表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/278

JAD-132「遺産相続」



「思わぬ臨時収入でしたね」


「まったくだわ。金が出たって噂を確かめに来ただけなのにね」


 探索を進め、ひとまず危険はなくなったことを確認した私たち。

 めぼしい物は拾い、外に出た。


 こうなると、あとは本当の意味で早い者勝ちだ。


 主に徒歩と小型車両で飛び込んでいく人々を見送りながら、推定大型輸送船を見渡す。

 探索結果は、ある程度共有されているらしい。

 というのも、みんなが組織だって狙った場所に飛び込んでいくからだ。


「感じ的に、まだしばらくは大丈夫そうね」


「町1つ分みたいな大きさですよ、コレ」


 周囲のスキャン結果や、地形の観察結果を合わせると、大体見えてくる。

 持ち出された区画は、まだまだごく一部だ。


 本当のところはわからないけれど、遺産相続は成功したといえるんじゃないだろうか?

 この資源で、地域の人類は色々と整え、生活環境、そして文明を取り戻していくだろう。


「この中身が、資源より重要かどうかは……見てみないとわからないわね」


「金庫の中身ですよね? 保存用の容器にわざわざ入ってる記憶媒体なんて……」


 かなり昔の物だけど、幸いにも今も読み取り装置があるものだった。

 いつぐらいだかはわからないけど、こういうのが統一されたんだよね。


 念のための検査はしつつ、データを確認することにした。

 いくつかの画像と、動画。

 変なのではないことを祈りつつ、再生だ。


「宝石……ですかね」


「そうね。良い輝きだし、とても大きいわ」


 無音で映し出されたのは、何かの展示会場のようにも見える。

 ずいぶんと豪華な会場なようで、きらびやかな装飾が壁一面に施されている。


 無数の宝石たちが並び、不釣り合いにも見えるモニターが添えられている。

 その姿を見て、ぴんと来た。


(これ、動力用の宝石だわ……)


 すべての宝石、石が星の力を引き出せるわけじゃない。

 品質やカットの関係で、その力にも差が生じてくる。

 こうして売る際に、力をわかりやすく見せているんだろう。


 そんな中、厳重に守られた棚に、いくつかの宝石が特に目立って見えた。

 カラフルで、とても強い輝きを放っている。


「……これ、ダイヤだわ。カラーダイヤ、間違いない」


「これが!? 確かに、無色と、イエロー、グリーンダイヤは一緒ですね、輝きが」


 映像には、ここ最近は見たことがない文字も踊っている。

 いくつかを拡大して確認すると、そこにはうたい文句が書かれていた。


 例えば、星の力をこの手に。

 ほかにも、仰々しい言葉が並んでいた。


「人造か、豪華にそろえたか……そこまではわからないけど、お披露目とかそういうのみたい」


「なるほど……存在はした、これがわかっただけでも十分ですね」


 無言でうなずきを返す。

 カラーダイヤの伝説は、どこまで本当かはわからない。

 けれど、こうして映像がある分には、それなりに本当らしいとわかる。


 問題は、どう手に入れるか、なのだけど。

 その答えは、画像データが握っていそうだ。


「こっちは、何かのレポートね」


 画像データは、文章を画像にしたものだった。

 流し読み程度だが、確認できたのは紛失、事故、襲撃、そんな単語。


「輸送部隊が襲撃を受けた、事件調査報告みたいです」


「さすが。次に行く場所は決まったわね」


 その事件があった場所、そして向かった先の探索だ。

 やみくもに世界を回るより、確実ってものだ。


 問題は、今の地形とこの時の地形が一致してる部分があるか、だけど。


「レーテ、運命って信じます?」


「何よ、急に。そりゃあ、私たちが出会ったのは運命って言ってもいいんじゃない?」


 本当に、そう思う。

 偶然に偶然が重なった、奇跡的な出会い。


 前に見た夢のように、カタリナが相棒じゃない世界も、もしかしたらあったかもしれない。

 今のところ、彼女以外を相棒にするつもりはまったくないけれど。


「ふふ、ありがとうございます。ええっと、それはともかくとして。事件は1回じゃないみたいで」


 モニターに写されたいくつかの画像と、強調された文章。

 どういう仕組みか、地形情報も含まれていたようで、かつての映像も一緒だったらしい。


 それを眺めつつ、横から出てきた映像は……。


「これ、本当なの?」


「嘘は言いませんよ。情報的に、確率が高いのはタンセ、あの町と荒野です」


 ずいぶん昔のように感じてしまう、荒野の町。

 普通に向かうには距離がある町のことを、ぼんやりと思いだす私だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 宇宙船の動力源使ってドンパチンコしてるのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ