JAD-131「ヒトはどこへ消えた?」
「サーチは密に。まだ出てくるかもしれないものね」
「ええ、それはもちろん。今のところ、同一の反応はありません」
まるで地面にぽっかりと開いた洞窟のような場所。
おそらくは、昔々の輸送船の一部、そこに突入したところだ。
中から出てきたのは、この星の技術で作られただろう防衛戦力。
それらを撃退して、探索の始まりといったところ。
「ここは……資材は保管されていないんでしょうか」
「ほとんど資材としては何もなさそうね。あれらの保管施設だったのかしら」
ちなみに、JAMに乗ったままだ。
そんな現状、私たちを押しのけて入ろうとしたり、徒歩で滑り込む人はいないようだ。
(そりゃあ、どっちから撃たれても文句は言えないものね)
探索は早い者勝ち、それは基本的なルールだ。
とはいえ、当然のごとくそれ以外のルールもある。
未開拓、未開放の場所は最初の1歩目の、最初に開放した人の。
そして、戦闘があればそれの排除に貢献した者が最初に入る。
もっとも、罠が残っていて巻き込まれるのが嫌だ、ということもあるらしいけど。
「開いてないコンテナはなし。全部出たのね……うーん」
「電源は液体電池? 何かあった際に混ざり合い、反応を起こすタイプですね」
いわゆるバッテリータイプでは劣化と放電があるし、ずっと発電し続けるのは難しい。
そんな状況への答えの1つ、ということらしい。
「輸送艦の護衛にしては、どうもおかしいのよね」
「それでうなってたんですか。確かに、微妙な戦力ですよね」
うなずきつつ、周囲を探る。
今のところは、めぼしい物は見つかっていない。
だんだんと、疑問が積み重なってくるのを感じる。
「そもそも、どうして持ち出されてないのかしら?」
「……あ!」
探索する側としてはありがたい、非常にありがたい話。
でも、当時のことを考えるとおかしいのだ。
その暇もないぐらい襲われたのであれば、もっと荒らされていたり、そういう痕跡があるはず。
ただ単に、ゲームの報酬のようにここにあるのが謎すぎる。
それに、だ。ここだけの話じゃない。
「どうも謎なのが、ミュータントとかに襲われた形跡のある場所と、そうでない場所。どちらも人が消えてるのよね。昔々に何かあったとしてもよ? そんなに何もできない状態ってあるのかしら?」
「いわれてみれば、謎ですね」
文明が崩壊し、そのままの生活ができなくなった……ここまでは良い。
だからといって、あれだけの文明を誇った人類が、ここまで一気に追い詰められるのだろうか?
私は、私たちはまだ知らない。
ヒトがどこへ消えて、どうしてしまったのかを。
「この船だろう物なんか、最たるものよね。まるで、未来に物資を託したかのようだわ」
非効率すぎる、遺産相続。
もっと、それこそちゃんとした施設なり、山にシェルターとするなりしたほうがいい。
それができないような状況だったのか、もしくは。
(どうなるかわからないほど、未来へのバトンだった……か)
「考えても仕方ないですね、こうなると」
「そうね。ひとまず安全の確保はしておかないと……ねっ!」
機体が空間の中央まで来たとき、チリリと何かが背筋を走る。
それに従い、ライフルで実体弾を放てば、直撃。
床面から出てきた銃座に吸い込まれるように当たり、小さな爆発。
横に機体を滑らせれば、次々に出てきた銃座が弾丸を放ってきた。
「このぐらいの試練は乗り越えてくれないと困るって? もう、過激な遺言ね!」
「冗談言ってる場合です!?」
「言ってる場合、よ!」
高さは余裕がなく、平面移動しかできない。
ダンスを踊るようにその場でステップを踏みつつ、回避。
そして反撃し、相手の数を減らしていく。
「一番奥にエネルギー反応! うそ、これって!」
「多少の損害は目をつむるわ! 突撃!」
膨らむ反応、それが導き出す答えは自爆。
敵に奪われるかもしれないなら、まとめてというわけだ。
拾わせたいのか、そうでないのか。
当時の混乱ぶりがわかるような罠の組み合わせだ。
「おとなしく……してなさいっ!」
装甲に弾丸を受けつつ、至近距離に近づいたところでブレードを一閃。
動力部分と、放出部分とを切り離す。
一番奥に待ち構えていたのは、エネルギー臨界を利用した自爆装置だったのだ。
「おしまいっと……」
「ひやひやしましたよ。こんな場所じゃ、ダメージもひどくなりますから」
それもそうよね、なんて答えつつ、視界は奥へ。
そこに鎮座していたのは、1個の金庫。
「中身はあとで確認しましょ。放り込んでおいて」
「わかりました。小さ目……ですかね?」
確かに小さい。部屋の広さにしては、だけども。
生身で考えると、結構大きいと思うけどね。
ブリリヤントハートの保管部分に放り込みつつ、探索を続けるのだった。




