に動くもの。

 それは明らかに機械で、武装もしているように見える。


「っ!? 何、これ……」


「JAM?……レーテ、あれは……」


 ある意味、無人機より驚くべきものがそこにはあった。

 小さ目のJAM、ただしコックピットがむき出し。

 そして、そこにはミイラとなった人型が収まっていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかの伏線と回収(汗)
[一言] ラピュタ的なアレだったか サンドワームみたいな土着型モンスターが 砂嵐起こしながら移動してるのを予想してました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ